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    雪ノ下

    @a_yukinoshita

    雪ノ下(ゆきのした)です。
    DIG‐ROCKの日常系SSを中心に色んなお話を書いています⸝‍⋆

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    2022.05.27『夏空とストロベリー』再録

    気まぐれなマシロが甘いものを飲む話

    Main:MASHIRO

    #ディグロ
    diglo
    #二次創作
    secondaryCreation
    #SS

    『夏空とストロベリー』「あっっっつ……」


    雲ひとつない青空に輝く太陽が容赦なく地上を照りつけていた。初夏らしからぬ熱気を恨めしく思いながら、顎を伝う汗を無造作に拭う。
    次の現場までそんなに離れていないからとらしくもなく徒歩移動を選択した自分が間違っていた。まさか今日がこんな季節外れの真夏日になろうとは。
    道すがら拾おうかと提案してくれたアカネの誘いを断ったことを今更ながらに後悔する。今からでもいいから迎えに来てほしい。
    まったくまだ五月も半ばだというのにこの暑さ、盛夏を迎えたら一体どうなってしまうのだろう。陽光と熱風で溶けてしまうんじゃないのかと一抹の不安が頭を過ぎる。そう思いながら毎年なんだかんだ乗り越えられているからいらぬ心配には違いないのだろうが……そうは言ってもこの気温の高さ、流石に参ってしまう。


    「今すぐエアコンの冷風にあたらないとしぬ」


    "マシロってば大袈裟"などと言ってくれるな。俺って案外繊細なんだから。
    暑すぎても寒すぎても勘弁。できることなら春と秋のちょうどいい陽気が一年中続いてほしい……とまぁ、そんな叶いもしない祈りを捧げたところで仕方がない。頭の片隅でクロノの呆れた顔が浮かんだ。
    幸い集合時間までにはまだ余裕がある。一度どこかで涼んでいこうと辺りを見渡すと、数十メートルほど先に見慣れたロゴをみつけた。赤い背景に黄色のアーチが二度かかった、街を歩いていればほぼ確実に視界に入るあの店だ。あれって実は"M"ではないらしい。では一体なんなのかと聞かれても、そこまでは知らない。


    「……インクロの行きつけか」


    それがこの大手ファストフード店に対する俺の印象だった。
    何しろ顔を合わせる度に事務所の後輩達がこの店のハンバーガーやらシェイクやらを持っているのだから、そういうイメージが定着してしまっても仕方がない。
    対して俺はというと。思い返せば実家を飛び出して間もない頃も、ホスト時代も、ルビレに所属してから今の今まで、ただの一度もこの店の商品を買ったことがない……ような気がする。
    元が少食というのもあるし、外で食べるにしてもそれは必ず酒がある場所で、今となっては口に入れるものの大半がクロノのつくった料理だ。よってお世話になる理由がない。

    "たまにはアリかも"

    そんな軽い気持ちで空調のきいた店内に足を踏み入れた。路面店の特徴か出入口の扉は開放されたままだが、それでも炎天下の外に比べれば充分涼しい。
    さて、何を飲もうか。
    いつもなら無難にアイスコーヒーを選択するところだが、バーガーショップに来ておいてそれ単品というのもなんだか気が引けるし……せっかくなら違うものがいい。メニューボードに視線を走らせると、左下の単品欄に"シェイク"の文字を見つけた。
    ……シェイク。シェイクってあれだよな。みつるが好きなやつ。
    甘いのが目に見えているから普段なら絶対に選ばないメニューだが、今は意外といけるかもなんていう根拠のない好奇心が勝った。その場の勢いというやつだ。
    フレーバーはバニラ・ストロベリー・チョコレートがレギュラーで、今は期間限定の抹茶なんてのもあるらしい。俺としてはなるべく甘さ控えめなものを選びたい、と口に出せば無茶言うなと怒られそうなことを考える。アイスクリームと牛乳を混ぜてつくるのだから当然どれを選んでもそれなりに甘い。……それなら。


    「ストロベリーシェイクひとつ」


    選んだ理由は単純。なんか赤っぽいからだ。
    厳密に言えばピンクに近いが、以前アカネが齧っていたいちごのパイだってどちらかといえばピンク色だし問題ないだろう。
    いらっしゃいませーと愛想のいい笑みを浮かべた女性スタッフが一瞬「あ」と声を発しかける。内心身構える……が、次には「かしこまりました」と何事もなかったかのようにパネルを操作し始めたのでほっと肩の力を抜いた。こういう時に"何もないフリ"をしてもらえるのは本当に助かる。
    会計を済ませ、レシートを受け取る時にもう一度目が合ったので「ありがとね」と小声で伝えて横にズレる。印字された数字は530。モニターの呼び出し番号は自分以外表示されていないから、そう待たずに受け取ることができるだろう。
    そういえばもうすぐ叶希の誕生日だ。今年はどこに連れていこうか。焼肉?いやいやそれはつぐみの好物で……まぁでも、肉だろうな。やっぱり。


    「……あっつ」


    数字にひかれて考え事をしているうちに出来上がった商品を受け取って、そそくさと店を出る。外は相変わらずのカンカン照りだが手の中の白いカップが幾分か暑さを和らげてくれた。なお、人生初のシェイクは予想通り甘かった。


    「……これ持って事務所行ったらみんなびっくりしそ」


    自分の中の悪戯心がふつふつと顔を出す。自然と口角が上がり、先程までの鬱屈した気分が嘘のように足取りも軽い。暑すぎるのも寒すぎるのも御免こうむるが、この調子ならなんとか頑張れそうだ。
    シェイク片手にディグプロに着くとつぐみには「え!マシロさんそれ好きなの!?なーなー次は俺も連れてって!一緒に行こ!」と付き纏われ、クロノには「……どうかしたのか?」と怪訝な顔をされた。
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    PAST【DDDA】目指す背中〜ヴェルside〜
    友人がDDDAの自主従のSSにヴェルさん登場させてくれて、それがとてもニコニコしたので、そのヴェルさん視点を勝手書いたやつ…!文章で表現するの、慣れてないので、アレなんだけどテキスト投稿のベータ版ができたので、テストで。
    「……どうしたらそんなに強くなれるのかなって」
    そう言って、アディは真っ直ぐヴェルファイアを見上げた。

    それは、街道にたむろしていた、ゴブリン共を屠った後のことだった。
    アディは、最近ヴェルファイアが雇われている覚者だ。まだ幼さの残る少女で、最近覚者になったばかりだという。
    彼の主と比べれば、感情表現は希薄だが、真っ直ぐなまなざしをした少女で、最近剣をにぎったばかりだというのに、どんな敵にも臆することなく飛び込んでいく。
    それが、彼女のメインポーンのウィスタリアからすれば心配の種のようだが、これから経験をつめば、そこらの兵士には負けない剣士へと育つだろう。
    そう、思っていたのだが……思いがけない問いかけに、ヴェルファイアはまじまじと、アディを見る。

    「どうしたら──それは強くなる手段ということですか?」

    質問の意図を計りかねて、ヴェルファイアは問い返した。

    「うん、まあ、そうかな」
    「覚者様は女性ですし、筋力や体格から見ても私と同じようにというわけにはいかないでしょう」
    思ったままを応える。

    「ま、そうだよね」
    そう応えると、アディは少し肩を落とした。

    ……がっかりしたのだ 1734