ラブレターをありがとう拝啓
　
　マッシュくん、お元気ですか。僕は元気にしています。
　突然手紙なんて、と思ったかな。前にマッシュくんがおじいさんに手紙を書いているのを見て、僕も書いてみようかなと思ったんだ。
　長期休みに入ってから暫くぶりだね。普段いつも一緒にいるから、部屋にマッシュくんがいないのが何となく違和感があります。マッシュくんはおじいさんとどんな風に過ごしていますか？
　僕は休みを利用して、兄さまと街に遊びに行って来ました。こんなふうに兄弟で街を歩くのは、実は初めてかもしれない。昔はカフェとかに入る余裕、無かったんだ。
　そこのカフェにはね、凄く可愛いうさぎさんのパフェがあって。兄さま、それに釘付けになってたから僕が代わりに頼んだよ。いざパフェが来たら、兄さまったらアイスなのに眺め過ぎてうさぎさんが溶けちゃって、少し落ち込んだ顔をしていました。
　食べながら色々話してたんだけど、兄さまに「お前は本当にマッシュ・バーンデッドの話ばかりだな」って言われて、びっくりしました。そんなに？　って聞いたら、すごく真顔で頷かれちゃった。なんだか恥ずかしいな。でも、兄さまもお部屋に住んでるうさぎさんと昔の僕の話しかしないから、おあいこだと思います。まあ、仕事の話ができないからなんだろうけど。
　それで、食べ終わって外を歩いていたらね、なんとドットくんにバッタリ会ったんだ。お姉さんと一緒にいてね、僕たちと同じで姉弟で遊びに来たんだって。お姉さんから「弟がいつもお世話になってます」って、丁寧に挨拶されちゃった。二人とも、何だか雰囲気が似てたよ。
　しばらく話してたら、後ろからランスくんとアンナちゃんも来てさ。今日はやけに友達に会うなぁって思ってたら、さらにレモンちゃんとトム先輩まで現れて、僕びっくりし過ぎて笑っちゃったよ。レモンちゃんは新作の恋の魔法ケーキを買いに来てて、トム先輩はバイト帰りだって。ランスくんとアンナちゃんは、アンナちゃんのお洋服を選びに来たって言ってた。アンナちゃんが試着して出て来るたびにランスくんが後ろに飛んで、大変なことになってたよ。
　偶然みんなに会えてすごく楽しかったんだけど、僕、マッシュくんがここにいてくれたらもっと楽しかったんだろうなって思った。照れ臭くて書くのが遅くなっちゃったけど、本当はね、君がいないのが寂しくなったから手紙を書き始めたんだ。
　寮に帰って来た時、筋トレの音が聞こえないのも、シュークリームの甘い匂いがしないのも、何だか物足りない気がする。いつも君が隣にいてくれて、僕本当に幸せだったんだなって感じました。大げさかな。まとまらない文章でごめんね。
　君が帰ってくるのを、心待ちにしています。
　あ、でもおじいさんとゆっくり過ごしてほしいって気持ちは本当です。離れていた時間の分たくさんお話しして、シュークリームパーティーもしてきてね。
　それでは。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　敬具
　
　　　　　　　　　　　　　　フィン・エイムズ
　
マッシュ・バーンデッド様
　
　
　◯　◯　◯
　
　
　マッシュは手紙を読んで、軽く息をついた。何度も文を追いかける彼に、前の席に座っていたレグロが声をかける。
「マッシュ、フィンくんはなんて言ってたんじゃ？」
　その言葉に、マッシュは顔を上げた。少し考え、彼は真剣な顔で答える。
「僕のことが、大好きだって」
　レグロは目を丸くした。飲んでいたお茶を置き、まじまじとマッシュの顔を見つめる。
　そこに浮かぶ喜色に気がつき、レグロは顔を綻ばせた。
「そうか。マッシュは家に帰って来てからもずっとフィンくんのことばかり話していたからの。良かったなぁ」
「うん」
　マッシュは深く頷くと、早速紙とペンを持って来た。すぐに返事をしなくては。
　ペンを持ち、少し考える。やがて良い書き出しを思いつき、マッシュは手を動かし始めた。