五十音台詞ノック1・『あ』
「愛してるぜー!クリプちゃん!」
キルリーダー兼チャンピオンになったウィットが大画面に映るインタビューでそう叫んだ。
盛り上がる会場。
その中で俺は一人静かな自室で優越感を味わいながら
「ばーか、俺も愛してるよ」
そうハック越しに囁いた。
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・『い』
「「いただきます」」
同時に発さられた言葉に口角が上がる。
それはどうやら恋人も一緒のようで、2人して笑い合う。
こんな平和で愛おしい時間を大切にしたい。
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・『う』
「嘘だろ…」
起きたら隣にライバルであり戦友のクリプトが寝ていた。
信じ難いのは回された腕の力が強いことか、いや、この状況にどきどきしている自分の気持ちだ。
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・『え』
頬を撫でていた手が取られて指先にキス。
思わず喉を鳴らせば、とろりと溶けたハニーブラウンの瞳が細められる。
「えっち」
どっちがだ、その言葉は飲み込んで目の前の美味そうな唇にかぶりついた。
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・『お』
「おい」
無視。
「おいって」
無視。
「何で無視するんだ」
「俺は"おい"って名前じゃありませーん」
「ったく…ウィット」
たったこれだけ、これだけでウィットの周りに花が咲く。
「はぁーい何かなクリプちゃん」
「お前、可愛いな」
「お前じゃなくて?」
「エリオット」
今度は真っ赤になって照れ出すウィットを今度こそ俺は押し倒した。
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・『か』
広い背中。真剣な眼差し。ハックを弄る繊細で、けれど大きな手。
「格好いいなぁー」
ハッとした時には手遅れで、意地悪に笑っているクリプトから目線を逸らす。
「お前が俺のことそんな風に思ってるとはな」
「誰もお前がだなんて言ってない」
「さっきから視線が熱いんだよ。小僧」
事実だけ言われてしまえば勝ち目はない。
ふんっとそっぽを向けば今度こそ我慢できなかったのかクリプトが吹き出した。
くそ、嬉しそうな顔しやがって。
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・『き』
「キスして」
なんて至近距離で想い人に言われてみろ。
止まれるはずもなく唇が触れる、その瞬間
「騙されたな!」
まさか本気でキスすると思っていなかったらしい鈍感な男の赤い耳を見逃さず、遠慮なく唇を奪ってやった。
ざまぁみろ。
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・『く』
「クリプト」
いつものトーン。
「クリプちゃん」
これは大抵余計なことを言う時。
「テジュンっ」
俺に泣いて縋ってくる時。堪らない。
結論、お前に名を呼ばれるなら何者にでもなろう。
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・『け』
「けつが痛いんですがクリプちゃん」
「き、気のせいだ」
「気のせいな訳あるか!だからあんなにやめろって言ったのに!」
「お前だって、もっと欲しいって言ってた」
「はぁ!?ここで俺のせいにすんのかよ!」
「うるさい!お前が可愛いのが悪い!」
レジェンド代表でレイスに2人揃って殴られるまであと3秒。
ドロップシップなの忘れてた。
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・『こ』
「来い」
差し出された手を取れば強く引かれあっという間に腕の中へ。
力強く暖かで安心する腕の中にほっと息を吐く。
「俺ここに住む」
「ふはっ喜んで。永住権を渡してやろう」