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    eyeaifukamaki

    @aieyeaifukamaki

    今は沢深、仙牧メインに書いてます。たまーに別のも。

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    eyeaifukamaki

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    幼馴染?沢深
    あの夏の日③
    栄治君side
    えいじ君がかず君に出会った時のお話
    テツもでてきます
    息子の恋を応援する最強の協力者

    #沢深
    depthsOfAMountainStream

    その姿を見た時、天使がいると思った。
    初めて足を負傷して病院に行った時、病院の外のベンチで帽子を被って座っていたその子は、すごく色が白くて、ほっぺがすごく柔らかそうで、唇がぷるんとして、でも全体的にほわんとした雰囲気で、めちゃくちゃ可愛かった。身なりからして多分男の子だろう。男女関係なく、こんなに綺麗で可愛い子を見るのは初めてだった。俺の足は勝手に動いて気付けばその子の前に立っていた。俺の存在に気づいたその子が俺を見た時、俺は天にも昇る心地だった。この子の視界に俺がいる。認識してもらえた。それだけで心は踊り、すぐに声をかけていた。

    「君、一人?」
    「?…僕?」

    初めて聞く天使の声は、めちゃくちゃ可愛かった。

    「うん。病院にいるの?体悪いの?」
    「ここに入院してる」
    「そうなんだ。大丈夫?どこが悪いの?」
    「体ん中」
    「手術するの?」
    「分かんない」
    「遊ぶのは?遊んでもいいの?」
    「…多分、少しなら大丈夫」
    「じゃあ、一緒に遊ばない?」

    お願い、誘いに乗って。
    見た瞬間から、喋りたい、一緒にいたい、触れたいと、そんな想いが溢れてきて必死だった。咄嗟に出たいろんな言葉はそれなりに自然で、上手く会話できたと思う。

    「…う、ん」
    「やった!」

    躊躇いがちに「うん」と言った時の顔が可愛くて、思わず抱きしめそうになって、慌ててその子の手を握った。手を握ったことにより、今度はびっくりして目を見開いて、それがまためちゃくちゃ可愛かった。

    「俺、沢北栄治って言うの。栄治って呼んで」
    「えいじ、くん」
    「うん!君は?」
    「深津、一成」
    「ふかつかずなり、くん…いい名前だね!かず君って呼んでいい?」
    「うん」

    手を繋いだまま、名前を言い合って、お互いの名前を呼んで、バスケ以外でこんなに心がウキウキしたのは初めてだ。

    「かず君、どれくらい外でれるの?何時くらいなら会えるの?俺、病室行っていい?」
    「わ、かんないから、聞いてみる」

    俺の勢いが凄すぎて、ちょっと戸惑って、それでも答えてくれるかず君が可愛い。

    「俺ね、バスケしてるんだけど、足怪我しちゃって。病院に来たらかず君見つけて、話したくなって。だから、かず君が話してくれて嬉しい」

    へへっと笑うと、ほわんとしたかず君の口元も一緒に綻んだ。天使の微笑みの破壊力は凄い。またしても抱きしめたくなって、ぎゅっと握っていた手に力が入った。

    「バスケ?」

    そっか、スポーツとか、できないのか。

    「うん、知ってる?バスケ」
    「分かんない」
    「高いところにリングがあって、そこめがけてボール入れるの。試合もするんだよ。五人でチーム作って」
    「それ、やってるの?」
    「うん、家にリングがあるから、お父さんと一緒にやってる。ボール入れる事をシュートって言うんだけど、シュートが入るとすごく楽しいよ」
    「…楽しそう」
    「かず君は運動していいの?」
    「走ったりはできない」
    「ボール投げるくらいならできる?」
    「…多分」
    「じゃあ、今度シュート教えてあげる」
    「…できる、かな?」
    「できるよ!俺が教えるから」

