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    住めば都

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    住めば都

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    あくねこ。ナックとハンバーグの話。友情出演、ロノとテディ。
    執事たちの話題に上がるだけですが、美味しいもの大好き自称食いしん坊の女性主様がいます。
    後日、お礼を伝えられた主様は「私が食べたかっただけだから」と苦笑したそうです。

    お肉が苦手なナックに豆腐ハンバーグとか大根ステーキとか食べさせてあげたい気持ちで書きました。

    #あくねこ
    badCat
    #ナック
    negativeAcknowledgement
    #ロノ
    lono

    美味しいは正義 今日に夕食のメニューは、ハンバーグだ。
     食堂に向かう道すがらで会ったテディが、鼻歌混じりで嬉しそうに言うのを聞いて、ナックは落胆の気持ちを曖昧な笑顔で濁した。
     ナックは肉全般が苦手だ。メインが肉料理の日は食べられるものが少なく、空腹のまま夜を過ごすことも多い。
     だが、ハンバーグを心から楽しみにしているらしい同僚に、それを伝えることは憚られた。食事は日々の楽しみだ。テディには心置きなく、好物を味わってほしい。
     食事の時間は一応決まっているが、執事たちは全員揃って食事を取るわけではない。一階や地下の執事たちはそろって食べることが多いようだが。
     決められた時間内に厨房へ顔を出し、調理担当に、食事に来たことを告げる。そうして、温かい料理を配膳してもらうのだ。
    「あ! ナックさん、来ましたね!」
    「ええ、食事をお願いします」
    「はい! ちょっと待っててくださいね!」
     ナックの顔を見るなり、ワクワクした表情をしたロノに、ナックは小さく首を傾げた。
     ロノは優秀な料理人だ。執事たち全員の好き嫌いを把握しており、当然、ナックが肉を苦手としていることも知っている。ナックのそれがただの食わず嫌いではないからか、肉料理の日には決まって、少し申し訳なさそうな顔をするのだが。
    「これ、主様と一緒に作った自信作なんで! 後で、感想を聞かせてくださいね」
    「これは……」
     渡されたメイン料理の皿に乗っていたのは、見たことのない料理だった。
     小判型をしたそれは、おそらくハンバーグなのだろう。だが、ナックの苦手な肉の焼ける匂いはしない。代わりに、酸味のある香りが鼻先をくすぐった。食欲をそそる香りだ。
     見た目から材料を判別できないため、味の想像ができない。しかしロノの作った料理で、しかも美味しいものが大好きな主人まで関わっているとなれば、味は保証されているようなものだった。
     感謝を告げて、ナックは食堂へ戻った。一足先に食事を始めていたテディは、幸せそうにハンバーグを頬張っている。
     ナックもカトラリーを手に、自分の分のハンバーグを切り分けた。きつね色をした外側とは対照的に断面は白っぽく、細かく刻まれて混ぜこまれた野菜が見え隠れした。
     照りととろみのあるソースを絡めて、口へ運ぶ。噛んだ途端にソースの甘酸っぱさと、野菜の旨みが広がる。遅れてふんわり鼻を抜けたのは、優しい豆腐の香りだった。

