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    mitotte_kazu

    @mitotte_kazu

    自機ルガオスとエタバン相手のヴィエラとかよそよその話とかNPCよその話とか置いとく場所。
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    mitotte_kazu

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    ナマコさん(@namakomesi )から素敵なお題を頂いたので勝手なイメージで書き上げた🦍と🐇さんのお話

    紅茶とジャム 普段は珈琲を好んでいるヴィエラもたまには紅茶を嗜む。基本的にホットドリンクが好きで、更にそこに仄甘い焼き菓子が添えてあるだけで彼女にとってはご褒美になるらしい。ダンジョンで遭遇した相性が良くない野良冒険者や依頼を達成する上で生じたトラブルなどで損なわれそうな機嫌を、そういったもので整えている姿をしばしば見かけた。本日、例に漏れず人件費を削減したがる倹約家の依頼者からの無茶振りに応じた彼女もそうだった。
    「本っ当あり得ない!!」
     依頼者の前では冷静に落ち着いて対応していたものの、休憩と称して寄った喫茶店で彼女は声を荒げていた。ぷりぷりと怒りながら愚痴を溢す彼女に本当にお疲れ様だったとルガディンはメニューを差し出す。全くもう!と唇を曲げていた彼女が開かれたメニューに目を走らせた。眺めている内に纏っていた空気から棘が少なくなるように感じられ、安心したように彼も自分の分を広げ視線を落とした。食事を摂るには半端な時間だが小腹が空いている。軽食の写真が載せられたページを眺めていると、目の前の彼女も微かに唇を引き締めて真剣な表情でメニューに視線を向けていた。ペラペラとページを往復し、むう、と眉間に皺を寄せている。

    「決まったか?」
     声をかけるとオムライスとパスタで悩んでいるのだという。両方同じページに載っていた気がしてページを往復していた事に微かに首を傾げつつ、丁度自分が頼もうと思っていた品と一緒だったためそう伝える。
    「じゃあ、パスタにする!」
     ぱ、と表情を緩めたヴィエラにルガディンもつられて口角が上がった。頷いて応えると、また彼女の唇が微かに尖る。
    「デザートのケーキセットも美味しそうなんだよね〜」
     ケーキの写真が並べられたメニュー越しに、食べられるかなぁ、と甘えるような上目遣いで見つめてきた彼女に苦笑してしまう。顎に手を添え同じページに視線を落とし、彼女が好きそうな期間限定品と定番の品まで絞り込んで指を差した。首を伸ばして確認した後、あたり、と嬉しそうに目を細めた彼女につられて彼も微笑む。
    「俺はこっちが気になるかな」
     定番の品を指差すと、じゃあ私はこっちにしよ、と歌うように彼女は呟き、店員を呼んだ。
     地元の野菜を使っている割に安価で美味しい食事の後、デザートのケーキセットを堪能しながら2人は会話に花を咲かせていた。本日の依頼の愚痴は一口パスタを頬張った時点で消え去った彼女が他のメニューについて話し出す。先程よりも柔らかな空気を纏った彼女の話が途切れたタイミングで、彼はオムライスの皿を差し出し味見を促した。一口頬張りこっちも美味しいね、と彼女は満足気に微笑む。フォークに巻き付けたパスタを差し出して来られ、逡巡するもお返し、と強調される。こうなった彼女は断固引かないので周りの人の目に触れませんように、と内心祈りながら身を乗り出した。
     朝限定の軽食も美味しそうでいいなぁ、と呟いたヴィエラは一割ほど食べ進めたケーキの皿にフォークを置き、メニューに手を伸ばした。少し身を乗り出したルガディンが覗き込むと朝早くから昼前までやっているらしい。トーストと簡単なサラダなどの定番のメニューからフレンチトーストやパンケーキのような甘いものまで用意されていた。
    「すごいな」
     すごいよねぇ!と目を輝かせた彼女が次に放つ言葉に予想がつく。
    「明日の朝さぁ、またここに来ない?」
     近くにホテルを取っておいてくれていた彼女の提案を拒否する理由も意味も見出せず、笑って頷いて答えた。やったぁ、とほころんだ表情の彼女に半分程食べてしまったケーキの皿をやんわりと差し出す。一層表情を緩めた彼女が一口ケーキを頬張り、おいしい、と自分の皿を差し出してきたので控えめな量をフォークで掬い、彼も口に運んだ。

