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    negitama_mata

    @negitama_mata

    kb/擬/原型/文章/絵

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    negitama_mata

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    dm♂sd♀、夏の終わりくらい、ダが剣の修行に行く前の短いお話。球体族の独自設定あり。
    表でメモのサンプルとしてあげた話を整えました。

    流れ星の習性 日が短くなって、夕方になると気持ちいい風が吹くようになった。お家の中よりも、外の方がずっと涼しくて過ごしやすい。
     だから、今日はお外で夕ご飯にしようよ。
     ぼくがそう言ったら、ダークはちょっとだけ面倒くさそうだった。でもすぐに、それでいい、って許してくれた。
     外の芝生にシートを敷いて、夏のお野菜のカレーを持って行った。ふたりで並んで、夕日と入道雲を見ながら食べる。
     カレーは美味しくできたと思う。ダークもそう思っている。たぶん。
     今日は、いつもみたいにダークの気持ちに確信が持てない。
     最近のダークはたくさんのことを考えているから、本当の気持ちがわからないことが多い。
     特によく考えているのは、剣のことだ。次に多いのが、入道雲の向こう側、外の世界のさらに外、宇宙のこと。このふたつのことを考えている時、ダークは落ち着きがなくてうずうずしている。
     こうなったダークが何をするのか。ぼくは知っている。旅に出るんだ。ぼくを置いて、ひとりで。
     隣のダークを見ると、食べる手を止めて空を見ていた。また考えごとをしているようだ。遠くを見てばかりで、時折思い出したようにカレーを口に運ぶ。
     ――ダークが旅に出るのは、しょうがないことだ。
     ぼくは、心の中で声に出してそう言った。
     ぼくたちの写し元であるカービィとメタナイトは、流れ星みたいなもの、らしい。
     誰に言われたわけでもないけれど、カービィはそうだと知っている。ぼくの中にあるカービィの記憶に、そんな自覚がうっすらとあるのだ。
     流れ星は基本的には止まらない。広い宇宙をあちこち移動し続ける。そういう定めを持っている。
     だから、カービィはお家があっても冒険に出て行くし、メタナイトも自分の戦艦で宇宙のいろんなところに行く。
     写しのぼくたちもそれに抗えない。鏡の魔法で生まれて、外と違う理で生きているはずなのに、このまんまるい体の本能の方が強いのだ。
     お家でぼんやりするのが好きなダークも、ふとした時に遠くに行きたくなってしまう。
     ダークが行きたい遠い場所は、剣の道の高み、という漠然とした場所だ。もちろん、現実には存在していない。ダークの本当の望みは、まだ見たことない強さに会うことだ。
     ダークは鏡の国のあちこちで戦っていた。ここで目新しい強さを見つけることは難しいから、外に探しに行かないといけない。
     今頃、ダークの体の奥は、見たことのない場所に行こうと言い始めているに違いない。ふたりで一緒にいることが一番だとわかっていても、遠くに行きたい衝動に揺さぶられている。
     ぼくもダークとおんなじ気持ちになる時があるから、よくわかる。
     最初にそうなった時は、とても大変だった。
     渡り鳥が隊列を組んで空を飛ぶのを眺めていたら、無性についていきたくなってしまったのだ。自分の知らない場所があると思うと、この目で確かめたくてしょうがなかった。
     駆け出して空を飛び、群の一番端っこにくっついて行った。鳥達と一緒に飛ぶのは楽しかった。でも、ぼくはすぐに疲れてしまった。
     本当なら、ぼくたちはとても遠くまで行ける。このまんまるの中にはたくさんのエネルギーが詰まっていて、体ひとつで宇宙を旅することができる。でもぼくの体はほとんど空っぽだ。割れたダークを元に戻すのに、ぜんぶ使ってしまったから。
     渡り鳥とちょっととずつ距離が空いて、ついていけないのがもどかしくて、泣きたくて。高度が落ちて疲れてふらふらになり、群が遠くの点になってしまった頃、探しに来たダークが見つけてくれた。
     ぼくはいっぱい泣いてしまった。遠くに行けない、本能をまっとうできない不甲斐なさは強烈だった。
     けれども、それ以上に、ダークを置いてきぼりにしてしまった自分が大嫌いになった。ぼくにとって一番大事なのはダークだ。ダークとずっと一緒にいると決めた。なのに、まんまるの体の本能に負けてしまった。それが悔しくて、悔しくて、ずっと泣いていた。
     今でもたまに、遠くに行きたくて、心がはちきれそうになる。でも、もう衝動的になったりしない。遠くに行きたい理由がちゃんとわかっているし、体だってまだ治っていないから。
     本当はダークと一緒に遠くに行きたいけど、それもまだ無理だ。
     あと数日したら、ダークはぼくをおいて行ってしまう。それがぼくたちという存在だから。ちゃんと帰って来てくれるのはわかっているけれど、見送るだけなのはちょっと辛い。
     ダークは今度はどこまでいくのかな。いつ帰ってくるのかな。
     まだ旅立ってもいないのに、もうすっかり寂しくなっている。
     かつんかつんとスプーンと食器がぶつかる音がする
     しばらくの間はご飯も一人で食べなきゃいけない。いやだな。少しの間だけ、カービィのところに行こうかな。でも、ダークがいつ帰って来てもいいように、お家にもいたいな。
    「シャドー」
     カレーを綺麗に平らげたダークが言う。
    「美味かった」
    「そっか、よかった」
     ダークは優しい。もうすぐ旅立つから、わざわざ言ってくれたんだ。ああ、嬉しいなあ。でも、寂しいなあ。
     ダークが手を伸ばして、頭を撫でてくれた。おおきくて温かい。
     ずっとこうだったらいいのに。でも、ダークがしたいことをできるのが一番だから。ぼくはちゃんとここにいるね。
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