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    住めば都

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    住めば都

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    あくねこ、ルカス夢。
    善意が裏目に出たというか、藪をつついて蛇を出したというか、そういう話。もう逃げられない。

    #あくねこ夢
    cats-eyeDream
    #aknkプラス
    aknkPlus
    #aknk夢
    #ルカス
    lukas.

    雉も鳴かずば撃たれまい「私にできることがあれば、なんでも言ってください」
     片手を胸に当て、担当執事のルカスが言った。それは、女が不思議な縁で彼ら悪魔執事たちの主人となってから、何度も聞いた言葉だった。
     出会ったころは、単なる社交辞令だと聞き流していた。しかし、いくつもの困難をともに乗り越えた今では、彼らが偽らざる真心からそう言っていることを女は知っている。だからこそ心配で、彼女は初めて、その台詞を聞くたびに思っていたことをぶつけてみることにした。
    「ずっと、思っていたんだけどさ。そんなに簡単に"なんでも"って、言わないほうがいいんじゃない?」
    「おや、どうしてですか?」
     ルカスは金色の瞳を瞬かせた。聡い彼のことだから、女が言いたいことは理解しているだろうに。彼女はちょっとムッとして語気を強めた。
    「例えば、だけど。なんでもって言葉を逆手にとられて、恋人になれとか、キスをしろとか、そういうことを命令されたらどうするのかってこと」
     もちろん、女自身にはそんな命令をするつもりなど毛頭ない。けれど、彼女がずっと彼らの主人でいられるわけではないのだ。
     悪魔執事たちは不老だ。女が天寿を全うしたあとも、死なない限りは途方もない時間を生き続ける。いつか、次の主人が選ばれる日が来るだろう。優しい人ならばいい。だがもし、美しい彼らを自らの所有物のように扱う人間だったら?
     世界から嫌われた悪魔執事たちにとって、デビルズパレスは安息の地だ。もしもこの屋敷の中でまで、彼らが虐げられてしまうようなことがあったら……。
    「私たちを、心配してくださっているのですね。ありがとうございます。主様は、本当に優しい方ですね♪」
     弾むように、歌うように、ルカスは言った。その瞳が、幸福そうに緩まる。彼は女の座るソファの傍らへ膝をつくと、小さな手を取って口づけた。
     ルカスの身からとろりと色香が溶け出したのがわかって、女は思わず身を固くした。逃げ出してしまいたくなったけれど、緩く握られた手を振り解けない。ルカスは艶やかな唇が触れていない場所はないのではないかと思うほど、飽きずに女の手に口づけを落とし続けている。
    「る、るかす……もう、離して……」
    「ねえ、主様」
     弱々しい願いは、聞き届けられなかった。キスの嵐が止んだと思えば、今度は指同士を絡めるように手を繋がれて、女はすっかり参ってしまった。
    「ルカス……っ」
    「ふふ。本当に可愛らしい方だ。主様、私はね、あなたが私を選んでくださるなら、恋人になることも、その唇に触れることも、吝かではないのですよ」
    「えっ」
     思い描いていたのとは全く違う展開になって、女はもうどうすればいいのかわからなかった。ただ、もっと自分を大切にしてほしいと伝えたいだけだった。執事たちが与えてくれる優しさを、同じように返したいだけだったのに。
     女が途方に暮れているのを察してか、ルカスはようやく彼女の手を解放した。女は逃げ場のないソファの上で、小動物のように体を縮こまらせている。
     すっかりルカスを警戒している様子の女に、彼は柔らかく微笑みかけた。
    「ですが、私は今の……執事として主様の傍にいる時間も気に入っています。無理やり特別な関係になろうとは思っていませんから、安心してください。ただ、私があなたを愛していることだけ覚えていていただければ、それで十分です♪」
     今は、という言葉は、ルカスの胸の内に留められた。
     女が自分たちに、家族へ向けるような愛情を抱いていることを、悪魔執事たちはみな知っている。人間の心は移り変わるものだ。家族への愛が、男女の愛に変わる可能性は、ゼロとは言えない。なにしろ彼女は、ルカスの「なんでも」という言葉から、色事を連想するくらいだ。
     先ほど余さず触れた手を胸に抱きしめ、首筋を朱に染めている主人を眺めながら、ルカスは笑みを深めた。獲物を定めた肉食獣は、もしかしたら今のルカスに似た表情をしているのかもしれない。
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    住めば都

