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    おわり

    @owari33_fin

    アズリド/フロリド同軸🆚
    ここに上げたお話は、大幅に加筆してpixivに置いてます→pixiv https://www.pixiv.net/users/31202925

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    ミーティア3️⃣ Az-10 『襲来』

     僕が学生の身でありながら妻と子供がいるという話は、一瞬で部署全体に広がり、それから少し皆の態度が変わった。
     お高く澄ましたボンボン校の人魚から、年若い妻と子供の為に必死に働く人魚とイメージが変われば、何かと僕を気にかけてくれるようになった。
     獣人は女性ファーストで、なおかつ情に厚い彼らは、この手の三・四十年前のドラマの様な泥臭い展開に胸打たれるようだ。僕は特になにか訂正する事なく、彼らの好意を受け入れていた。今まで散々邪険に扱われたんだ、これぐらい受け入れても問題ない。
     それに、周囲の対応や現場の士気が変わったお陰で、僕の言葉に耳を傾けるようになった。先日も掘削現場で使用している流動するエネルギーを探知する年季の入ったソナーが故障し、僕が機械の代わりに魔法で探知しますと言えば、一瞬疑いはされど、以前のように余計なことはするなと無視されたりせず、「やってみろ」と言ってくれるのは正直一歩どころかかなり前進したとさえ思える。
     非魔法士の多いこの国は、魔法士も魔力が低い。もともと人魚は妖精族の次に魔力が豊富と言われている、一般との力の違いを見せつけてやろうと、魔力を伸ばして探知すれば、使っているソナー同等かそれ以上の精度で言い当てたものだから、掘削チームの士気も上がった。
     今まで国からも見捨てられたと思っていた自分たちの仕事を、第二王子であるレオナ・キングスカラーが認め、なおかつそこに優秀な魔法士の卵を送り込んでくれた。もしかしなくとも、自分たちが生きているうちに、エネルギーを掘り出すことが出来るんじゃないか……そう考えた彼らは、今までと打って変わり生き生き仕事をするようになったが、掘り進めた先に問題が起きた。
    「分厚い岩盤……ですか?」
    「そうそう、しかもここら辺の地盤が掘り進めたことで少し弱くてねぇ、この岩盤を砕くほどの衝撃を与えたら近辺で崩落の危険性もある。やっぱり迂回するしかないかねぇ」
     皆が「う〜ん」と首を捻る。この岩盤を避けて掘り進める間に、またエネルギーが流動してしまう可能性があるからだ。
     僕が「なら……」と提案しようとした時、言葉を遮るように部長が駆け込んできた。
    「みんな! 第二王子が来たよ!!」
     地図から顔を上げれば、久しぶりに見る尊大な態度をこれでもかと顔面に貼り付けたレオナ・キングスカラーが、僕に「よぉ」と上から目線に笑いかけた。
    「みんな元気にやってるか?」
     レオナの出現に、ここ最近この男のファンのようになってしまった職場の同僚達は、この国の王子だというのに驚くような気安さで近づいて、あれこれと話しかけている。そんなレオナを、離れた場所からジッと恨みがましく見つめてみれば、レオナがニヤリと笑って意地悪く僕を見た。
    「久しぶりだなぁタコ野郎、随分とイイ面してんじゃねぇか」
     その後ろで、王宮の侍従見習いの服を着たラギーさんが「え!? アズールくん!??」と心底驚いた顔をした。あぁ、だってそりゃそうだろう。今の僕は、焼けるような日差しと乾燥にのせいで、髪はパサパサ、皮膚だってありえないぐらい乾燥して唇がひび割れるほどだ。服も社名の入ったヨレヨレの泥汚れが取れないツナギ姿……学園での僕の姿と比較されると死にそうな気分だ。
     だが、今はそれを表情に出すべきじゃない。すっと小さく息を吐いて、いつもの笑顔を顔に貼り付けた。
    「レオナさん、ラギーさん、お久しぶりです」
     何しに来たんだと笑顔に乗せて微笑めば、癇に障る顔のレオナが、部長に向かって「このタコ借りてくぞ」と一言、僕について来いと背中で指示した。
     こっちは午後から現場に向かう予定も入っているのに、人の予定なんか気にしないなんて、社会人としてどうなんだ!? イラッとして、「あいにく仕事が……」と断りを入れようとした僕の背を部長が叩く。
    「仕事は代役に行かせるから気にしなくていいよ〜」
     行っておいでと部長のんびりした笑顔に、僕の顔が引き攣った。
    「だ、そうだ」
     上司から許可が降りてしまえばそう簡単に断れない。今の僕は経営者や支配人でもなんでもない。この会社に組み込まれた歯車なのだから。
    「分かりました、お付き合いいたします」
     あぁ……この屈辱、絶対に一生忘れるものか。
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