新緑の頃それは、数年前の夏休み前。
3年生の食満留三郎は、裏々山まで自主ランニングを行っていた。
それはたいへんに陽射しの強い日で、蝉の声は近くから、遠くから聞こえた。
汗は首から背中へと走り、気が遠くなりそうな中で、彼は担任に言われたひと言を反復していた。
「お前は体力がなさすぎる。そのままでは、野垂れ死にだぞ」
留三郎は、生まれつき病弱なたちだった。
幼い頃から、よく医者に世話になったものだ。朝から夜から、よく嘔吐して布団に寝かされた。
兄弟と共に外へ遊びに行くとすぐに具合が悪くなるものだから、母親の見える場所で木の板を打って、細工を作って遊んだ。
どうやら両親は、彼が病弱な事も手伝って、少しでも体を鍛えてやろうと留三郎をこの学園に入れるの事を決心したようだった。
3866