ドライ「おいおいクリプト、また頭濡れてんぞ。ほれ、ここに来い」
そう言ってミラージュがポンポンと叩いたのは髪を乾かす際に使う小さめの丸椅子。
クリプトは不満そうに口を尖らした後、渋々ちょこんとそこへ座った。
「よーし、いいこだ。大人しくしてろよ」
ご機嫌に笑うミラージュに、お前は母親かと言いたかったが、ご機嫌な恋人に水をさしたくなくてクリプトはされるがままだ。
最初に軽くタオルドライをした後、ミラージュはドライヤーを取り出しクリプトの髪を丁寧に乾かしていく。
その手つきは優しく手馴れていてクリプトの瞳は細まり、口角は自然と緩む。
その表情を見るのが好きなミラージュはしかし本人に伝えることはしない。
言うと照れて二度と乾かさせてくれなくなると分かっているからだ。
最後に冷風で整えて完了。
「よし、終わったぞ」
ミラージュはブラシでクリプトの髪をとかしながら満足気に笑った。
「ありがとう…ところでお前は随分と人の髪を乾かすことを手馴れているようだが?」
「ん?そりゃまぁラムヤがお前と同じく髪を乾かすのを面倒くさがるからだよ。んだよクリプちゃん嫉妬かぁ〜?」
まぁ、このミラージュ様のテクニックのおかげだな、なんておどけて続けようとしたミラージュだったのだが
「当たり前だ。妬ける」
クリプトの言葉に固まった。
そして瞬時に赤くなる顔。
それを振り払おうとミラージュはぶんぶんと顔を横に振る。
「っな!?だってお前ラムヤだぞ?俺にとっては妹みたいなもんで…」
「じゃあ俺がミラの話してもいいんだな?」
「それは…ちょっと寂しい…かもしれない」
「それと同じだ。だから仲の良いことはいい事だが、程々にしてくれ」
照れているミラージュを見て満足したクリプトは立ち上がりミラージュの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「やめっやめろよ!その顔も!腹立つんだよ嬉しそうにしやがって」
「うるさい。お前だって妬いたんだろ?」
「っ…あぁ!そうだよ妬いたよ悪いか!?」
「悪くないな」
「っだぁぁぁ!この話はやめだやめ!まるで俺たちバカップルじゃねぇか!」
ぷりぷりと照れ隠しに怒って片付けをするミラージュの肩を掴んでクリプトは口付ける。
「たまにはいいんじゃないか?こういうのも」
「悪く、ねーな」
ミラージュは苦笑しながら、今度は自ら瞳を閉じた。