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    pugi_momo

    @chii60339086

    修練文章/創作メモ/ハンクラ画像などごった煮
    支部には上げたり上げなかったり
    ⚠タル蛍ONLY

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    pugi_momo

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    タル蛍アイドルパロ

    ホヨフェアのアイドルグループ映像からの自己満、唐突に終わります。
    (元動画YouTube「HoYoFair2024 春 原神・同人特別番組『テイワット映影祭』1:01:51〜」)
    ここの設定を引っ張ってきているので、未視聴だと色々と分かり辛いかも知れません。

    蛍が回想でしか出てこない上、どちらかといえばタル→蛍風味
    自己満です。

    #タル蛍
    chilumi
    #アイドルパロ
    idolParody
    #タル→蛍
    #支部にもあるよ
    theChapterHasOne.

    天頂の星に焦がれ【私的解釈含む事前解説】
    ・世界全体に淀みが蔓延り、人類は各地のシールド内での生活を余儀なくされている
    ・シールドの源は「信仰」。その収集の為に、アイドル活動を利用している
    ・蛍は絶大な人気を誇るアイドルグループに所属していたが、10年前に失踪
    ・タルは少年期にテレビで見た蛍に一目惚れし、ちょっとヤバめのガチヲタ化するも、ある日突然蛍が失踪してしまい絶望に暮れる
    ・捜索の進展が全く無い中、それなら自分も同業界に飛び込んでそこから探せば良いと気付き、自ら事務所に応募
    そのルックスの良さから、直ぐに期待のアイドルとしてグループデビューを果たす
    メンバー:アルレッキーノ(事務所幹部兼マネージャー)
        リオセスリ
        タルタリヤ(芸名)



    --------------------------------------------------



     お星様みたいだと、思った。
     透き通った声が波紋のように広がり、飛ぶように軽やかなステップを踏む少女の周囲にはぱちぱちと星屑が散る。きらきらと燦めく金の髪に、長い睫毛に縁取られた蜂蜜のような甘く蕩ける瞳。
     そして、頬を淡く色付かせた彼女が、此方に向けて笑い掛けた瞬間。少年の心臓が大きく拍動し、雷に打たれたかのような衝撃が身を貫いた。
     顔が熱い、全身の震えが止まらない。心が、苦しい。

     画面越しに愛らしく微笑む少女。
     それがアヤックスの彼女との出会いであり、少年が恋に落ちた瞬間でもあった。





     「本番お疲れ様でした!」

     歳若いADの声が響き、額に浮かぶ汗を拭いつつ顔を上げる。一仕事終えた身体は重い疲労を訴えているが、それもどこか心地良い。今回も上々の仕上がりだ。

     「なかなか上手くいったんじゃないか。急遽追加された振り付けも様になっていたな」
     「あははっ、いくらトラブルは付き物だとしても、まさか本番直前に変更されるとは思いもよらなかったよ。もう勘弁して欲しいかな」

     横から投げ掛けられた言葉に、苦笑しつつ返事をすると、並び立つ男はくつくつと笑い大袈裟に肩を竦める。

     「それはそうだ。せめてその分の報酬が無いと割に合わない。そうは思わないか? なぁ、アルレッキーノ」
     「……確かに、今回君達はよくやってくれた。良いだろう。追加報酬か、他に何か希望があれば聞こう」
     「流石はお偉いさん、話が早い」

     ヒュッと軽快な口笛が鳴る。ここぞとばかりに入手困難な茶葉を要求する男を尻目に、青年は黙々と汗を拭う。今回のパフォーマンスは良い仕上がりではあったが、まだ完璧に満足のいくものでは無かった。一つ一つの動きを反復する。ここは良かった、あのパートは腕の角度が悪かった、次からは修正して……

     「タルタリヤ、君の要望は?」

     ふいに名を呼ばれ、思考の海に沈んでいた意識が浮上する。じっと、此方の心を覗き込むかのような真紅の瞳を見詰め返し、「いつもの」と簡素に返答すると、端正な顔が分かり易く歪んだ。

     「紹介は出来るが、また無駄足になるぞ」
     「確かに可能性としては低いがゼロでは無いだろう。それに、これは俺が個人的にやっている事だ。余計な口を挟まないでくれるかな」
     「理解しているのなら良い。では先方とスケジュール調整をしておこう、決まり次第追って連絡する」
     「頼んだよ」

