おかしい、ボクはリビングの椅子に座ったまま考える。いつもなら必ず起きているハララさんが、起きていない。
先程デリバリーで頼んだスープは冷めないように布を被せ、パンは乾かぬように袋に入ったままだ。
通常の恋人同士なら「朝だよ」と寝ている恋人の頬をつつく事は容易いかもしれないが、ボクは出来なかった。
ハララさんの部屋には、朝七時まで無断で入ると警報音が鳴り響き、目覚めたハララさんは思いきりコインを弾いてくる。
当時頬にはコイン型の痣ができて、その前は額、もっと前はと数えだしたらキリがない。
それに、如何に完全防音の部屋を買ったとはいえ、警報音で起こしてしまった機嫌はちょっとやそっとじゃ直らない。
一日中触らせてもらえない時がなによりもキツかった。
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