五十音台詞ノック2・『さ』
「さようなら」
口に出してみた言葉は自分から発せられた筈なのに、どうしてか自分が一番傷ついている。
俺はこの言葉が大嫌いだ。
ナイフのように鋭利な言葉。
だってそうだろう?これは別れの言葉。
俺が一番嫌いな別れ。
じゃあどうして今口から吐いて出したのか。
「本気で言ってるのか?」
答え、最愛の人に幸せになってもらうため。
そのためなら俺は、どんだけ辛くて痛くて悲しい思いをしてでも道化師を演じる。
「あぁ、本気だよ。さようなら、テジュン」
ほらまた見えない傷がひとつ。
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・『し』
「なぁ、俺目立つのが好きなんだ」
「知ってる」
「なぁ、俺化粧品のCMに出るんだぜ」
「知ってる」
「なぁ、俺お前のこと好きみたい」
「知って…は?」
「ふははっ俺のこと何でも知ってると思うなよ。おっさ〜ん♡」
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・『す』
最近異常に俺のことを避けるクリプト。
「そんなに俺のことが嫌いか!?」
「好きじゃない!…こともない」
「好きじゃない、こともない、ってつまりどういうことだ???あ、ちょ!クリプト待て!逃げんじゃねぇ!」
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・『せ』
クリプトがやられた時のミラージュの反応。
(敵に対する台詞)
「聖人君子じゃないんだ。俺だって触れられたくない線があって怒ることもある。今がその瞬間だ。覚悟は、できてるな?」
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・『そ』
ヒューズと話しているとじっと視線を送ってくるクリプト。
「そんなに見つめるなよ。流石の俺様も照れるぜ」
「見つめてない、睨んでたんだ」
「何で?」
(お前がヒューズとずっと話してるからだ)
「…ばかウィット」
「おぉ、よしよしヤキモチ妬いてたんでちゅねー、小僧」
「ちっ分かってたならとっととこっちへ来い」
「へいへい、わぁーってるよ」
クリプトの頭を撫でるミラージュ。
その表情は満更でもない。
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・『た』
朝から咳が止まらない。熱は上がり続ける一方だ。
そこへ家のインターフォンが鳴る。
「ウィット…なんでここに?」
「体調大丈夫かよクリプちゃん。ミラージュ様が看病に来たぜ」
パチンとウィンクを1つ。
片手には飲料水や食材が入った袋。
「あぁ、直ぐに良くなりそうだ」
笑顔のミラージュを見てインターフォンに乗らないよう、小さくそう呟いた。
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・『ち』
バグで小さくなったクリプトくん。
「ちっせぇぇぇ!んでかわいいなおい」
ぷにぷにの頬っぺたをつんつん突くミラージュ。
クリプトが渾身の頭突きを放つまであと…
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・『つ』
「ってぇ…」
「どうした?」
「指切っちまってよ。えーと、絆創膏は」
「ウィット」
「ん?」
切った指をはぷりと口に含まれる。
ミラージュは顔を一瞬にして染め上げるが、クリプトは何処吹く風。
「よし、止まったな」
満足そうに笑うクリプトにミラージュはもう片方の手で赤くなった顔を隠す。
「お前って時々俺よりばかになるときあるよな」
「は?」
「なんでもない、ありがとよ」
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・『て』
「手ぇ繋ごうぜクリプちゃん」
「なんでまた?」
「いいからいいから!今日寒いだろ?ほれ、あったかーい!」
「ん、まぁ悪くはないな」
(なぁんて、さっきからクリプトに向けて熱い視線が刺さってるからなぁ…悪いが、け、けっせん、けんせん、牽制させてもらうぜ)
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・『と』
椅子に座ってクリプトの上着を肩にかけて眠っているミラージュ。
「とりあえず抱きしめていいか?」
返事は勿論返ってこないので、思う存分ミラージュの暖かな体温とかわいさを堪能することに決めたクリプトだった。