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    @owari33_fin

    アズリドとフロリドをぶつけてバチらせて、三人の感情をぐちゃぐちゃにして泣かせたい

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    ミーティア3️⃣ Az-1 『出会い〜自覚』

     ナイトレイブンカレッジに入学した直後の僕にとって、リドル・ローズハートは勉学の上で何かと目障りで、邪魔な存在だった。

     初めてリドルを見たのは、入学式の壇上に上がりスピーチをする姿だ。
     入学当時、今よりもずっと小柄で薄い身体付きのリドルは、一年生の平均身長が一七〇センチの中、一六〇センチにすら届いていなかった。大柄な男が多いこの空間だと余計、ダボついた式典服のローブの上からだと余計に華奢に見え。なおかつ、黒いフードの下にチラリと見える一見すると雌と錯覚する中性的な見た目が、やけにヒステリックなキツイ表情に上塗られ余計印象に残る。何より深海では珍しい赤珊瑚のような赤毛が一等目を引いた。
     初めてリドルを見たら、すれ違うまでの数秒間見入ってしまうような、人によっては振り返りもう一度確認したくなる様な、こいつはそんな容姿をしている。
     中性的な高い声は、壇上の上からだとよく響く。けれどもそのスピーチの内容は実につまらない定型文であくびが出そうだ。
    (僕だったら、もっと素晴らしいスピーチが出来たのに……)
     そう、僕がこの壇上に上がってスピーチ出来ないのも、全てこのリドル・ローズハートが原因だ。
     全教科満点。他者と一線を画く次元の違う頭脳を持つリドルの前に、人生で一番と言っていいぐらい猛勉強をしたはずの僕が、あっけなく次席に甘んじる事となった。
     あの苦々しい過去と決別して以来、僕は常にトップの成績だった。誰に遅れを取るものかと、誰も見ていない裏で死物狂いで繰り返し知識を頭に刷り込み。見た目も馬鹿にされまいと、頭の天辺から尾鰭の先まで磨き上げた。誰がどう見ても今の僕は知的な外見で、カースト上位の存在だったが、リドルの様な本物には敵わないのかと、ジワリと胸に滲む嫉妬を視線に乗せて壇上を見つめるしかなかった。
     壇上のリドルの姿に、周囲の生徒がヒソヒソとした声で「アイツ何歳?」「ここはエレメンタリースクールじゃねーっての」「本当にチンコついてんの?」「今度、ちょっとお願いして見せてもらう?」などと下世話な話しをしてはケラケラと笑っていた。
     この様子だと、数日もしないうちに同級生にレイプ紛いな事でもされて、泣きながら自主退学するかもしれない。まぁ、それならそれでいい。目の前の障害は少ない方がいいのだから。
     周囲の下世話な会話に、ウツボの片割れは暇そうにあくびをしていたのに、急にニタリと口角を上げ、スピーチが終わりまばらな拍手の中、新入生の列に戻るリドルの式典服を摘み背中を大きく屈んで、何かを耳元でポソリと呟けば、それは一瞬だった。
     憤怒を顔面に塗りたくったリドルが、あの中性的で高い良く通る声色で「首を刎ねよ」とそう高らかに叫んだ瞬間——フロイドはハートの首枷を付けられて、みっともなく床に転がっていた。
     はぁ!? と、フロイドの横に居た僕が上げた声をかき消すように、リドルが先程までの澄ました顔を怒りに赤く歪め「ウギィィィ!!!」と狂った唸り声を上げた。
    「よくもこのボクに、そんな不愉快なことが言えたもんだね!? その首、本当に刎ねてやろうかッ!!?」
     式典会場に、六本の火柱が轟々と音を立ててうねり、その瞬間誰もが、リドル・ローズハートの存在の異常さに恐れおののいた。
     そして僕を含めこの場に居た殆どの生徒が、リドルには頭脳でも、魔力でも勝てないと分からせられ。リドルはリドルで、入学から一週間で寮長になるという偉業を成し遂げ、次席の僕と首席のリドルの差は開く一方だった。