    そうして俺はかず君に会う為に、ボールを持って毎日病院に通った。かず君は先生から外に出ていい時間を聞いてくれて、その時間ギリギリまでかず君と一緒にいた。近くにコートがあることも分かって、そこに連れ出したりもした。かず君は本当に体が弱くて、いつも帽子をかぶって、歩くのもゆっくりだった。だから、俺はかず君の手を繋ぐ事もできたし、シュートを教える時も、後ろから抱きしめる格好で、かず君がボールを持つ手に自分の手を添えて、一緒にシュートを打つこともできた。後ろから抱きしめてる時、病院の匂いとは別に甘い匂いがして、その匂いが凄くいい匂いで、俺はいつもかず君の首筋を舐めて、キスをして、かず君がもうやめてと言うまでずっと触れていた。けれど、こんなにも楽しく過ごしていた時間は、あっという間に過ぎてしまう。かず君の手術が決まって、ここの病院ではできないから、転院することになったからだ。離れてしまうなんて思ってもみなかったから、最後の日は、ずっとずっと抱きしめて、元気になったら絶対会いに来てと懇願した。でも、小さい俺は連絡先を告げるなんて事は、全く頭になかった。病院に来ればいつかは会えるくらいにしか考えていなかった。だから、かず君が行ってしまってから、かず君に会う方法がないことに気づいて絶望した。でも、かず君に元気になったら会いに来てと言ったから、それを信じて時間がある時は何度も病院に行き、近くのコートでバスケをした。それから二年、俺はまたしても天使を見つけた。コートの外に佇む姿はそこだけキラキラと光って、幻を見てるみたいだった。背が伸びて、体も大きくなって、帽子を被らなくても、元気に立っている。垂れた瞳にふわっとしたほっぺ、そしてぽってりとした唇。一目惚れした相手が、更に可愛く綺麗になって現れた。約束を守って俺に会いに来てくれた。俺の心臓は壊れるんじゃないかと思うくらい、バクバクと振動して、到底、声をかけれる状態ではなかった。一緒にいたテツが俺の尋常じゃない様子に、「ああ、あの子か」と言いながら、天使に近づいていった。俺は一歩を踏み出すことができなくて、ずっと離れたところで様子を見ていた。テツがかず君に声をかけて、会話をしている。羨ましくて、早くその輪に入りたいのに、俺の足は鉛にでも繋がれているかのように、全く動かない。極度の緊張で近づく事ができなかった。暫くして、テツとかず君は歩き始めた。テツは手を後ろで振って、ついてこいとジェスチャーしてきた。多分、かず君を送るためだろう。あんな可愛い子、一人で帰すなんて危険過ぎるから。やはり、向かったのは駅だった。そこまで送って改札で別れる。俺はかず君の後ろ姿をずっと見ていた。緊張で会う事ができなかったなんて、なんて俺は馬鹿なんだろう。かず君の姿が見えなくなるまで、必死でその姿を見ていると、テツに肩を叩かれた。

    「追うぞ」

    えっ?と思う暇もなく切符を渡され、急ぐぞと早足で改札を抜けるテツの後を、俺も走って着いていき、かず君の行った方向の階段を駆け上がる。ホームにはまだ電車はなく、少し離れたベンチにかず君が座ってる。見失わなようにと急いだけど、気づかれるのもまずい。階段を上がったところで、テツは足を止めた。

    「どこに住んでるか、知りたくないか?」

    そんなの、知りたいに決まってる。

    「知りたい」

    テツはへへっと、笑う。

    「じゃあ、探偵ごっこだ」

    テツは俺が話しかけれない事を分かっていた。

    「でも、遠いんじゃないの?」

    かず君は、わざわざ転院までして手術を受けた。そんな手術が受けれる病院なんて都会にしかない。

    「まぁ、時間もお金もそれなりにかかるかもな。で、栄治はこのチャンスを逃すのか?多分、もう、会えないぞ」
    「それはやだっ‼︎」
    「じゃあ、行くしかないだろ。せめて家くらいは知っときたいし」
    「でも、これ…ストーカーじゃ…」
    「お前はかず君の友達だろ。で、お嫁さんにするんだろ?将来のお嫁さんの家を知って何が悪い。まぁ、心配すんな。ちゃんと家まで帰れるか、見守るだけだ。あんな可愛い子、一人で帰らせたら拐われるかもしれないし。でも、栄治は今は喋れないんだろ?喋れるなら声かけるけど」
    「うっ、…今は緊張して、無理」

