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    おわり

    @owari33_fin

    アズリド/フロリド同軸🆚
    ここに上げたお話は、大幅に加筆してpixivに置いてます→pixiv https://www.pixiv.net/users/31202925

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    ミーティア3️⃣ Az-11 『計画』

     レオナがここまで乗ってきた車は、第二王子が乗るにふさわしい公用車かと思えば、こじんまりとしたオフロードオープンカーだった。一国の王子がこんな車でいいのかと眉間に皺を寄せれば、ラギーさんが助手席に乗り込み、運転はレオナ自身がするようだ。後部座席に滑り込みながら、どうか車酔いしない運転をしてくれと目線で訴えながらシートベルトをすると、レオナがエンジンを掛け車を発進させた。
    「どこに行かれるんです?」と聞くと、レオナの代わりにラギーさんがくるりと振り返る。
    「レオナさんお気に入りのカフェっすよ! あ〜、何食おっかなぁ」
     浮かれたラギーさんを見ると、スラム出身なのに王宮では問題なく仕事をこなせているようだ。元々ラギーさんは器用に何でもこなすタイプで、給料の良い王宮というインターン先なら、余計に気合も入って多少のことなど気にならないだろう。
     今の自分と比較すると、夕焼けの草原の王宮、侍従見習いの服を着たラギーさんは大層立派に見えた。小さく舌打ちして、込み上げる嫉妬を腹の奥にしまい込む。
     程なくして到着したのは、夕焼けの草原の観光地に当たる、景観の良い町並みにある綺麗なカフェだった。レオナに着替える隙も与えられず連れてこられたこの場所に、身なりを整えたい気持ちが膨れ上がってどうにかなりそうだ。
     ラフな服装でも、一国の王子。上質な布で仕立て上げられた服を着ている。ラギーさんは言わずもがなだ。今の僕は、この二人の後をついて歩く姿を周囲にどうみられているのか。せめてと髪を手でなでつけると、店員が僕たちを店の奥に案内した。
     店の二階奥、掃除の行き届いた大きな窓からは良い景色が見える。そんな個室に案内されると、人の視線が無く僕は少しホッとしてしまった。
    「飯、飯〜〜! レオナさんはいつものすか?」
     あぁと言うレオナに、ラギーさんは「了解!」と言って次は自分の食べるメニューを探し初めた。
    「お前も好きなのを食えよ」
    「レオナさんの奢りっすよ〜 何でも頼んで下さいね!」
     その申し出に「お断りします、自分の分ぐらい自分で払います」と拒否すれば、ラギーさんは「アズールくんは相変わらずっすね」と、店員にレオナの分の野菜が一切入っていない溢れんばかりに肉の挟まったホットサンドと、自分用に生クリームがたっぷり乗ったパンケーキとハムとチーズが挟まったベーグルを頼んだ。飲み物は、レオナがアイスコーヒー、ラギーさんはレモネードを頼んだ。
     僕も二人の注文の後、目についたチーズとゲームミートのサンドとホットコーヒーを頼む。手早い提供がこの店の方針なのか、あっという間に運ばれたメニューに、いつかまた飲食店の経営をする際は見習おうと考えた。
    「話しをする前に、まずは飯だ」
     食え、とレオナが言えば、ラギーさんは嬉しそうに「いっただっきま〜す!」とベーグルにかぶりついた。レオナもホットサンドを片手で掴んでかぶりついていた。それを横目に、僕も目の前に置かれたカリッとトーストされたサンドイッチにザクリとかぶりつけば、これはまた……ここ最近、あの寮母の作った代わり映えのしないひどい内容の食事ばかり取っていたので、久しぶりのまともな食事に舌が歓喜した。スパイスの効いた肉……これは夕焼けの草原近辺でのみ生息する鳥の肉だ。少し野性味のある肉は上手にグリルされ、噛むとジューシーな肉汁が口の中に溢れ、少し辛めの味付けと良く合った。コーヒーも、あの寮母の淹れた薄められたコーヒーじゃない、フルーティーで香ばしいナッツ系のフレーバーがバランスの良い味わいだった。
     食べ終えて、コーヒーを一口。クッションの良いソファーに背を預けると、ニヤリと笑ったレオナとラギーさんと目があった。
    「なんなんです、その顔!?」
    「いやぁ、別になんもねぇよ……」
    「そおっすねぇ……シシシ!」
     からかわれていると姿勢を正せば、ソファーにドカリと座ったレオナが「本題だ」と話しを切り替える。
    「部署の方から上がってくる報告書はだいたい目を通した。他にお前の方で気づいたことはないか?」
    「ありすぎですよ。施設も備品も古く、労働環境としては最悪の部類です。なおかつ、流動するエネルギーを人力で掘り進めるには限度がある。掘り進め方によっては、地盤が弱くなっている箇所もあって、簡単には掘り進められません。やはりこれを解決するには、他国から魔力の強い魔法士を呼ぶしかないと思われます」
     そうだ。全て魔法士さえいれば、簡単なことだった。流動するエネルギーを結界で固定し、弱くなった地盤は魔法で硬化させればいい。そこに魔法をぶつけて硬い岩盤を砕けば、エネルギーなんて簡単に取り出せる。なぜそうしないのかとレオナに問えば、鼻で笑われた。
    「じゃあ、その魔法士にお前がなるか? さっさと対価を払って、あの場所から逃げるつもりのお前が」
     そう言われて、言葉が出なかった。僕は、対価を支払えばリドルとその子供たちと別の地で住むつもりだ。この国は人魚の僕にとってあまりに不毛すぎる。
     だがそうなると、この魔力の少ない獣人種にとって、また他国からこの国に来てくれる人材を探さなくてはならなくなる。レオナが言いたいことは、国内の人材だけで掘削するための土壌を作れということだ。
    「タコ野郎、お前の得意なその八枚舌を活かして、俺の代わりに使えそうな企業や金持ちを見つけてこい。コネを作るのは得意だろう?」
    「あ〜! レオナさんもしかして、パーティーサボる気なんじゃないですか!? やめてくださいよ、そんなことしたら、オレがキファジさんに怒られるんすよ!!」
    「うっせぇなぁ……で、どーすんだ?」
     僕は一瞬考えた。このまま同じことを繰り返しても、きっと簡単にはエネルギーを取り出せない。なら、僕や魔法士がいなくても、たとえばマジックアイテムでエネルギーの流動を止め、ゆるい地盤を硬化させ、硬い岩盤を打ち砕くパイルバンカーのようなアイテムがあれば、魔法士がいなくてもきっと掘削できる。
     これが、対価を払い終えリドルたちと一緒に住むのに必要なことなら、僕に断る選択肢はない。
    「分かりました、そちらの方が僕の領分です、レオナさんの想像以上の結果を出してみせましょう」
     顔面にここ一番の笑顔を貼り付け、僕はそう答えた。
    「ところでアズールくん、その左手の薬指のってまさか」
     話しを切り替えたラギーさんに、リドルと対の指輪を指摘された。見せつけるように「えぇ、卒業したら籍を入れるつもりの相手がいます」と答えれば、ラギーさんは机に身を乗り出す。
    「アズールくん! 流石に国際ロマンス詐欺はまずいっすよ!」
    「ちがいます! 双方合意の上、結婚するんです!!」
     うそだぁ〜と信じないラギーさんと僕の会話にレオナが大声で笑いながら腹を抱えている。どうして僕が指輪をはめていたら結婚詐欺になるんだ。
     大笑いしたレオナは、この対価を払い終えたら、なにか一つ結婚祝いに贈ってやるよと、嘘か本当かわからない顔でそう言った。
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