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    mitotte_kazu

    @mitotte_kazu

    自機ルガオスとエタバン相手のヴィエラとかよそよその話とかNPCよその話とか置いとく場所。
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    mitotte_kazu

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    今ぐらいの時期に変わった飲み物を楽しむ🦍と🐇さんの短いお話

    #ディンエラ

    檸檬 グランドカンパニーの納品を終え建物を後にしたルガディンは、初夏とも形容されそうな爽やかな日差しに顔を顰めた。明順応、という単語を思い出しながら足早に宿へむかっているとリンクシェルが鳴り響く。
    「今どの辺?」
    「溺れた海豚亭」
     返答する間もなく尋ねてきた相手に苦笑しながら、見上げた建物の名を伝えた。丁度良かった!と弾んだ声が返ってきて、彼は首を傾げた。
     呼び出されたマーケット付近のエーテライト横の日陰で、通信相手のヴィエラが涼しい顔で佇んでいた。手を挙げて挨拶すると、気付いた彼女に微笑みかけられる。
    「何か予定あった?」
     それを今聞くのかと苦笑した彼が首を振ったので、尚更好都合だと彼女は彼に歩み寄った。
    「連れてきたいとこがあるんだよねぇ」
     にんまりと笑った彼女が、彼の腕に自身の腕を絡めてくる。大丈夫そう?と首を傾げて覗き込んでくる彼女に柔和な笑みを浮かべて彼は頷いた。

     連れて来られたのは、喧騒から外れた通りに面したコーヒーショップだった。軽食などが提供されるようなヴィエラが好きなカフェとは異なる様子だったため、ルガディンはつい首を傾げてしまう。歴史を感じさせる建物で、ひっそりと佇んではいるが常連など客は少なくないのだろう。
    「来たことないでしょ?」
     悪戯っぽく笑いかけてきた彼女に頷いて答えると、満足そうにふふん、と笑われた。広いとは言えない店内と、今日の様に天気が良い日は通りの邪魔にならない箇所に幾つか並べられた椅子で店主拘りのコーヒーやジェラートが楽しめるようだった。店の横に置かれたこぢんまりとした看板にはコーヒーや季節に合わせたフルーツを用いたエードが並んでいる。メニューの様子などから、本当に休憩と水分補給程度に飲み物などが楽しめる店なのだろう。彼女が通りに面した窓に近付き、店内に呼びかける。
    「すみませ〜ん」
     ゼーヴォルフの店主が店内にいる客に身振りで何か伝えた後、のそりと中からこちらへ向かってきた。2人分の飲み物を注文している彼女から、彼は再度メニューへと視線を向ける。今の時期はレモンと蜂蜜を使った、所謂レモネードが提供されているようだった。発汗で失われた水分と栄養素補給に適切だから売れそうだな、などと考えていると、
    「はい、ディンの分」
     頬にぴとりと冷たいものが押し当てられる。ベタな手だが面白みや可愛げのある反応が出来ないルガディンは反射的に声も出せない。一瞬硬直した後でヴィエラから差し出された飲み物を受け取った。レモンが一切れ沈められた炭酸水には細かな泡が浮かび、眺めているだけでも涼しげだった。彼女の方へ視線を戻すと、その手のグラスにも同様にレモンが浮かべられていた。
    「これ!これ飲んで欲しかったの!」
     力強く推してくる彼女が差し出してくるカップに入っているのは、スライスレモンが浮いてはいるがどう見てもアイスコーヒーだった。上部が見慣れた琥珀色のアイスコーヒーで、下の方は淡い黄色の液体と綺麗に二層に別れていた。柑橘類とコーヒー?と疑問符を浮かべている彼に騙されたと思って!と彼女が更に近付いてくる。
    「飲む前にしっかり混ぜなきゃだけど」
     彼の目前でぴたりと動きを止めた彼女はストローでグラス内を入念に混ぜてから、口元に再度手を伸ばしてきた。
     とりあえず店の前の椅子に腰を下ろし、いただきますと呟いた2人はストローを口に含む。爽やかなレモンの風味と果皮の渋み、蜂蜜のコクが炭酸に混じり口内に広がった。想像通りのレモネードの味に頷いていると、左右に首を傾げながら彼女は自身のグラスを眺めていた。彼女とお互いの飲み物を交換し、件のコーヒーの味見をさせてもらう。
     濃すぎず薄すぎないコーヒーの風味がまず来て、思ったより苦味は少ないな、などと思う。そこから先程飲んだものよりは弱いがレモンと蜂蜜が香ってきて、舌に残ったコーヒーの風味と合わさる。理解が追いつかず目を瞬かせている彼の様子を、彼女は興味津々で眺めていた。
    「どう?コーヒーレモネード」
     悪くないでしょ?と目を細めた彼女に了承を得て、彼はもう一口吸い上げる。普段なら舌に残るコーヒーの苦い味が爽やかにレモネードで払拭されるようだった。
    「不思議な味だ」
    「でしょぉ!酸っぱいコーヒーは好きじゃないんだけど、これはなんかイケるの!」
     グラスを返してきた彼にふふん、と嬉しそうな彼女が興奮気味にグラスを返してきた?受け取ったレモネードを飲みながら、彼も微笑む。
    「コーヒーもものによっては柑橘系のような香りと表現されるものもあるし、意外と相性は悪くないのかもな」
     後味が爽やかで確かに飲みやすい、と添えた彼になるほど?と彼女が呟いた。
    「オランジェットとかもあるから、カカオとかそういうのと相性がいい可能性もある」
    「美味しいよね」
     チョコレートも好きな彼女が頬を緩めた。多分蜂蜜の品種やレモン果汁など、コーヒーの風味に合わせて分量や比率が計算されているんだろうな、と先程見かけた店主を思い出す。種族差別をするつもりはないのだが、店主の様子と細やかな彼のこだわりのギャップと自身の偏見に目を閉じて心の中で謝罪した。
    「こないだ飲んで衝撃的だったから、ディンに飲んでみてほしくって!」
     ただそのために誘ったのだという。人によってはその程度かと言われそうだが、彼にとっては喜ばしい理由に目を細めて口を開く。
    「確かに、これなら普通に一杯飲み切れそうだ」
    「でしょ!」
     いいものを見つけたと言わんばかりの笑顔を向けられ、静かに頷くしかできなかった。