    DONEあくねこ、ルカス夢。
    いつもドキドキさせられて悔しい主様が、意趣返しのつもりで「ルカスは冗談ばっかり」と返したら、実は全部本気の本心だったと暴露される話。

    交渉係を務めて長い男が、自分の思いに振り回されて本音を隠せず、苦し紛れに冗談だよって見え見えの誤魔化し方しかできないのめちゃくちゃ萌えるなと思うなどしました
    いっそ全部、冗談にしてしまえたら 目の覚めるような美人ではない。愛嬌があるわけでも、聴衆を沸かせる話術を持つわけでもない。
     至って普通。どこにでもいそうな、地味で目立たないタイプ。――それが私だ。
     おおよそ三十年かけて築き上げた自己認識は、異世界で出会ったイケメン執事たちに「主様」と呼ばれ大切にされたところで、簡単に揺らぐようなものではない。
    「フフ、主様といられる時間は、本当に幸せです♪ この時間が、永遠に続けばいいのになあ……」
    「はいはい。全く……ルカスったら、冗談ばっかり言うんだから」
     上機嫌に微笑む担当執事を、私は半眼で睨みつけた。
     ルカスとアモンは、口説くようなセリフをよく言ってくる。恋愛経験の少ない私はそのたび顔を赤くしてドギマギしてしまうのだが、彼らの思惑どおりに翻弄されるのを、最近は悔しいと感じるようになっていた。
    1884

    住めば都

    DOODLEあくねこ。ナックとハンバーグの話。友情出演、ロノとテディ。
    執事たちの話題に上がるだけですが、美味しいもの大好き自称食いしん坊の女性主様がいます。
    後日、お礼を伝えられた主様は「私が食べたかっただけだから」と苦笑したそうです。

    お肉が苦手なナックに豆腐ハンバーグとか大根ステーキとか食べさせてあげたい気持ちで書きました。
    美味しいは正義 今日に夕食のメニューは、ハンバーグだ。
     食堂に向かう道すがらで会ったテディが、鼻歌混じりで嬉しそうに言うのを聞いて、ナックは落胆の気持ちを曖昧な笑顔で濁した。
     ナックは肉全般が苦手だ。メインが肉料理の日は食べられるものが少なく、空腹のまま夜を過ごすことも多い。
     だが、ハンバーグを心から楽しみにしているらしい同僚に、それを伝えることは憚られた。食事は日々の楽しみだ。テディには心置きなく、好物を味わってほしい。
     食事の時間は一応決まっているが、執事たちは全員揃って食事を取るわけではない。一階や地下の執事たちはそろって食べることが多いようだが。
     決められた時間内に厨房へ顔を出し、調理担当に、食事に来たことを告げる。そうして、温かい料理を配膳してもらうのだ。
    2130

    住めば都

    MEMO2023クリスマスの思い出を見た感想。
    とりあえずロノ、フェネス、アモン、ミヤジ、ユーハン、ハナマルの話をしている
    執事たちが抱く主様への思いについて現時点で、あるじさまへの感情が一番純粋なのはロノかなという気がした。
    クリスマスツリーの天辺の星に主様をたとえて、でもそこにいるのは自分だけじゃなくて、屋敷のみんなも一緒でさ。
    主様と執事のみんながいるデビルズパレスを愛してるんだなあということがとてもよく伝わってきて、メインストのあれこれを考えると心が痛い。ロノの感情と愛情が純粋でつらい(つらい)

    なぜロノの贈り物にこんなに純粋さを感じているかというと。
    手元に残るものを贈っている面々は、そもそも根底に「自分の贈ったものを大切に持っていてほしい」という思いがあるはずで、贈った時点である意味主様からの見返りを求めているのと同じだと思うんですよね。
    ただ、消え物にするか否かは思いの重さだけでなくて、執事たちの自分への自信のなさとか、相手に求めることへの拒否感とか、なにに重きを置くかの価値観とか、いろいろあると思うので、消え物を選んだ執事がみんなロノほど純粋な気持ちではいないんだろうなと思っている。
    1511

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