ふる〜てぃ〜ず“もも”　当たり前だと思っていた。

｢これからも一緒にいてね？ももちゃん1人じゃ寂しい！｣
｢急にどうしたの、そんな事しないよ。｣

　それは本当なの？約束できるの？……そんな考えたくないことが頭を巡る。

(ももちゃん、思ってたよりきぃちゃんの事大好きみたい。)

　ふわりと柔らかい髪を桃色のカチューシャで留める、くりっとしたアーモンドのような形のピンクダイヤモンドは憂いを帯びている。こんなのらしくないやと本人も思っているが、今日は考え込んでしまう。
　小さな頃からいつも一緒にいた。きういの両親は共働きで忙しいから、物心着いた時には一緒に遊んでいて。ももは3月産まれで、きういは4月生まれ。ほとんど1年違うが、いつの間にか身長は高くなっていて(きういが伸びなかっただけかもとは言わないであげてるんだ、なんて思っている)、それだけが勝てることと思っていた。ももが両親に可愛がられているのには生まれた時から体が弱かったことがあった。未熟児として生まれて生死の境をさまよったこともあった。今は落ち着いてはいるが、小さな頃はよく体調を崩して高熱を出したり、喘息の発作が出たりと。その度に看病に暇にならないようにときういに助けて貰っていたももは、身長を追い抜いたというそれだけでも嬉しかったのだ。ちょっとだけ、きういを助けて上げられると思っていたから。
　でも違った。
　いつも、護られていた。
　見えないところで助けられていたのは自分のほうで、こんな簡単な任務なんて直ぐに終わると思っていて、ほんとにずっと一緒に居られればいいなって、そんなこと考えていて。

｢ペルシコスーーーー！！｣

どん。と衝撃。

｢あ、がっ……っ！｣

　振り返ると、大好きな、助けたかった彼女が。

　

　きういが、倒れている。



｢きぃちゃん……？｣
｢あれれ〜？戦士になってないのに庇うなんて、お馬鹿だね？ぷぷぷw……頭、弱いんじゃない？あんたを狙ったんだけど、どっちにしろ1人戦闘不能だし……上出来♪｣
｢そんな、どうして……きぃちゃんになんてこと！｣
｢いや、飛び込んで来たのはそっち。……あんたもあんたよね、変身してたのにこの魔力に気づかないなんて。｣
｢……っ！｣
｢やっぱ、ポームムのふる〜てぃ〜ずはダメね。じゃ、せいぜい頑張ってよね。ぷぷぷ〜w｣

　ああ、なんて事をしてしまったんだ。

｢えへへ、ごめん、突き飛ばしちゃったね。ペルシコスは……ももちゃんは怪我してない？ほら、どうしたの……任務完了してる？｣
｢馬鹿っ！きぃちゃんのバカ！なんでよ！変身してないのに飛び込んできたらダメでしょ！？ももちゃんは加護の力があったからそんなに怪我にならないんだから！ねぇ、なんでよ！！｣
｢ごめんね、ももちゃん。｣
｢ごめんねじゃないよ！｣
｢私は、大丈夫、だから…ほら、ちゃんとにん…む……あれ、なんか……痛い。｣

　きういは苦しそうに息をする、相手の攻撃が直撃した右側が動いていない。

｢きぃちゃん……？きぃちゃん！きぃちゃん！！｣
｢心配かけて、ごめん……ちょっとだけ、ごめ……あぁ……。｣
｢今、みんなのとこ運ぶから！ちょっと我慢しててね、ももちゃんが護るから、だから死んじゃやだよ！｣
｢もう、このくらいで死ぬわけないよ。｣

　ももは……ペルシコスはきういを抱える。揺れに少し顔を歪めたのがわかる。
　痛いよね、ごめんね。ごめんね。
　苦手な飛行魔法を発動する。高いところが怖いだなんて言っていられない。
　そんなときだった。

｢あーぁ……ももちゃんは……私が、護るって…………決めたのに……。｣

　意識が薄れゆくきういが呟いたのを、ペルシコスは聞き逃さなかった

｢きぃちゃんの、バカ。｣

--きぃちゃんが怪我をした。ももちゃんを庇ったから。