本物と偽物(ルク遊シリアス気味)オレは偽物なんだ、とルークは言った。
一緒に過ごしてきた時間が長い遊我にとって、ルークが突飛なことを言い出すことについては特に珍しいことではない。
それでも何となく穏やかじゃない雰囲気を感じた遊我がその理由を聞くと、どうやら遊我自身が関係しているらしかった。
2年前の小学5年生の年、ゴーハコーポレーション主催の大会でルーク、と言うよりチームルークであるが、彼らは優勝という成績をおさめた。遊我たち強敵を降したその勝負強さと度胸は、なるほど大人顔負けというのも頷けるものであった。
その実力を持ってしても、宇宙での、遊我とのあのデュエルにだけは、勝つことができなかった。
あの時は、互いに譲れないものがあった。それをデュエルで決着した。それ自体は何も異論はない。
当時のルークには、守りたいという思いがあった。ルークと同じ小学5年生で、ルークよりも小さいその身で、何もかもを抱え込んでしまった大切な人を守りたかったのだ。しかしその決意は遊我のそれの方が強固で、だからこそ、初めての敗北を期すことになってしまった。
覚悟が足りなかったのだと、ルークは痛感していた。ひどく後悔をしていた。
オレはあの時、勝たなくてはいけなかった。
それができなかった自分は、自分の覚悟は偽物だったんだと。
「そんなこと…」
偽物とか本物とかじゃなくて。
ルークは、ルークの考えを通していたじゃないか。
遊我はそう言おうとして、しかしそれはルークによって遮られた。
その手に引き寄せられ、遊我は抵抗することなくルークの腕の中にすっぽりと収まった。
「だから、オレは、今度こそ自分を通したい。遊我、もうお前一人に責任を負わせるような真似はしない。お前が悩んでいるなら、オレにも一緒に悩む。オレだけじゃない。ロミンやガクト、みんな同じだ。一人では壊せない壁も、みんながいれば壊せる。それはお前もわかっているだろう」
それは信念とか覚悟とかいうより、願いじゃないか。
ルークの話を黙って聞いていた遊我はそう感じていた。
肩口に収まる体勢なので、遊我からルークの表情は見えない。しかしその声は震えていたし、今もきつく抱きしめられているその腕も震えている。
「…そうだね。ごめん、ルーク」
遊我はルークの胸に顔を埋めたまま、その背中にそっと腕を回したのだった。