勝己のプロポーズは出久の5歳の誕生日の翌日であった。
才能に溢れる者が集う学び舎でも、ともに学上に励む知己には「才能マン」と言われる己は5歳の時分でも、この世の中の事は大体把握できていた。
曰く
この個性が尊ばれる時代に於て無個性として生まれてしまえば、生き抜くのですらいばらの道であると言う事を。
テレビのコメンテーターがまるで人の総意であるとクソデカい声で言うのだ
「大個性時代ですね」
「個性によって成り立つ世界です」なんて
クソくらえと思う
4歳を過ぎて5歳になっても個性が発現しなかった幼馴染が「ひーろーになりたい」と
大きなみどりの瞳からぽろぽろと綺麗な涙をこぼして、小さなコーラル色の唇を噛みしめて言うのを抱きとめながら、ギリリと奥歯を噛みしめる
手前ぇらに何が分かるのか!と
「個性」なんぞ、コイツが生来持っている美しさの前では無価値でしかねぇ、と。
腹が立ってしょうがないのを
何とか堪える
必死でこらえる
*****略********
膝の上で泣きつかれた幼馴染がすーすーと寝息を立てている
「あら、寝ちゃったのね」とこれまた目じりに隈を作った引子おばさんがやってきて
「勝己くん、ありがとう」というのに首を振りながら「出久が泣いてるのを知らないよりいい。」「勝己君は優しいねぇ。」とほほ笑むから
違うんだ
そうじゃなくて
俺の是は優しさじゃなくて
「俺が優しんじゃない。なぁ、引子おばさん。俺、こーがくのうぜいしゃになるから。ぜってぇなるから。だからコイツを俺のものにしてください」
金も富も名声もお前の分も俺が得るから
だから
お前はずっとそのままでいて
(無個性のままの君を愛しているが故に)