「君も変わったよね。」
「そうですか?」
「そうだよぉ~。なんていうか150年前もそういう時があったよなぁって思ってさ」
あの時は急に『医者になります』って言ってきたんだよねぇ~なんてカラカラと笑いながら鳥籠に入れられた麗人であり、元担任の先生は形作った笑顔でいう。
「あの時は『お兄さんに教えてもらったんです』って言ってたけどさ。君にお兄さんなんていないし、誰だよ?って思ってたら晴明君だったんだもんね~いやぁ、驚いたよ。さて、150年ぶりに会えた『お兄さん』はどうだった?」
「ダウト。先生、本当は150年前から『お兄さん』は安倍先生だと気づいていたでしょう?」
「ありゃりゃ?」
「安倍先生の退魔の力はそりゃあ強大ですからね。あの光を先生が見逃すはずないですよね?それに、アレからすぐに学校を辞職されたでしょう?」
先生の事だから、事件を起こして解雇されたものだと思っていたけど。
そうじゃないでしょう?
「安倍先生を探したんですね」
疑問形にはしなかった。だって分かっていることだから。
僕だって、きっとそうする。
あの光、退魔の力。おにいさんへの目印。それが表れてしまったらきっと何を捨ててでもその傍らに侍ろうとする。
だって、そうしなければ居られないでしょう。
探して見つからなくて、見つからないことに何度傷ついても、それでも探すことを辞められない。
だって僕だってそうだったから。
全国各地に散らばる僕の『病院』
実際にはここまで大規模に広げるつもりなどなかった。
むしろ大規模にすればするほどに、雑務は増える。
経営手法に雇用者の調整。次代の育成。
昔の僕だったらそんな雑務をこなすことよりも、僕自身の『知識欲』にすべての時間をつぎ込んでいただろうに。
おにいさんは僕とどうやって出会うのか、未来はどうなっているのか一切を教えてくれなかったから。だから全国各地に(なんなら海外には可畏君を派遣したのだって)僕の眼を作った。
百目鬼の力としては500メートルが限度だけれど、全国各地に僕の経営という名の『眼』を置けばいい。眼を置けば、お兄さんを見逃すことは無いから。
きっと目の前のこの人だって同じだ。
だって『お兄さんは』人をそうすることは天才的だから。
言うなれば傾国やら、オムファタールと呼ばれる存在。
それを目の前の麗人もきっと理解している。
「‥‥君には幸せになって欲しかったんだけどなぁ」
元担任が嘯く。
まぁ、ね。
傾国やらオムファタールに魅入られて幸せになれたなんて、物語でもほぼ無いですしね。
どちらかが死ぬか、どちらも死ぬか、の違いだけで結局結末は悲恋を心配してくるのだと言う元神が言う。定められたように。
「嘘ばっかり。」
「酷いなぁ~。嘘じゃないよ?。元教え子には幸せになって欲しいって思ってるよ」
「思ってる、の後に『安倍先生にかかわらなければ』って入ってますよね?」
ええ。大丈夫です。分かってます。だって僕も同じだから。
悲恋になるからやめなさいとか、そんなおためごかしに反吐が出そうになるのを笑顔で隠して、若者の(160歳)の僕が言ってあげましょう。ええ。
「僕は若者ですから。好きな人とはハッピーエンドを目指せるんですよ」
************
なんで全国各地に病院経営してるんやろ?この妖怪?って思ったら
おにいさんと会えるようにする手段は全部とるよ!!的なのだったら私は嬉しい