     私物が纏まった鞄を肩に背負う。「打ち上げには参加しないのか?」そう訊いてくるリオセスリに片手を上げ、課題があるから、と足早にスタジオを抜けた。



     「ただいま」

     玄関のドアを開け、誰もいない空間に向かって声を投げる。一人暮らしを始めてもう数年経つが、兄弟が多い実家での慣習がなかなか抜けきれなく、とうとう面倒になってそのままになってしまっている癖だ。
     乱雑に靴を脱ぎ、鉛のような身体を引き摺りリビングルームのソファーに深く腰掛ける。とっぷりと沈み込む下半身に、つい、ふぅと長く大きな息が漏れ出た。流石に疲れた。今日も、彼女に会いたい。
     ローテーブルの上に置かれたリモコンを手に取り慣れた手つきで操作すると、大きなディスプレイに鮮やかな色彩と共に可憐な少女が映し出された。

     飛んで、跳ねて、歌って、踊って。縦横無尽に動き回る少女を食い入るようにして見詰める。きらきらと飛び散る星屑が、青年の瞳に吸い込まれてゆく。澄んだ歌声が空間に広がり、細くのびやかな手足が軌跡を描き、流れる金糸はまるで流星のよう。
     少女が青年に向かって手を伸ばす。白く、小さく、きっと柔らかであろうそれを握り込んで、指を絡めて。輝く黄宝石には、自分しか映っていなくて。
     星空のステージで、ただふたり踊る姿を夢想する。ああ、なんて幸福なのだろうか。ずっと、このままで。永遠にふたりで。

     吸い込まれるように暗くなった画面に、はっと我に返る。そこには恍惚とした男の顔が反射していて、思わず苦笑いを零す。

     「……君は、どこにいるんだい。蛍」

     誰もいない空間に、ぽとりと、答えの無い問い掛けだけが落ちた。





     「あっ、あのっ、ずっと応援してます! サ、サインお願いします!!」
     「私も大好きですっ! 握手してください!!!」
     「あはははっ! 嬉しいな、いつも応援ありがとう。いいよ。ほら、順番にするからそんなに焦らないで。ね?」

     可愛らしく、けれども色っぽさを滲ませて。計算し尽くされた表情でウインクをしてやると、少女は皆頬を染め黄色い声を上げる。彼女達一人一人を、恋人に対するような、甘く蕩けるような目で見詰める。籠絡するように、誰しもが虜になるように。
     スタッフの制止が入るまでそれを続ける。すると、背後から忍び笑いを含む楽しげな声が掛けられた。

     「いつもながらサービスが良いことで」
     「ファンは大切だからね、信仰力に直結する。アンタこそ、ちょっとは俺を見習ったらどうだい?」
     「ははっ、折角のアドバイス感謝するが、それは俺のスタイルじゃないんだ。実際する必要が無いしな」
     「……嫌味も一級品だとは恐れ入るよ」
     「お褒めに預かり光栄だ」
     「いつまでも遊んでいないでもう時間だ。手早く準備しろ」
     「了解、ボス」
     「はいはい」

     眩いスポットライトがステージを照らす。夜の海に反射した星々のように、色とりどりのペンライトの光が周囲一面にゆらゆらと揺らめく。
     曲の始まりを告げる音と共に、燻っていた空気が膨れ上がり、全身がビリつく程の大きな歓声が会場内で爆発した。一気に包まれた熱に、気持ちが高揚し青年は高く片腕を掲げる。
     激しく、けれども優雅に。迸る情熱を声に乗せて。まだだ、まだこれでは彼女に届かない。もっとボルテージを上げろ、もっと魅惑的に、もっと声に甘さを含ませて、観客が俺達だけしか見えないように。音は会場全体に渦を巻いて空へ昇っていく。飛び散る汗が煌めき、青年の紺碧にスローモーションに映る。
     さあ、本番はこれからだ。タルタリヤは口端を大きく上げマイクに口をつけた。



     「今日はいつにも増して気合が入っていたな」
     「は…ぁ……ッ、俺は、いつも本気だよ」
     「はは、さすがにお疲れの様子だ」
     「ご苦労だった。シールドについても、基準値を十分に満たしているとの報告が上がってきた。これで暫くは安泰だろう」
     「そりゃあ良かった。いい加減、そろそろ休暇が欲しかったものでね」
     「長期的には難しいが……まあ良いか。くれぐれも申請を忘れないように」
     「もちろんだとも。きっちり申請をさせてもらう」
     「よろしい。……君、これを」

     弾んだ息を整えている青年の前に、すっと紙切が差し出された。直ぐ様受け取り目を通す。ホテルセントポール、本日23時、エグゼクティブラウンジ。

     「ははっ、随分と急だね」
     「先方からの要望でな。だが、流石にライブ直後だ。断ってくれても構わない」
     「いや、行くよ。お相手にはそう伝えておいてくれ」
     「……我々も捜索をしているのだが、力不足を謝罪しよう。ただ、君がここまでする必要は無いだろう」
     「心配の気持ちは有り難く受け取っておくよ。でも、これは俺が望んでしていることだ。口出しは不要。いつも紹介感謝する」