     よく晴れた翌朝。目覚めたルガディンが時計から腕の中に視線を落とす。閉ざされた遮光カーテンのおかげで薄暗い室内に、設定した時間通りのアラームが鳴り響いた。
    「もう少し休みたいぃ……!」
     呻きながらアラームを叩いて止めたヴィエラを、苦笑しながら彼が優しく抱き起こす。うぇえ、とまだ十分に覚醒していない頭を彼の胸元にもたれさせ、少し休んでから彼女がゆっくり立ち上がった。普段なら丁寧に整えられている毛並みの耳に寝癖がついてる彼女の背中を見送りながら、珍しいなと思う。顔を洗ったりしている内に覚醒してきたようで、髪のセットや化粧などいつも通りに彼女の身嗜みが整っていく。その様子を歯を磨きながら眺めている時間が彼は好きだった。端正な素顔を活かしながら更に魅力的に整っていき、彼女の唇等が派手すぎない程度に鮮やかに彩られる。色々教授されてきたが化粧品の種類や順番については未だに理解が追いつかず、時々手を休めながらその変化を眺めていた。
    「いつまで磨いてんの?」
     歯、擦り減っちゃうよ。占拠していた洗面台前から振り返った彼女が微笑みかけてきて、苦笑した彼が洗面台へ向かう。チェックアウトを終え、弾んだ足取りで彼女と昨日の喫茶店へと向かった。

     のんびりしていたのもあってか、店内の大半の席が埋まっていた。案内された席に腰を下ろしながら、人気なんだねぇ、とヴィエラが小声で呟く。昨日の食事や飲み物の味、雰囲気などからそうだろうなと思いながらルガディンは頷いた。もにもに、と独特な略称を呟きつつ、朝限定のメニューに彼女は手を伸ばす。2人で見やすいように卓上に広げられたメニューにはトーストやサンドイッチだけでなく、パンケーキも記載されていた。
    「迷う〜……!!」
     うわぁ、と溢した彼女が真剣な表情でメニューと睨み合う。焼き菓子に限らずパンも好んで摂取している彼女なら、シンプルなトーストもサンドイッチも捨てがたいだろうと思った。そして昨日食べたケーキの出来からパンケーキの品質にも予想がつく。迷うのも仕方ないだろうな、と頬杖をついた時、壁に掲示されている紙に気付いた。彼女の名を呼ぶと顔を上げてこちらを向いた気配がして、頬杖をついていた手で彼を指差す。
    「『当店オリジナルの紅茶シロップで提供しています』……?」
     壁に貼られていたパンケーキのポスターに添えられていた文章を読み上げた彼女の目が輝いた。何それ気になる、と選択肢が絞り込まれた様子の彼女が思い出したように彼に目を向けてくる。
    「ディンはどうするの?」
    「そっちがパンケーキなら、こっちはこれかと」
     ルガディンがサンドイッチを指差すと、だよね、とヴィエラが頷いた。あとは、とセットの飲み物の羅列に2人して視線を向ける。コーヒー好きな彼女ならコーヒーを選ぶだろうな、と思っていると、険しい表情の彼女がカフェオレかな、と呟いた。珍しい、と反射的に過った感情が伝わったのか、彼女が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
    「お腹に良くないんだって」
     話を聞いている内に空腹時のカフェインが良くない、とのことだった。確かに多めの牛乳を混ぜたカフェラテはそのままより胃には優しいだろう。それでもコーヒーから離れられない彼女に目尻が下がるが、昨日のケーキセットを思い出せば仕方ない気もする。お手製のケーキの甘さと絶妙な調和を果たすこだわりのコーヒーは一口目で彼女の胃袋ならぬ舌を掴んだようだった。確かにパンケーキに合いそうだと顎に手を添え考えていると、ディンは?と首を傾げられる。じゃあ、と紅茶を指差すと、気を遣わなくていいのに、と彼女は目を細めて笑った。そんなつもりはない旨を指先をメニュー上で滑らせて表す。
    「『季節ごとのジャムを混ぜて召し上がれ』……?」
     先程のお手製紅茶シロップ然り、マメな店主は季節に応じてジャムも手作りしているらしい。今の時期だと柑橘類を用いたジャムのようだった。
    「他の店では見かけないから、気になってな」
     メニューから離した指を軽く握り込むと上目遣いの彼女が見つめてくる。味が気になるのだろうと苦笑しながら頷くとぱ、と彼女の表情が綻んだ。軽やかに手を挙げて店員を呼んだ彼女が注文を伝える。

