ふる〜てぃ〜ず“さくら” さあっと夜風が吹いて、窓辺で本を読んでいた少女……梅桃さくらの柔らかな桜色の髪を撫でた。それに誘われるように星空を見上げるビズーはその輝きを反射させる。
「めっさ綺麗な星やなぁ……。」
この下で争いが起きているなんて知らないんだろうなとさくらは思った。
ぱたりと手元の文庫本を閉じて立ち上がると窓を閉める。ふと、その硝子に反射した顔を見ると不安そうな憂いを帯びた顔であった。
(こんな顔、ウチらしくないやんけ。)
無理にニコッと微笑んでみて、もやもやを吹き飛ばそうとする。
(ウチがこんな顔しとったら、あの子も泣いてまうかも。……元気にしてるとええんやけど。)
さくらは机の上に置いてある写真を見つめた後に窓の外に目をやり、ひとつため息を着いた。それに映るのは幼き日のさくらと、その視線の先にある川の向こうに住んでいた2つ上の少女の写真だった。か弱さをも感じる透き通るような肌に鼻の上のそばかすがあどけなさを感じさせる。その癖の着いた髪はふたつに纏められていて、潤んだエメラルドと下がった眉ではにかんでおり、スラリとした鼻筋は少女の母譲りであり、海の向こうの異国の血のおかげだという。
まだこの争いが落ち着いていたころ、今は封鎖されたこの川にかかる橋のちょうど真ん中の広場になっている所でさくらとよく遊んでいた、隣の王国の女の子。
「今のこの状態を見たら、あの子は悲しむやろうな。ただでさえ泣き虫やったんやさかい、またウチがずっと撫でてやらんと泣き止まへんかもわからへんな。」
--約束……覚えてくれてるやろうか。
そもそも4歳だったさくらの事なんて覚えてないかもしれないけれど、それでもいつでも約束と願い事は同じ。
ウチ、ずーっとまってる。