     それにしても、とまたストローを咥えながら店の前のメニューに目を走らせる。季節ごとにこれほどの品質の飲み物を楽しめる良い店だと思い、他の商品も気になった。
    「ん」
     つい口から漏れてしまったらしい声に彼女が何?と首を傾げてくる。メニューを指差すと、彼女もそちらへ視線を移した。
    「ラノシアオレンジを使ったコーヒーもある」
     こちらはレモネードより期間が長いようだった。どちらともなく顔を見合わせ、味の想像がつかない、と眉間に皺を寄せる。
    「ほんとはジェラートも気になってたんだよね」
     少し身を乗り出すと店内のカウンター横の保冷庫に並んだジェラートが微かに見えた。日差しは強いがまだ冷たさが残る風が吹き、確かにまだ早いと頷く。
    「また来なきゃ、だね」
    「近い内に」
     誰と、など確認するまでもなく、彼は頷いて返した。
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    mitotte_kazu

    PASTヴァレンティオンを満喫している🦍と🐇の短いお話
    贈呈 毎年恒例になりつつある、海都でのヴァレンティオンの催事場巡りに今回も付き合っていた。ヴィエラに付き添っていただけの当初に比べて多少慣れてきたルガディンも、露天を覗き見比べる余裕が出来てくる。
    「これは今年の新作か」
    「そう〜!去年から定番になったこっちも美味しいよ!」
     少しわかってきたと思っていたが、やはり彼女の知識量などには勝てない。真剣な顔で次の店の品定めをする彼女の手から、戦利品の入った紙袋を苦笑しながら受け取った。ありがと、と身軽になった身体で手早く会計をすませる彼女を遠巻きに眺めていた。
    「ここの好き」
     何軒目かを巡っていた時に彼女が呟いた店のチョコレートや包装に見覚えがあった。以前貰ったものだな、と何気なしに視界に入った価格を二度見して、目を剥いてしまう。横に書かれた説明を流し見て、ブランド物のククルビーンを手間暇かけて加工してウルダハで販売している有名店だとようやく把握できた。通りで高価で美味いはずだと1人納得している横で、また真剣な表情で陳列されている商品を吟味している彼女が頷いた。これとこれください、と慣れている彼女の指がチョコレートの上を滑っていく。彼女が選んだ商品が丁寧に包まれていくのを眺めながら、パッケージまで可愛いな、などと思った。
    805

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    PASTバレンタインなのでチョコ渡す🐇さんとチョコ食べる🦍の短い話
    片割 この海の街にもイベントの余波が来ているようで、浮ついた雰囲気が漂っていた。幸せそうな人を見るのは嫌いではないが、この空気の中独り歩くルガディンはどこか居た堪れなさを感じていた。
    それでもイベントのおかげで普段ならあまり手を出さないようなチョコレートが並んでいる店頭を眺めるのは楽しいものだった。買ったところで勿体なくて食べられないのは目に見えているし、貧相な自身の舌はどれを食べても美味しく感じるのだろう。折角だからと思いつつ平凡な板チョコレートを手に取る。と、掌からチョコレートが消えた。目線を掌から上げるとルガディンから取り上げたチョコレートを興味深そうに眺めるヴィエラがいた。

    「買うの?」
     握ったチョコレートをひらひら翳しながらヴィエラが首を傾げた。まぁ、とルガディンが頷くとふぅんと数回頷いた彼女がそれを棚に戻す。買うと言ってるのに、と棚のチョコレートに伸ばされた彼の手をヴィエラの手が掴んだ。ルガディンが何なんだと困惑している間に人気の少ない通りまで引っ張り出される。されるがままだったルガディンの離された掌にちょこんと小箱が載せられた。どこか見覚えのあるデザインの小箱をしばらく眺めてから、目の前のヴィエラに視線を向ける。にんまりと意味深に笑った彼女が覚えてる?と首を傾げた。ルガディンが数回頷いて開けても良いか了承を得ると、勿論、と微笑まれた。
    903

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