    そんなやり取りがあって、結局俺はかず君の家を知るという魅力的な誘いに負け、かず君の後を追い、かず君の家を知った。それからは定期的にかず君の家を見に行った。学校も知ったし、バスケをしてることも知った。毎回毎回、姿を見るたびに綺麗になっていく。かず君の健康的で膨よかな体は、例に漏れず思春期の俺のオカズになった。毎日毎日、俺の中で犯されるかず君。山王に入ったと知って迷わず俺もそこに決めた。元々行きたいと思っていた高校だ。かず君が俺が行きたいと思っている高校に入るなんて、どう考えても運命としか言いようがない。バスケで日本一になるのは勿論、絶対にかず君を手に入れる。俺はあの日の反省を踏まえて、毎日、かず君と会った時のシュミレーションをした。いろんなシチュエーションを完璧にする為に。俺に夢中にさせる為に。絶対に逃さない為に。俺は完璧な男になると決めた。
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    eyeaifukamaki

    DONEバレンタインなので、甘々な仙牧です。「いくつもの波を超えて 前編」からの4年後の二人が番になった後のカフェで気持ちを伝え合うお話。後編の内容を含む内容がありますが、そもそもまだ後編を書いてないので、牧さんと仙道との間に色々あって、それを乗り越えて番ったんだなと思いながら読んで下さい。仙道視点です。そのうち、店員視点と、モブ客視点も追加したい。重要では無いですが、時代的に携帯が出始めの頃の話
    甘い告白「牧さんこっち」

    手を引いて、目の前のドアを開ける。開けた途端、コーヒーの香ばしい香りがして、心がワクワクした。「いらっしゃいませ」という声と少し驚いた店員さんの顔。「まだいけますか?」と聞けば「大丈夫ですよ」と返ってきた。こういう所にでかい男が二人で来ることが珍しいんだろう。少し迷ってあまり一目に晒されない奥の席に案内された。こじんまりとしたテーブルは、牧さんと顔を合わせてヒソヒソ話をするには、丁度いい空間だった。ここは駅から牧さんの家に行く途中にある、俺が前から気になってたカフェテリア。本当は今日ここに来る予定は全然なかった。牧さんは大学四回生になり、就活を始めた。プロの道に行くかと思ったが、発情期の事を気にして、プロに行くのをやめた。俺はそんな事を気にせずにやればいいと思ったけど、真面目な牧さんはチームに迷惑がかかる事を良しとしなかった。でもそのお陰で、バスケに左右される事なく、こうやって約束してなくても会える時間が増えた。今日は俺の予定が流れて時間が空きダメもとで誘ってみたら、牧さんの予定も丁度終わったところで誘いに乗ってくれて、閉店ギリギリの時間にここに来る事ができた。俺がここに来たかったのは、牧さんの家に行く道すがら、ここの看板のメニューを見ていたから。だから、俺はメニューを見なくても頼む物は決まってる。だけど席に座ると自然とメニューに手がいってしまう。テーブルの横に立てかけてあったノート型のメニューを取り、中を見ると、手書き風な文字で書かれていて、如何にもカフェといった感じだ。やっぱり、男二人が入るには些か不自然な場所だった。
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    eyeaifukamaki

    PROGRESS沢深 監禁②
    沢北が深津さんに対して恋と自覚する話。
    深津狂の女の子がでてます。
    沢北を死ぬほど嫌ってますが協力者です。
    メインキャラでこれからも出てきます。
    誤字脱字確認用
    SIDE 沢北栄治