     * * *

     その日以降、僕はすべての授業においてリドルに並ぶことはあっても、リドルの成績を超えることは一度たりとも出来なかった。
     いつも張り出されたテストの順位票は、リドル・ローズハートの隣に一〇〇点と書かれ、その下に僕の名前が一〇〇に足りない数字とともに書かれている。
     普通の生徒なら、学年首席という地位に収まっても、それなりに謙遜するところを、リドルはそうしない。それが当たり前のように振る舞い、他者を……次席である僕の事も下に見ていた。生まれながらの天才には、努力して這いつくばる無才の気持ちがわからないんだ。傲慢なリドルの顔を見る度、腹が立って仕方なかった。
     それでも初めの頃は、利用できるなら利用してやろうと上辺を取り繕ってリドルに笑いかけて、「困ったことはありませんか?」「なんでもお力になります」「お友達になりましょう」と声をかけた。
     が、あの腐れ縁の馬鹿ウツボと一緒にいることが多い僕のことを警戒して、リドルは傲慢な表情で「キミたちのことは信用できない」なんて言い放って一切の考慮の余地もなく僕を拒絶した。その態度に表情は崩さぬまま、僕の方がお前のことなんか信用したいとも思わないと、心の中で墨を吐いてやった。
     そんなリドルと同じクラスになったジェイドは、リドルの事を「大変おもしろいクラスメイトですよ」と評価して、含みをもたせ笑ってみたり。フロイドに至っては、入学式のあの事件以来、毎日のようにリドルを探して学園内をうろついては絡みに行っていた。そのしつこさは、リドルからその時の寮長に度々苦情が行くレベルで。その寮長には、なぜか僕がフロイドを抑えられない事を責められた。
     おまえの寮生ぐらい、僕に頼らずコントロールしてみろ、この無能が! っと、心の中で文句を言っていたが、そんな事を言ってしまえば、時期寮長候補から外されてしまうかもしれない。それはダメだと笑顔を張り付けて、僕は一年我慢した。リドルとの差を埋めて、いつか僕が首席に収まり、二番に落ちたリドルを内心鼻で笑いながら、口では慈悲深いことを言ってやろうと、そう、ずっと思っていたからだ。
     それが一転したのは、二年生になり二月も終わりに差し掛かった頃だ。
     もちろん僕は計画通りに二年に上る直前に次期寮長に選任され、順調なモストロ・ラウンジの経営含め、なかなかに充実した学生生活を送っていた。
     リドルのことは鼻持ちならないイメージはそのままだが、寮長になったおかげで知ることの出来たリドルの側面は、真面目を通り越して馬鹿なところもある、ただの融通の効かないルール馬鹿のガリ勉優等生だった。
     そのせいか、それとも寮長として以前よりも接する機会が増えて近い距離になった為か、入学式から育て上げられた印象が少し緩んだ頃、オーバーブロット経験者である僕たちは〝化け物〟として嘆きの島へと連行され。そこでの不測の事態に対応するべく、僕はリドルとタワーの最下層を目指すべく同じチームになった。
     そして僕は、やつの融通の効かない病的な、馬鹿を一〇〇つけても足りないようなガチガチのルール馬鹿な性格や、成績でリドルに劣るからと僕を弱者のように扱うヤツに、入学式から溜め込んでいた苛立ちをぶちまけた。
     その周りを振り返ることのない、自分勝手で前しか見ない王のような振る舞いは、個人的な馬鹿げたルールのせいで、どれほど僕に迷惑をかけているか絶対に理解していない。いや、この傲慢な男なら迷惑をかけている自覚すらないだろう。リドル・ローズハートは己の前しか見ていない。きっと横に並んでも、僕はこの男の視界に入らないだろう……その現実が、余計に腹立たしかった。その身体を抑え込んで頬を掴み、無理矢理視界に僕を映してやろうかとさえ思った。
     だがそんなリドルも、結局は土壇場で『何でも自分でできる』とばかりに前を歩いていたくせに、弱者と決めつけた僕を頼らざる負えなくなった。
     心の中で(ホラ見ろ、僕の言った通りだろ!)と叫べば、一気に気分が良くなった。良く考えずに行動するから、お前がずっと下に見て弱者と扱う僕を頼る羽目になるんだ。きっと悔しくて仕方ないだろうリドルの事を考えれば楽しくて仕方なかった。
     しかし、こういう時こそ余裕ある慈悲の心で応じてやろうと、原初のファントムである『ファントム・タイタンズ・マグマ』を倒して気分が良くなっていた僕に、リドルは眉間に皺を寄せ唇を尖らせ「キミ、やっぱり何か勘違いしているようだけど……」なんて。その後続く言葉に、僕は腹を抱えて馬鹿みたいに大笑いすることになった。
     あんな命の危機にさらされた場所でも、馬鹿正直にルールの事を考えるリドルに、そういえば一年の時、ずぶ濡れになってオクタヴィネルの談話室をぐるぐると走って服を乾かしていたリドルの姿を思い出す。
     本当にルールのことしか考えていないリドルに、腹の中に溜め込んだリドルへの嫉妬が、コロリと転がり反転すれば、今までリドルに向けていた苛立ちや対抗意識が馬鹿みたいに思えた。
     リドルの内面を知れば、その傲慢さも何故か嫌だと思わなくなった。そして冥府に近づき魔力まで使い果たしたリドルの真っ白な髪と、意識を失ったその身体を抱き上げたこの時。今思えば僕の中で、遥か高みにあったリドル・ローズハートが、本当の意味で隣に降り立った瞬間だったのかもしれないと、思わずにはいられなかった。


