やきう観戦「あーっ!兄ちゃん、高橋出てきたよ!かっけー!」
「どこだ?」
「あそこ!ねえ、千景さんあれが今日の先発!俺、大好き!ストレート、すごくて!高卒3年目なのにローテ入ってるんだよ!」
「ローテ入ってるって?」
「プロって毎日試合あるからピッチャーが何人もいるんだけど、ピッチャーのレギュラーみたいな人が決まってて、その人たちがローテーションで投げるんだけど、そのメンバーに入ってるってこと!」
九門がニッコニコで説明しているのを先輩ごしに聞く。
ね、先輩、だから言ったでしょ、野球のルールとか、選手事情とか、勉強しなくていいですよって。と、俺は心の中でつぶやく。野球観戦決まった瞬間に、野球ルール解説ブログと、プロ野球がらみの2ちゃんのスレを覗いていた先輩を止めたのは俺だ。九門は、先輩と一緒に野球観て、そういうのを自分で先輩に教えたいんですから、と言ったら、一瞬黙った後で先輩は、確かに、と納得してPCのタブを閉じた。あの優秀でスパコン積んでるみたいな高速回転脳みそはそういう所に考えが至らないときがある。グッジョブ俺。
「あの若さでそのメンバーに入れるのはすごいことなんだね?」
「めちゃくちゃヤバいよ!」
九門が楽しそうに説明して、先輩は嬉しそうにそれを聞いている。
はあ、良き光景だ、見れて嬉しい、でもしかし、これは、さすがに、
「イヤ、これはさすがに暑すぎるヤバいこれは溶ける無理すぎる、俺9回終わる前に溶けてるかも、九門冷えピタちょうだい」
真夏の屋外球場は、例えナイターだろうと、めちゃくちゃ暑い。
「いいよ!えっとねー、どこ入れたっけ」
「……まだゲーム始まってないんだけど。お前なんで来たの?」
いや。
茅ヶ崎も行こうよ。なんて、てらいなく言われたら、はい、以外言えないんですって。とは言えなくて。
「え〜。暑いとか、なんも考えてなかったです」
「そんなことある?」先輩はそう言って呆れて見せも、自分のかばんから凍らせたペットボトルを取り出して俺の首にあててくれる。
「うわ気持ち良すぎる」
いや、こういうイベント発生するのめちゃくちゃいいな。
「やっぱ来てよかったな〜」
「は?なんだそれ」
「いや別に、あ、ねえ先輩あとでアイス買いに行きましょ、サーティワンあった」