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    雪ノ下

    @a_yukinoshita

    雪ノ下(ゆきのした)です。
    DIG‐ROCKの日常系SSを中心に色んなお話を書いています⸝‍⋆

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    雪ノ下

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    2022.10.18『橙黄を纏う』再録

    クロノと香水

    Main:RUBIA Leopard

    #ディグロ
    diglo
    #二次創作
    secondaryCreation
    #SS

    『橙黄を纏う』「なぁ。クロノって香水変えた?」





    スタジオに入るなりそう尋ねられて、暫く思考を巡らせたアカネはさぁと首を傾げた。





    「まだ会ってねーんだよ」



    「……あぁ。昨日帰ってないのね」



    「そ。出先から直行」



    「やーい朝帰り」



    「誤解うむような言い方やめろ」





    もはや日常のテンプレと化したマシロの揶揄を軽く受け流してソファに腰かける。一息ついたところで、先程のワードに再び意識を戻した。

    はて。"クロノと香水"とは、なんとも珍しい組み合わせだ。





    「で、なんで香水?」



    「いつもと違うっつか……すげー甘い匂いする」



    「マジ?珍し」





    そもクロノが香りを纏っていること自体日常的とは言い難い。

    元々そういう類にあまり興味がないらしく、時折ふっている香水もアカネが購入した際にサンプルとして貰ったものだ。新しいのを買ってやると言っても首を横に振るばかりで、なくなったタイミングで贈ろうと画策してはいるものの、つけない日もしばしばあるから一向に減る気配がない。

    というわけで、"香水を変えた"などアカネにしてみれば寝耳に水なのだ。クロノが持っていたのは確かシトラス系の香りだったから、マシロが言う"甘い"とは系統が異なる。





    「どっかでかいだことある匂いなんだけどなー」



    「どっかって?」



    「ウーン……」



    「思い出せよ。気合いで」



    「んな無茶な」





    知っている香りだと言われればそれがどんなものか俄然気になってしまう。本人が来るまで待てばいいだけの話だが、生憎そこまで気が長くない。焦れったい思いを抱えつつマシロに圧をかけていると、後方で扉が開く音がした。振り返ると"おはようございます!"と元気な声が飛んでくる。





    「おはよーハイジ」



    「アカネさん!」



    「おー。クロノもはよ」



    「おはようございます!」



    「クロノくん俺にはー?」





    半日ぶりに会うキラキラの笑顔が眩しい。毎度大袈裟なと思わなくもないが、嬉しい反応には違いないので放置している。"わー。尻尾が見える"と後ろでコッソリ呟いたマシロに内心同意してしまった。そこで、ふわりと鼻腔をくすぐる甘い香りに気づく。





    「お。ほんとだ」



    「あ、アカネさん?あの……」



    「香り、いつもと違う」





    不意に近づいたせいか動揺するクロノに構わずもう一歩踏み出す。距離を詰めたことでより濃厚になった特有の甘い香りには、心当たりがあった。





    「これって確か……」



    「あ!」



    「ッ、急に大声をだすな」



    「わかった」



    「なにが?」



    「香り。金木犀だわ」



    「、言われてみれば……」





    一斉に視線がクロノに集まる。なるほど思い当たる節があるはずだ。秋の風物詩といっても過言でないその花は、ちょうど今が咲き頃だった気がする。





    「クロノから甘ったるい匂いがすんのってなんか新鮮」



    「毎年この香りがすると秋だなーって思います」



    「わかる。最近あんまり縁ないけど」



    「日本の金木犀って自生しないらしいからな」



    「え、そーなの?」





    元は雌雄異株をもつ植物ではあるものの、日本に移入する際は花付きのよい雄株しか輸入されないため、こちらで開花する金木犀は基本的に雄株のみとなる。

    沈丁花や梔子と並んで三大香木に数えられ、庭園や街路樹としても広く好まれる花だが……生垣に並ぶのはどれも人の手によって挿し木から育てられたものだ。





    「つまり生えるところ金木犀に魅せられた人が住むってわけね」



    「……極端すぎないか?」



    「その方がロマンチックでいーでしょ」





    マシロらしい考え方だ。想像力とそれを言語化する力があるのだから、思い切って歌詞など書いてみればいい。まぁ、勧めたところで断られるのは目に見えているけれど。





    「クロノが香水変えたっつーから驚いたわ」



    「出掛けに店頭で見かけたので。懐かしくなって、つい」



    「買ったんですか?」



    「いや。一口に"金木犀の香水"と言っても色々あるようで、好みも人によるからまずは試したほうがいいとひと吹きだけ」



    「肌質によって香り方も変わるしねー」



    「よし決めた」



    「え、何を」





    まーた突拍子もないこと言い出すぞといわんばかりの視線はこの際無視することにして。





    「クロノ、収録終わったら買いに行くぞ」



    「はい……?」



    「香水。せっかく興味もったんだから善は急げ」



    「はーい!俺も行く!」



    「ハイジは?」



    「もちろん!選ぶのお手伝いしたいです!」





    隣ではにかむクロノを横目に、秋を待つ楽しみがまたひとつ増えたとアカネは思った。
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