部屋に入って思い出した。「……え、本当にわからないですか?」
思わずそう聞くも「気持ちがいいこと」とハララさんが考える素振りを見せる。
確かに最中に「気持ちがいい」と聞いたことがなかったが、それでも恋人にそう言われたら頬の一つくらい染めるのが普通ではないだろうか。
「ほら、一緒に帰ってお風呂に入ってご飯食べました。
いつもその後、ボクの部屋でなにをしてます!?」
思わず語気を強めてしまったがハララさんは少しだけ視線を泳がせ、やがてゆっくりと
「……報告書の作成?」
と返したので、ボクは「全然気持ちよくないじゃないですか……っ!」とタクシーの中で頭を抱えた。
幸い運転手はからかう様な人ではなく、ただ無言で車を走らせている。
気持ちがいいこと、つまり夜の営みが出てこなかった事に泣きたくなった。
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