     注文の品が届くのを待ちながら、また改めてヴィエラはメニューを眺めていた。
    「トーストのやつだと、季節ごとのジャムトーストとかも選べたみたい」
     それもいいなぁ、と頬杖をついた彼女の呟きにルガディンも頷いて同意する。また来ないとな、とひとりごちると、来てくれるでしょ?とすかさず返された。
     取り止めのない話をしている内にお待たせしました、と卓上に皿が並べられる。暖かな湯気を微かに纏うパンケーキと、ふわりと柔らかく焼き上げられた卵が挟まれたサンドイッチに二人は目を瞬かせた。食後に飲み物を提供しに来る旨を伝えた店員が席を離れてから、彼女が小さく呟く。
    「ボイルドエッグじゃないんだ……」
     彼も頷き切り分けられたサンドイッチを一切れ掴んで、彼女に皿を差し出す。彼女が自分の分を確保したのを確認してからいただきます、と声を揃えてサンドイッチを頬張った。柔らかな口当たりのパンに塗られていたであろうマスタードの風味と、温かく柔らかい卵の味が広がる。馴染みのあるボイルドエッグのフィリングが挟まれたものとは異なるが、これもまた良いなと頬が緩んだ。顔を上げるとほいひい、と幸せそうに微笑む彼女と目が合う。彼女の食べる速度に合わせて一つ目をちびちびと食べ進めてから、添えられていたサラダをもそもそと食べ始める。彼女の方はフォークを手に、パンケーキ上のバターを生地の表面に塗り込むように滑らせていた。じわりと溶けたバターが滲んだパンケーキを右手に持ち直したナイフでざくざくと一口程度に切り分けだす。先にざっくりと切り分けたパンケーキに件の紅茶シロップを垂らした。普段ならコーヒーや紅茶にミルクを入れて添えられているであろう金属製の小さなミルクピッチャーから垂れる琥珀色のシロップにしばらく目を奪われる。生地に染み込み、それでいてこぼれない絶妙な量のシロップを含んだパンケーキを彼女は口に運ぶ。んんん!と小さく歓声を上げた彼女が口元を押さえる。緩み切った表情で何かを訴えるようにこちらに視線を向けてきたので、良かったな、と頷いて応えておいた。
    「メープルシロップっぽい見た目だけど、めちゃくちゃ紅茶!」
     でもほどよく甘いの!と興奮冷めやらぬ彼女が少し大きめの一口分にシロップを染み込ませて彼に差し出してくる。一度逡巡するも、気にするほどではないかと大人しく身を乗り出し口を開けた。もふ、と舌の上に載せられた、シロップが沁みたパンケーキは柔らかく口の中で解ける。瞬間、濃厚な甘さと紅茶が広がってからバターと小麦の風味が舌に残った。口を抑えて静かに頷いている彼を彼女は満足げに眺めながら、また一切れのパンケーキを口に運んだ。

