すぅ、はぁー、ふぅっ…
気合いを入れる為に深呼吸する。あの最後の日以来、ちゃんと目を見て話すのは八年ぶりだ。今日の部活で新入生の顔は見てるはずだけど、俺自身を覚えてるかは不明。だから、「誰?」っと言われた時のシュミレーションもできている。心の準備は万端。あとはこのドアを叩くだけ。ドアを叩くのに、ここまで緊張するのは初めてだ。でも俺は、この日の為に八年も準備した。中学でも同じところに行けたけど、俺は敢えて高校を選んだ。体と心を整えて、全てにおいて、かず君を包み込めるように。でも、やはり最初の一歩はどうしても躊躇してしまう。
「よしっ」
勇気を出してドアを叩く。ドキドキと心臓が高鳴り、扉が開いた瞬間、もうダメだった。最後に別れてから、ずっとずっと求めていた、大好きな人にやっと触れられる。気づけばドアの鍵を閉めていた。
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