    中学になると自然と耳に入ってくる名前が何人かいる。中学で活躍してる選手は沢山知ってるし、合宿に参加して仲良くなった奴もいる。その中でも一際目立つ存在は何人かいた。その一人が深津さんだ。プレーもそうだが、それとは別の不思議な雰囲気を持ってる人。なんだか分からないけど、みんな気になる存在として深津さんを見ていた。高校に入ってその答えがわかった。深津さんが人を惹きつけていたのは色気だった。中学の時は色気と表現できるほど、あの雰囲気を理解していなかったが、露わになったうなじや服の間から覗く肌、流れて光る汗が何故か全部いやらしく見えて、近づけばほのかに甘い匂いがする。極め付けはあのぽってりとした唇と少し下がった瞳。無表情なのにどこか柔らかくて、細身ではなくむっちりとした体は見てるだけで堪らなかった。それでもモテるという存在じゃなかったのは、この人の性格だろう。明るくて元気な性格ならもっと目立っていただろうし、注目もされていた。そうじゃないのは深津さんがバスケ以外に興味のない性格で、積極的に話す方でもない。揶揄ったり面白いことを言ったりするけど、賑やかな人じゃない。語尾がおかしいから、そっちが気になって深津さんの魅力に気づかない人もいる。だから、深津さんに夢中になる人間は、どちらかというと、近づかず遠くでずっと見守ってる奴らが多い。言ってしまえばストーカーみたいなもんで、粘着性を持ってるからタチが悪い。老若男女、虜にするから、深津さんを狙う奴はかなり多い。男性はどちらかというとストーカータイプばかりだが、自分に自信のある女性はタイミングがあれば近づいていこうとする。だから、俺はそんな子達の気を俺に向かせた。もう既に深津さんを神聖な目で見ていた俺は、汚れた奴らが深津さんに近づいていくことが嫌だった。あの人は穢れた庶民が触っていい人じゃない。バスケだけに集中させていれば、あの人は輝く。恋愛なんて余計なもので穢さないでもらいたい。あの人に触っていいのは、あの人以上にバスケが上手くて、あの人が信頼できる人物だけ。だから俺が阻止する。絶対に深津さんが誰のものにもならないように。でも、その中に一人落ちない奴がいた。深津さんと同学年の文月麗華(フヅキレイカ)だ。文月は名家と言われる程の名の知れた一族で、政界や経済界にも沢山その名が通っている。麗華の家は父親が血文月総合
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    eyeaifukamaki

    DONE何番煎じかの記憶喪失ネタ。同棲中に沢北が事故にあって深津さんの記憶を無くして、深津さん出ていきます。沢北を狙うモブ女がでてきて、でも沢北は相手をしなくて、なんじゃかんじゃがあってのハッピーエンド。沢北も深津さんもお互い大好きなので、お互いを思って行動します。沢北は最後まで記憶なしです。そしてもう一度恋をするのです。フォルダはR-18に繋がるので、そのうちR-18を載せます。
    もう一度、恋をするside 深津

    まだ少しだけ陽の光が周りを照らしていた場所は、既に照明の光へと姿を変えている。予定の時刻は遥か昔に過ぎ去っていて、スマホの画面とにらみ合うのは既に別の目的へと変わっていた。電話をかけても留守電にすらならない。思い当たる場所にかけてみたが、いい返事は返ってこなかった。コツコツと動く針が、外と同じ光の色を示している。

    『分かってます?時計をプレゼントするって事は、時間を束縛するって事っすよ!俺はそういう意味で渡すんです。だから、受け取るなら…そんな想い全部、ちゃんと貰ってくれないと困るんです』

    受け取って欲しい、でも軽くみられたくない。そんな想いが綯い交ぜになって、怒りたいのか、泣きたいのか、照れてるのか、その全部を混ぜたような、なんとも言えない表情で、おずおずと差し出された手の平の箱。その中に入っていた時計は、あれからもう三年の月日を刻んで、今の俺の腕に収まっている。その針が約束の時間より更に一回りして、先の見えない時間を刻んでいく。
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    eyeaifukamaki

