話すこととかなくてもいいから、てかあるから!(千景が茅ヶ崎にポロポロ昔話し出した時空)
「密と先輩って最初っからあんなんなんですか?」
「もっと馬鹿みたいに喧嘩してたよ」
「わは、昔から仲良しなんですねえ」
「仲良しっていうか……兄弟みたいなもんだから、わかるだろ、もうひとりがのんきでさ、そいつも、仲良いねって、言ってたよ」
「そのひとはもっと年上だったんですか?」
「いや、同い年ぐらいだった」
オーガストって言ってさ、と、言おうとしたが、そしたら、そしたら?色んなことを話さないといけなくなる、いや、そんなことない、茅ヶ崎は、みんなは、でも、いや、オーガストの話を茅ヶ崎に、したい、したい?してどうする、
俺の思考回路が2秒くらいのうちにそんな逡巡を行う、そのちょっとの間で察して、茅ヶ崎はアッサリ俺のターンを終わらせてくれる。
「……俺もよく、お姉ちゃんと仲良いね〜、男の子と女の子なのに珍しい、とか言われてました、従順だっただけなんですけども」
「うん」
俺が話したくないこととか、その辺りの加減は、ぜったいにまちがえない後輩なのだ。
(そうこうしてるうちに、茅ヶ崎に昔のこととかちょっとずつ話せるようになり、話してたのに、塩梅がわからなくなってくる千景、あんまり自分から皆と話さなくなる、特に茅ヶ崎に喋りかけなくなる。でも話しかけられたら普通に会話は普段通りなので、なんか最近先輩無口?いやでも喋ってるしな、になる茅ヶ崎に、突然わからんちんなことを言い出す千景)
「俺、お前と何話してたっけ」
「は?いや別に……みんなのことも仕事のことも芝居のことも……なんでも……俺は俺の話したいこと話してましたし……」
「……うん」
「え、それで最近先輩ぜんぜんなんも話しかけてくんないんですか。え、あー。」
内心なんじゃそりゃ!な茅ヶ崎。でも、わからんなりに優しくしたくもある!てか、したい!
「……いや、大丈夫、先輩話したいことなくても大丈夫です。俺、いっぱいあります、いつも、先輩に話したいこと、会社でむかついたことも、ゲームの進捗も、芝居で気づいたことも、カンパニーのみんなのことも、いつも俺は先輩に話したいです、だから、」
「うん」
(夜一緒に寝る時も喋らなくなる千景、その時間が茅ヶ崎は好きだったのにな〜。代わりにどうでもいいこといっぱいしゃべる茅ヶ崎。)
「……おやすみ」
「……ねねね、今日新人配属だったんですよ、うちの部署」
「ああ、へぇ」
「男の子と女の子、ひとりずつ。挨拶周り的なのしてて、でその面倒見てたのが件のカキタさんで」
「人選ミスだな」
「そう」笑
「でね、色々案内して、最後俺んとこ来て」
「うん」
「なにかな〜と思ったら、『で、これがうちで一番イケメンの茅ヶ崎くん』て」
先輩から嘲笑とも呆れともつかない短い笑いが漏れる。
「俺うわ〜と思って、新人の子たちの顔見たら、男の子はカキタさんに気ぃ使って微妙な笑顔してたんですけど、女の子顔ヤバくて、マジキモいこのおじさんって感じでカキタさん見てて」
「ふ」
「変顔レベルだったんで俺笑い堪えるのたいへんでした」
「……茅ヶ崎」
「はい」
「ありがとうな」
「…………いや、……それ……え〜、言っちゃったら…」
「ふ。そう?」
「いや、ま〜……」
「……うちは新人は来ないかな」
「あ〜、ね、先輩のとこはね」
先輩はほんとに話しかけてこなくなった。ぎくしゃくしているわけではまったくない。いつも通り。声もかけられる。話かければいつも通り軽快なテンポ。でも、今日咲也がさ、とも言わない、極端すぎる!
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みたいな話読みて〜。最終千景が話せないから部屋にいるの自分で勝手に居心地悪くなってどっか行こうとするから、茅ヶ崎は「先輩。大好き。どこも行かないで。行ってもいいけど、帰ってきてください。俺は先輩が大事です。」ぐらい言って引き留めるところを1番読みたい。