     * * *

     リドルの裏表の無い性格を知ってしまうと、身構える事が馬鹿らい。
     無事学園に戻ってからも、良くも悪くも、リドルが口にする言葉には嘘が無く、それをどうにも好ましいとそう感じるようになった。悪い事には唇を尖らせて疑い、良いことは素直に満面の笑みで褒める、ツンとしてヒステリックで見下すようなあの表情は、いつしか「凄いね」と手放しに褒めてははしゃぐリドルの顔に上書きされていた。その顔が見たくて、どうしても彼をかまい、姿を見ると呼びかけずにはいられなくなった。
     そして、そんな折に気づいてしまった。フロイドを見るリドルの表情が他と違うことを……
     フロイドの後ろ姿に向けられた『好ましい』と細められるリドルの視線に一体何の意味が含まれているか、この意味がわからないままだったらどれだけ良かったろう。
    (だって、この視線は今一番、僕が欲しているものだ)
     その表情を、僕にも向けて欲しいと、そう思うようになるまでに時間はかからなかった。そこで初めて自分が、リドルに恋していることに気づいた。
     リドルはフロイドが好きなのに?
     不毛な恋なんて、終わったも同然だ。そんな恋をする意味はあるのかと、僕は何度も考えた。考えて、考えて、考えて、この恋は勘違いだったと心に言い聞かしては、リドルを見ると苦しくなるこの気持ちを躍起になって否定して消そうとした。
     けれど、そうやって否定すればするほど、リドルの小柄だが間違いなく自分と同性のはずの身体に触れたいと思うようになった。僕より小柄な身体も、自信に満ちたその瞳も、さらりとした癖のない髪も、柔らかそうな唇も、触れたくて味わいたくてどうにかなりそうだった。
     夢の中でリドルにキスをして、その体を押し倒して、泥濘んだ襞を押し入って、そんな夢を繰り返し見るようになって、気持ちを抑え込んで無かったことになんて、もう出来ないことを悟った。この男を好きになった僕の退路は、すでに絶たれていたんだ。
     そして、リドルに「あなたが好きなんです」とそう告白した。手袋を外させたその薄い手のひらにキスをすれば、驚いたリドルに手を振り払われ「信じられない」と僕の初めての告白は玉砕に終わった。
     だからと言って「嫌いだ」と言われたわけでも、リドルがフロイドと恋人関係になったわけでないなら、僕にもチャンスは有ると、少なくとも一日一回、僕はリドルに告白するようになった。
     どれほど頑固なリドルでも、刷り込むように愛を囁やけば、その心の片隅で僕のことを意識してくれるかもしれない。だから、この不毛な恋がどうにか叶うようにと、僕は何度も「好きです」「愛しています」「どうか、僕だけのリドル・ローズハートになって欲しい……」と、呪いのようにリドルに愛を囁き続けた。

     そんな折、あの事件が起きた。
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