Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    ya_so_yan

    @ya_so_yan

    9割文章のみです。勢いで書いたものを置いておきたい。後でピクシブに移すことが多いです。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 50

    ya_so_yan

    ☆quiet follow

    たまには組織の人以外も……と挑戦したものの、ポストをちょっと迷っていた赤キャメ。
    🟥さんが優しいような強引のような。

    「ずるいひと」「私に、そんな資格はありませんから……」
     苦笑混じりにそう答えた直後、キャメルはその大柄な体を、柔らかなラグの上にいとも容易く転がされた。

    「えっ……えっ!? あ、赤井さん……!?」
     生まれつき白い肌が上気する程度に酒が回っている頭でも、見上げた彼の様子に異変が起きたことはわかる。
     いや、正直に言って見た目にはわからない。尊敬する捜査官である赤井秀一は、冷静な表情で、切れ長の鋭い目つきで、しかし知性と穏やかな色を含んだ眼差しで――いつも通りの様子でキャメルを見下ろしている。そう、いつも通りだ。自分を押し倒して、容易には起き上がれないようにのしかかってくる以外は。
     自身の太い手首に絡む、しなやか且つ硬くしっかりとした指は、キャメルを傷つけるような意志はなく、だが抵抗を許さない力強さがあった。
     キャメルが憧れてやまない、彼の強さ。敵を仕留める時は容赦なく、仲間を守る時は頼もしく――けれど、自分に向けられているのは、そのどちらでもないように思う。
     鼓動が高鳴るのも、体が熱いのも、アルコールのせいだけではない。

     彼の低い声が、キャメル、と呼んだ。
    「お前は、まだそんなことを言うのか?」
     鋭くて、知的で、けれど穏やかな彼の瞳は、今、少しの憂いを帯びてキャメルを見つめている。
     彼の薄く形のいい唇の動きから、目が離せない。

    「俺は、お前が欲しいだけだ」
     その低く深い響きに、体の芯から震えてしまう。

    (い、いけない)
     目を逸らす。これ以上、目を合わせながら声を聞いていたら……。
    「赤井さん……あんまりからかわれると、困ります……」
    「俺は本気だ。それは、お前も承知だと思っていたが」
    「だ、だって、その話は、もう」
    「わかってるさ。俺はお前に一度、フられている」
    「そんな、フるだなんて……」
     ずるい言い方をする。己がひどく身の程知らずに思えて、畏れ多さのあまりに――
     受け入れるべきではないかと、思ってしまう。彼の言葉を。いや――
     彼を。

     確かに、赤井からのいわゆる告白、のようなものを、キャメルが一度、断っているのは事実だ。
     彼のような男が、スマートながらも真正面からアプローチしてきたことが意外で。そもそも自分にそんな感情を抱いていたなんて、思いもしなくて。よもや、秘めていた淡い想いを見抜かれていたのかと、混乱して――
     わけがわからないまま、ごめんなさい、と頭を下げていた。
     それきり。それ以上、彼からその件に関して掘り返されることもなかったし、普段と違う態度をとられることもなかった。だから、あれは夢だったのではないかと思っていたほどだ。
     だから今日も彼に誘われるまま、何の疑問も身構えもなく、自宅での晩酌に付き合っていたのだ。

    「自分に未練のある相手と、こうも簡単に二人きりになるなんて……無防備もいいところだぞ?」
     鼻先が触れそうなほど顔を寄せられて、視線を合わせざるをえない。
     からかうように囁くけれど、その目つきは本気で。
    (いけない、いけない)
    「未練なんて、そんな……私に、そんな価値は……資格は。だって」
     それでも、キャメルはきつく目を瞑って、踏み止まろうとする――罪悪感という名の、最後の砦で。
    「私は……私のせいで、貴方の大切な人が……だから、」

     キャメル、と彼の声がまた呼ぶ。
     ただその一言で、口を塞がれてしまう。

    「何度でも言おう。彼女のことは、お前だけの責任じゃない。守りきれなかったのは、俺だ」
     “彼女”のことを彼の口から聞くたびに、胸を刺すものが何なのか――罪悪感の他に許されるはずがない。
     それなのに。
    「だが、それでも……お前が、どうしても自分を許せないのなら――償ってくれ」
     償いという、求めるものをちらつかされて、つい抗えず、そっと目を開いてしまう。
     間近に見つめてくる彼の瞳は、キャメルの心の底まで見透かすようで。

    「もう、俺を独りにしてくれるな」
     寂しげな表情。
     なのに、力強い声。

     息を呑む。呼吸が上手くできない。
     早鐘を打つ鼓動は、全身を駆け巡る熱は、酒の酔いでも夢でもない。
     もう逃げ場はないのだと、キャメルは悟る。

    (嗚呼、嗚呼……彼は、彼はなんて、)
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💯💖💴👏💯❤💴💴💕💕
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works