     よろめく脚に鞭を打ち、ふらつく身体を壁にぶつけながらもなんとかドアの鍵を開け、傾れ込むようにして玄関に入る。靴を脱ごうにも、すっかりアルコールの回った手足は言うことを聞かず、そのままフローリングに崩れ落ちた。壁に頭を強打した痛みがどこか遠くに感じる。火照った頬に当たる床がひんやりとしていて気持ちが良い。
     酒は弱い方では無いが、まさかこんなに飲まされるとは。今日会った恰幅の良い男は、蛍の衣装デザイナーをしていたらしい。全く関係の無い昔話をされ、散々に飲まされて、結局収穫は無しだ。想定はしていたものの、暗然とした心が沈む。

     「いつまで……探せば良いんだ……、」

     あの頃からずっと追い掛け続け、憧れてきた少女。
     小遣いを握り締め何度も通い詰めたライブ。直接少女と会話をしたことは無かったが、ただ同じ空間にいられるだけで夢見心地になり、多幸感に包まれ、喜悦に心が沸き立つ。こんな気持ちになったのは初めてで、少年はどんどんのめり込んでいった。

     彼女が消えてからもう10年の歳月が経つ。
     少年は青年となり、かつての少女の行方を追うために自ら芸能界ここへと足を踏み入れた。
     名を上げればコネクションが増える。青年はただひたすらに努力と研鑽を重ねた。勿論、その間にも情報を得るために使えるものは全て使った。仕事で得た金も、繋がりも、自らの身体でさえも利用して、彼女の欠片を集めていった。
     ベールに包まれていた少女の姿がどんどん形作られてゆき、そしてまたそれに恋い焦がれた。何故だかはわからない、もうそうなる運命だったとしか言いようが無いのだ。

     「あいたい、君に……あいたくて堪らない……蛍……」

     泥を噛むより辛い、心を締めつけられるような息苦しさに青年は眉を寄せる。未来が途方もなく厚い重い灰色の壁のようにしか感じられない。
     目尻からひとすじ、滴が落ちる。深い沼へ沈み込むように思考が散漫となり、もうこのまま眠ってしまおうかと、意識を手放そうとしたその時。
     目の端に、ぼんやりと青く光るものが見えた。





     視界が回る。激しい目眩に立っていることすら出来ない。膝をつくと、柔らかい土の感触に草いきれの青臭い匂いが鼻をついた。
     ――ここは、何処だ?
     目の覚めるような青空に、鳥達が羽ばたき囀る声が響く。正しく平原で、周囲には建物はおろか人っ子ひとりいない。
     自分は確か、マンションの自室へ帰ってきて。目の前に現れた青い光に、なぜか吸い寄せられるようにして飛び込んで。それから、それから。
     視線を下げる。

     「……なんだ、これ、」

     見たことの無い意匠の、着用した覚えのない服。
     
     「一体どうな……、ウ゛!!!」

     突如襲ってきた酷い痛みに、青年は身体を蹲らせた。
     頭が割れるように痛む。ただの頭痛ではない、脳髄が灼熱し脳全体が膨張して内側から破裂してしまいそうな激しい苦痛に、奥歯を噛みしめ苦悶の声を上げる。
     そして、恐ろしい程の記憶の濁流が、青年の内側へと流れ込んできた。
     テイワット、スネージナヤ、女皇陛下、ファデュイ、神の目、天理の調停者、――相棒。


     視界が回る。波のような嘔吐感に、胃の奥からせり上がってきた吐瀉物を地面にぶち撒ける。生理的な涙が青年の頬を伝い、喉からは枯木が軋むような音が出た。

     「……ふ、ふふふっ、は、はははははは……ッ! そうか、そうだったのか……」

     ゆうらりと、覚束ない足取りでまるで幽鬼かのように立ち上がる。

     「……なんて、なんて愉快なんだ、こんなことあるかい? なあ! やっぱり君はそうだった、そうだったんだ!! あはッ、あははッ、アハハハハハハハハハハハッ!!!!!!!!!」

     天を仰ぎ、腰を曲げ、狂ったようにひとしきり笑った青年は、口元を抑えるとこれ迄とは打って変わり、迷いの無い足取りで歩き出した。

     「……さあ、俺の相棒に会いに行こうか」


     その瞳に宿った狂気を見たものは、誰もいない。
     

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