悪魔崇拝 どうしようもないほどに愛していた。
その凶暴性を、その残虐性を、その利己主義を。
野生を感じるほどに感情的な熱を、
赤く染まった瞳を、
神秘的なまでに美しい白髪を。
すべて、すべてを愛していた。
この気持ちが罪ならば、俺は。
赤也の対戦相手が派手な音を立てて倒れ込んだ。
練習試合の観戦をしていた女生徒の悲鳴を合図に立ち上がり、審判に許可を取りコート内に入る。
「赤也、そこまでにしておけ」
肩を叩き声をかけると、渋々といった様子でコートから出た。悪魔化は解けている。
少し前までは悪魔化の解除に随分と苦労していたものだが、最近では俺が声を掛けただけで簡単に解ける。
丸井は躾の賜物だな、と意味ありげに笑っていた。
「すまないが、担架を持ってきてくれないか」
「は、はいっ!」
ああ、今回は外れだったな。数分で片がついてしまった。
その赤い身体を、乱暴なプレイを、もっとみていたかったのに。
「赤也、気分はどうだ」
「……さいあくっす」
部室でベンチに腰を掛けている赤也に声をかけると、地を這うような低い声が聞こえた。だろうな、と口には出さずに頷く。
不完全燃焼なのだろう。先から激しく貧乏ゆすりをしている。彼に聞こえるようにゆっくりと、大袈裟に足音を立てて近付く。すると貧乏ゆすりは更に激しくなり、ベンチがガタガタと嫌な音を立て始めた。
「赤也」
なんすか、と言いかけていたであろう唇に己のそれを重ねる。
ちゅ、と可愛らしい音を鳴らして離れると、悪魔化とは別の理由で顔が真っ赤に染まっていた。
「シようか」