「いいなぁ」
本当に、ただ零れ落ちたそんな声だったに、品出し途中の顔を上げれば
カイ君はさっきまでレジ対応をしていた親子が帰る後ろ姿を見ていて
その目があまりにも、透明だったから
そんな目をする彼に、何かしたいと思ったんだ
***
「パイセン!20歳おめでとうっす!!」
「うわ!うるさっ」
ぱあん!と一気に数個のクラッカーを鳴らしてカイザー君は笑った
(略)
「で、プレゼントは当日欲しいものをいうって言われたっすけど、何がいいんすか?」
バイト代もキッチリ貯めてますし、センパイが欲しいものだったらそこそこ何でも買えるっすよ、なんて胸を張る彼に
紙を一枚差し出した
『特別養子縁組』
(略)
「同情っすか?」
驚いたほど冷えた声と瞳だった
(分かってる。きっと傷つけることも分かってた)
でも
あの夏の日、親子を見た彼の眼を見たときから決めていたこと
「同情で出せるほど、軽い紙じゃないよ。」
「でも、アンタと俺はただの同僚で・・・恋人でもなければ、アンタは俺に恋なんてしてねぇだろ?」
「うん。そうだね」
肯定すれば、さらに傷つけた顔をさせてしまうけれど
しょうがないじゃないか
恋なんかじゃないけど
「恋じゃなきゃダメ?一緒にいたいって、君を温めたいと思うだけじゃ理由にならない?」
それでも
君の幸せな姿を見たいよ
君と幸せになりたいよ
**みたいな話