KKがぬいたちと同居を始めて一週間が過ぎた。
万一のための監視役だったがぬいたちは与えられたスペースという名のテーブルの上から出ることなくのんびり暮らしていた。
「家具とか買ったら反応あるかな?」
「いらねえよ。テレビ見てんだから十分だろ」
段ボールに突っ込んでおこうとしたKKに反対していい感じのミニクッションを二つ置き、二体がリラックスしてテレビを見られるようにしたのはほぼ週末通い妻をしている暁人だった。
「コイツらテレビ見る以外引っ付いてんだぞ」
「そりゃあ……僕らのぬい……だし?」
『け!』
恥じらう暁人に対してぬいあきは嬉々としてぬいけけにへばりついている。ぬいけけの短い腕がぬいあきに添えられているので満更でもないのだろう。そもそも本体である暁人とKKも恋人同士だ。なのだが。
(コイツらのせいで暁人とヤれてねえのにこれ以上優遇してたまるか!)
KKのフラストレーションは最高潮に達していた。なにしろこれまではKKの家に暁人が来るイコールセックスするであったのにかれこれ二週間していない。これが仕事が立て込んでるとか喧嘩をしているからならまだ我慢できるというかせざるを得ないというかどうやって和解するかで必死になってそれどころではないのだが、今は二人の関係は良好で目の前に機嫌のいい暁人がいるのである。
セックスしたい。なのにできない。
『……と』
ぬいけけがぬいあきの肩?を叩く。
『け?』
『とと』
KKたちには理解できないが二体は会話ができる。
どうしたのと不思議がる暁人に頷いて二体はテーブルから降り、横倒しになった塩神の段ボールの中に入り、内側から閉めた。
「「…………」」
KKと暁人の沈黙が重なる。
ぬいたちの意図をKKは理解できた。そもそもぬいけけは元を質せばKKであるから、ぬいに一次欲求があるかは別として、KKの願望を察知してもおかしくはないのだ。
しかし暁人の方はどうだろう。ぬいたちの突然の行動が理解できず唖然としているのではないか。そこからどうやってそういう雰囲気に持っていけばいいのだ。下手をしたら照れた暁人にぬいたちに気を遣わせたと怒られるのではないだろうか。
そう案じながら橫を向くと、KKの予想に反した震える赤い顔がそこにあった。
「……暁人」
「待って、これはぬいあきがKKといちゃつきたいっていう僕の考えを読み取ったとかそういうんじゃなくて――」
それ以上の釈明は必要なかった。