    「ごちそうさまでした、ロノくん」
     完食し、空になった皿を返しにいったナックは、どんな言葉でこの感動を伝えたものかと頭を悩ませた。
    「お! 全部食べてくれたんですね! よかった!」
    「はい。大変美味しかったです。まさか、豆腐のハンバーグとは」
    「へへ、気に入ってもらえて良かったです! 主様に教えてもらったんですよ!」
     ロノは嬉しそうに笑って、豆腐ハンバーグを作ることになった経緯を教えてくれた。
     なんでも、最初は二人で節約レシピについて話していたらしい。ハンバーグは豆腐を混ぜて嵩増しできるという話をしているうちに、主人が豆腐ハンバーグを食べたくなったのだとか。
    「たんぱく質だけじゃなくて野菜も取れるし、ヘルシーなのに食べ応えあるし、なにより安上がりなんで、食費が心許ないときのお助けメニューになりそうです!」
    「それは素晴らしい! その上、あのように美味しいのですから、いい事づくめですね」
    「まあ、野菜嫌いの連中は嫌がりそうだけど……」
     腕を組んだロノが、悩ましいと言わんばかりに唸る。一人ひとりの好き嫌いに配慮する必要なんてないのに。それが自分の仕事だからと、誇りを持って取り組む彼の姿勢に、ナックは頭の下がる思いだった。
    「今日、主様に教えてもらったんですけどね。主様の世界には、菜食主義者っていう、お肉を一切食べない人たちがいるんですって。それから、精進料理っていって、お肉や魚を使わない料理もあるそうです」
    「ほう……そうなのですね」
    「はい! オレ、もっと勉強して、肉料理の日もナックさんが食事を楽しめるようにするんで! 期待しててください!」
    「ロノくん……ありがとうございます」
    「へへ! 礼なら主様に言ってください! オレの料理の幅を広げてくれてるのは、間違いなく主様なんで!」
     そう言って、ロノは太陽のように笑う。彼の言葉に、ナックは違いないと内心で苦笑した。
     美味しいものが大好きで、食いしん坊を自称する主人は、ロノと一緒に料理の研究をよくしている。けれどそれには、美味しいものが食べたいという食欲以上に、彼女の思いやりが働いていることを、ナックは知っていた。
     ナックだけではない。苦手な食材のある執事たちは皆、それを知っているはずだ。皆が食事の時間を、もっと楽しめるように。それが主人の口癖だった。
    「あとで、主様にもお礼を言いにいこうと思います。これからは私も、ハンバーグが夕食の日を楽しみにできそうです、と」
    「それはよかった! きっと主様も喜びますよ!」
    「ええ。そうだと嬉しいですね」
     呟いて、ナックは笑みを浮かべた。食事の前、テディに見せた誤魔化しの笑顔ではなく、幸福さの滲む、心からの笑顔だった。
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    住めば都

    DONEあくねこ、ルカス夢。
    いつもドキドキさせられて悔しい主様が、意趣返しのつもりで「ルカスは冗談ばっかり」と返したら、実は全部本気の本心だったと暴露される話。

    交渉係を務めて長い男が、自分の思いに振り回されて本音を隠せず、苦し紛れに冗談だよって見え見えの誤魔化し方しかできないのめちゃくちゃ萌えるなと思うなどしました
    いっそ全部、冗談にしてしまえたら 目の覚めるような美人ではない。愛嬌があるわけでも、聴衆を沸かせる話術を持つわけでもない。
     至って普通。どこにでもいそうな、地味で目立たないタイプ。――それが私だ。
     おおよそ三十年かけて築き上げた自己認識は、異世界で出会ったイケメン執事たちに「主様」と呼ばれ大切にされたところで、簡単に揺らぐようなものではない。
    「フフ、主様といられる時間は、本当に幸せです♪ この時間が、永遠に続けばいいのになあ……」
    「はいはい。全く……ルカスったら、冗談ばっかり言うんだから」
     上機嫌に微笑む担当執事を、私は半眼で睨みつけた。
     ルカスとアモンは、口説くようなセリフをよく言ってくる。恋愛経験の少ない私はそのたび顔を赤くしてドギマギしてしまうのだが、彼らの思惑どおりに翻弄されるのを、最近は悔しいと感じるようになっていた。
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    住めば都

    DOODLEあくねこ。ナックとハンバーグの話。友情出演、ロノとテディ。
    執事たちの話題に上がるだけですが、美味しいもの大好き自称食いしん坊の女性主様がいます。
    後日、お礼を伝えられた主様は「私が食べたかっただけだから」と苦笑したそうです。

    お肉が苦手なナックに豆腐ハンバーグとか大根ステーキとか食べさせてあげたい気持ちで書きました。
    美味しいは正義 今日に夕食のメニューは、ハンバーグだ。
     食堂に向かう道すがらで会ったテディが、鼻歌混じりで嬉しそうに言うのを聞いて、ナックは落胆の気持ちを曖昧な笑顔で濁した。
     ナックは肉全般が苦手だ。メインが肉料理の日は食べられるものが少なく、空腹のまま夜を過ごすことも多い。
     だが、ハンバーグを心から楽しみにしているらしい同僚に、それを伝えることは憚られた。食事は日々の楽しみだ。テディには心置きなく、好物を味わってほしい。
     食事の時間は一応決まっているが、執事たちは全員揃って食事を取るわけではない。一階や地下の執事たちはそろって食べることが多いようだが。
     決められた時間内に厨房へ顔を出し、調理担当に、食事に来たことを告げる。そうして、温かい料理を配膳してもらうのだ。
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    住めば都