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    ⑤の後のケイside
    みんなから愛される深津さんが好き
    誤字脱字確認用
    深津さんが倒れた。
    深津さんがノアと契約して離れるものだと思っていたけど、結局俺も、通訳として一緒に行動することを許された。多分、爺ちゃんとの契約だろう。ノアは思ってる以上に忙しくいろんなところに飛び回っていて、そのアシスタントである深津さんも同じように行動する。日本に行くことになって、深津さんも俺もそれぞれ休暇がもらえて、深津さんは実家に帰り、俺は爺ちゃんのところに行った。休暇の間は深津さんの行動は分からなかった。倒れたと連絡があった時はどうやら深津さんは東京にいて、爺ちゃんの会社にいたノアが一番早く病院に駆けつけて対応した。俺が病院に着いて個室に行くと、ベッドの横にテーブルがあってノアがパソコンを広げて仕事をしていた。深津さんは眠っていて、睡眠導入剤を入れられて明日まで起きないと言われた。ノアを背にしてベッドの横に座って深津さんの顔を見れば、涙を流した跡があった。疲れからくる発作で心配ないと言われたけど、そんな事はないと確信した。多分俺がくる前にノアと話をしたんだろう。何かがあったんだとモヤモヤして、このままだと帰るに帰れなくて、ノアに何があったのか聞いた。案の定、話してくれるはずもなく、それでもしつこく問いただすと、カズのプライバシーの事だからと一喝された。分かってる、分かってるけど、倒れるほどになるまで深津さんがおかしくなってしまった理由を知りたかった。いや、理由なんて沢北のことだって分かってる。ただ何があったのかを知りたかった。
    1891

    eyeaifukamaki

    PROGRESS愛をみつける
    ②と③の間の沢北side
    ネトフリ公式ので、萌え散らかしたww
    これ聞いて、ちゃんと深津さんに愛されてるよって思ってるけど、このさぁきたくんは相当自信をなくしておりますww
    ちなみに深津さんは沢北ファンの前では一緒にいないようにしてるので、深津さんと沢北ファンとの接点がなくて、みんな沢深推しなのに誤解されたまま。
    誤字脱字確認用
    『カズがノアとアシスタント契約を結んだらしい』

    それはチーム内でもすぐに噂になった。でも、誰もあまり驚かない。それは深津さんがそういう人材に適してる事を意味していた。まだ早いんじゃないかという意見も聞こえたが、概ね、みんな納得してこの事実を受け入れた。ただ、深津さんはみんなから好かれてる。

    「カズがいないと寂しい」
    「エージ、カズはいつ帰ってくるんだ」

    みんな口々に俺にそう言ってきて、深津さんの情報を聞き出そうとする。でも、そんなのは俺が知りたい。誰よりも深津さんは俺を避けている。これから深津さんの話を聞くことができるのは、俺以外の誰かから。

    なんで?
    どうして?
    俺が嫌だった?
    好きじゃなかった?

    でもよくよく考えたら、深津さんから好きって言われた事がない。高校の時に、俺から告白して、無理矢理体を繋げて、それで今までずっと上手くやってきたから忘れていた。行動で示してたつもりだったけど、馬鹿だな、俺は。深津さんの気持ちをちゃんと聞いたことがない。自分が頑張れば、深津さんは自分のものにできると、ずっと思って行動してきた。それはそれで間違ってはいないけど、それに言葉が伴ってない。深津さんの気持ちも聞いてないし、俺だって、最初の一度きりでそれ以来、ちゃんと気持ちを伝えてない。全部、何もかも、俺の勢いと想いだけで成り立っていた関係だった。だから、今になって、なんで?どうして?と、根本的な疑問しか考えられない。普通なら“好き”が大前提にあって、それとは別にここが嫌だとか、こうしてほしいとか、そういう具体的な問題が出てくるもんだ。でも最初から言葉が足りてないから、何が嫌なのかも分からない。頑張ることだけをやり続けていた俺には、追いかける術を持っていない。正直、これからどう対処すればいいのか、どう動けば正解なのか、全く分からない。動いたら動いたで、何もかも裏目に出そうで、それが原因で本当に深津さんを失いそうで、その恐怖が付き纏って何もできなくなってしまっている。深津さんがいなくなって、十日経ったあたりから、俺のファンも異変に気づき始めた。情報収集は俺より優れているから、もう、どういう状況かも把握している。心配そうに聞いてくるのを、困った顔で返す事しかできなかった。
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