    「美味しかったぁ……!」
     ふはぁ、と満足気に呟いたヴィエラにルガディンも頷いて応えた。食後に運ばれてきたカフェラテはすっきりとした風味のコーヒーに贅沢に加えられたミルクが合っていて彼女の頬は更に緩む。ルガディンは暖かな湯気が立ち昇るティーカップに添えられたジャムをスプーンで掬った。とろりとしたジャムの中には柑橘類特有の果実の粒が混じっている。紅茶が冷めない内にジャムをたっぷり掬ったスプーンを沈め、ゆらゆらと満遍なくかき混ぜた。
    「今が時期のこの辺の銘産物の、強い酸味の中に仄かな甘さと瑞々しさが特徴の柑橘類のジャムだって」
     メニューに添えられていた説明を読み上げる彼女の声に頷きながら、微かに柑橘類の爽やかさが混ざった温かな湯気を吸い込む。自然と緩んだ口元に近付けたカップを傾けると、程良い渋みや茶葉の香りに甘酸っぱさが混ざった紅茶が口に広がる。数口飲み干してから美味い、と呟くと、彼女が良かったねぇ、と目を細めた。ルガディン用のサイズを用意してくれているらしいカップを差し出すと、おっきい、と小さく呟いてから彼女は慎重に受け取る。スープボウルにも見えてきたカップを傾けた彼女がほぅ、と小さく息を吐いた。
    「美味しい〜。たっぷり楽しめて、いいね」
     満足気に微笑んでリピート確定、と独りごちた彼女がカップを返してくる。
    「今度はトーストセットとその紅茶にしようかな」
     また来ようね、と彼女の話すいつかの未来で隣に存在している想像をして頬が緩んだ。彼女を癒せる紅茶などのようになれたら嬉しいとは思うが、それを言葉にするのも烏滸がましくカップの中身と共に飲み込んだ。
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    mitotte_kazu

    PASTヴァレンティオンを満喫している🦍と🐇の短いお話
    贈呈 毎年恒例になりつつある、海都でのヴァレンティオンの催事場巡りに今回も付き合っていた。ヴィエラに付き添っていただけの当初に比べて多少慣れてきたルガディンも、露天を覗き見比べる余裕が出来てくる。
    「これは今年の新作か」
    「そう〜!去年から定番になったこっちも美味しいよ!」
     少しわかってきたと思っていたが、やはり彼女の知識量などには勝てない。真剣な顔で次の店の品定めをする彼女の手から、戦利品の入った紙袋を苦笑しながら受け取った。ありがと、と身軽になった身体で手早く会計をすませる彼女を遠巻きに眺めていた。
    「ここの好き」
     何軒目かを巡っていた時に彼女が呟いた店のチョコレートや包装に見覚えがあった。以前貰ったものだな、と何気なしに視界に入った価格を二度見して、目を剥いてしまう。横に書かれた説明を流し見て、ブランド物のククルビーンを手間暇かけて加工してウルダハで販売している有名店だとようやく把握できた。通りで高価で美味いはずだと1人納得している横で、また真剣な表情で陳列されている商品を吟味している彼女が頷いた。これとこれください、と慣れている彼女の指がチョコレートの上を滑っていく。彼女が選んだ商品が丁寧に包まれていくのを眺めながら、パッケージまで可愛いな、などと思った。
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    mitotte_kazu

    PASTバレンタインなのでチョコ渡す🐇さんとチョコ食べる🦍の短い話
    片割 この海の街にもイベントの余波が来ているようで、浮ついた雰囲気が漂っていた。幸せそうな人を見るのは嫌いではないが、この空気の中独り歩くルガディンはどこか居た堪れなさを感じていた。
    それでもイベントのおかげで普段ならあまり手を出さないようなチョコレートが並んでいる店頭を眺めるのは楽しいものだった。買ったところで勿体なくて食べられないのは目に見えているし、貧相な自身の舌はどれを食べても美味しく感じるのだろう。折角だからと思いつつ平凡な板チョコレートを手に取る。と、掌からチョコレートが消えた。目線を掌から上げるとルガディンから取り上げたチョコレートを興味深そうに眺めるヴィエラがいた。

    「買うの?」
     握ったチョコレートをひらひら翳しながらヴィエラが首を傾げた。まぁ、とルガディンが頷くとふぅんと数回頷いた彼女がそれを棚に戻す。買うと言ってるのに、と棚のチョコレートに伸ばされた彼の手をヴィエラの手が掴んだ。ルガディンが何なんだと困惑している間に人気の少ない通りまで引っ張り出される。されるがままだったルガディンの離された掌にちょこんと小箱が載せられた。どこか見覚えのあるデザインの小箱をしばらく眺めてから、目の前のヴィエラに視線を向ける。にんまりと意味深に笑った彼女が覚えてる?と首を傾げた。ルガディンが数回頷いて開けても良いか了承を得ると、勿論、と微笑まれた。
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