    MEMO2023クリスマスの思い出を見た感想。
    とりあえずロノ、フェネス、アモン、ミヤジ、ユーハン、ハナマルの話をしている
    執事たちが抱く主様への思いについて現時点で、あるじさまへの感情が一番純粋なのはロノかなという気がした。
    クリスマスツリーの天辺の星に主様をたとえて、でもそこにいるのは自分だけじゃなくて、屋敷のみんなも一緒でさ。
    主様と執事のみんながいるデビルズパレスを愛してるんだなあということがとてもよく伝わってきて、メインストのあれこれを考えると心が痛い。ロノの感情と愛情が純粋でつらい(つらい)

    なぜロノの贈り物にこんなに純粋さを感じているかというと。
    手元に残るものを贈っている面々は、そもそも根底に「自分の贈ったものを大切に持っていてほしい」という思いがあるはずで、贈った時点である意味主様からの見返りを求めているのと同じだと思うんですよね。
    ただ、消え物にするか否かは思いの重さだけでなくて、執事たちの自分への自信のなさとか、相手に求めることへの拒否感とか、なにに重きを置くかの価値観とか、いろいろあると思うので、消え物を選んだ執事がみんなロノほど純粋な気持ちではいないんだろうなと思っている。
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    住めば都

    DOODLE主様不在の執事たちの日常その2。
    清掃の仕事に取り掛かろうとナックがシッティングルームへ向かうと、そこはすでにラムリの手でピカピカに掃除されていて……。ラムリが急に掃除をやる気になった理由とは……?
    みたいな話。

    主様が留守の時間も、主様のために仕事を頑張っている執事たちが書きたかった。
    デビルズパレスは今日も平和です2 経理に関わる事務作業を一通り終わらせたナックは、もう一つの担当である清掃の仕事に取り掛かろうと、道具を手にシッティングルームへ向かった。
     広い屋敷の全てをナックとラムリの二人で、しかも一日で掃除するのはほとんど不可能だ。
     だから屋敷内は、清掃係が毎日掃除をする場所、使用する個人が掃除しなければならない場所、週に一度あるいは月に一度など頻度を落として掃除を行う場所と、区分がなされていた。
     清掃係が毎日掃除することになっているのは、屋敷の主人の生活に関わる場所が中心だ。具体的には玄関、食堂、トイレ、シッティングルーム、主人の寝室など。
     本来であれば浴室もここに入るのだろうが、あそこは入浴補助を務めるフェネスが清掃も担っている。ナックはときおり頼まれて手伝うこともあるが、フェネスが済ませてしまうことがほとんどだ。
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    住めば都

    DOODLEあくねこ。ナックとハンバーグの話。友情出演、ロノとテディ。
    執事たちの話題に上がるだけですが、美味しいもの大好き自称食いしん坊の女性主様がいます。
    後日、お礼を伝えられた主様は「私が食べたかっただけだから」と苦笑したそうです。

    お肉が苦手なナックに豆腐ハンバーグとか大根ステーキとか食べさせてあげたい気持ちで書きました。
    美味しいは正義 今日に夕食のメニューは、ハンバーグだ。
     食堂に向かう道すがらで会ったテディが、鼻歌混じりで嬉しそうに言うのを聞いて、ナックは落胆の気持ちを曖昧な笑顔で濁した。
     ナックは肉全般が苦手だ。メインが肉料理の日は食べられるものが少なく、空腹のまま夜を過ごすことも多い。
     だが、ハンバーグを心から楽しみにしているらしい同僚に、それを伝えることは憚られた。食事は日々の楽しみだ。テディには心置きなく、好物を味わってほしい。
     食事の時間は一応決まっているが、執事たちは全員揃って食事を取るわけではない。一階や地下の執事たちはそろって食べることが多いようだが。
     決められた時間内に厨房へ顔を出し、調理担当に、食事に来たことを告げる。そうして、温かい料理を配膳してもらうのだ。
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