ジェイフロで140字SSログ10/25「世界で一つだけの願い事」
飽きたぁ。
規則常識定理に囚われることはしない。
春の夜の夢のようなここに立ち、足の裏を冷やす薄氷の下の虚無を飼いならす。
「――」
呼ぶ声に右向いて微笑い返す。
どうか円環するこの世界の摂理に気づいても、絶望して投げてしまいませんように。
黄金の瞳を閉じ蠢く真理を遮断し、呼ぶ声の隣に戻る。
10/24「幸福な朝」
「おはよ、稚魚ちゃん」
両掌で抱え込んで、耳裏の髪をくすぐる。
ぐずって皴の寄る眉間を唇でほぐして、頬を擦り合わせる。
陽光に照らされるアクアグリーンにゴールドが煌めいたら覚醒まであとすこし。
お気に入りの分け目に鼻先を埋めたら、腰を抱き込まれ結局ダイブ。
「もっと、です」
ふりだしに戻る。
10/23「反則だらけ」
短くした前髪から焦点をハズして眺めて、取られた手ごとゆるく揺らす。抵抗しないけれど離れもしない手。繋いで頬を寄せてあって、ここまではギリギリ手順通り。
「いまさら言う?」
次に覚えたキスとお互い慰め合うのにズブズブにハマったのが場外乱闘。
本気ならリングで誓って。
「ねぇ、もっと言って」
10/22「諦めきれない」
素敵な靴は貴方を素敵な処へ。
オレを連れて行ってくれるのはジェイドだよねぇ、いつもありがと。
「今回は負けちゃったけどぉ」
念願のシューズ予約は敗戦。
だのに笑いながらステップを踏むのは三足目に贈ったスエードのチェルシー。
「フロイド、僕、すこし電話をかけてきますね」
「いいよぉ、どこへ?」
10/21「きっとたぶん」
会話を止めたいときは触れてくる。
晒してる指先をとって、爪の縁をなぞる。グローブの縫い目が薄い皮下の骨を探る。
本心を隠すように包まれた手を捕らえて。
「なぁに、ジェイド」
聞き出してばっかいないで、たまには自分から言おうね。
伏せた奥二重がそろりと持ち上がり、ぶつかる鏡の視線が語るには。
10/20「負けず嫌い」
まさかジェイドの数字を超える日が来るなんて。
ひょろひょろの自分よりすべてが美しく力強い雄。誇らしい片割れ。
「これからはフロイドからキスをしてもらえますね。あなたからのほうがしやすいでしょう?僕より背が高いんですから」って薄くゆるめた口唇を指でトントン叩いて、楽しみですと笑ってる。