平行 それでまあ、腕相撲なんだけれども、なぜ腕相撲かの説明もした方がきっといいだろうから、させてもらうよ。腕相撲。きっかけはその日たまたま外来を訪ねて来てくれた人が、「あら一也ちゃんもずいぶん立派ね」と言って、何が立派かって腕の筋肉だって言うもので、そりゃあまあ、体格はいい方だと自覚もあるし、でもやっぱり、これは本心から出た言葉だから信じて欲しいんだけれども、自分より先生の方が余程逞しいじゃないか、って思ったんだ。口にも出した。
「いや、先生の方が余程ですよ」って。そうしたらもう、なんて言うのか、呆れられてしまって。「お前は自分を幾つだと思っているんだ」ってね。今の似ていたかな? 先生の真似だよ、……そう聞こえなかったのならもう二度とやらないようにする。
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