恋に落とす魔法 もしも魔法が使えたらどうする?
そうカインに尋ねたのはクロエだった。その問いに深い意味はなくただの一つの雑談だった。
もしも魔法が使えたら何をしたいだろう。どんな魔法使いになりたいだろう。帰った後もカインは一人考えていた。魔法があるなら剣もあるだろうし、どちらかというとそちらの方が性に合っているかもしれない。でもやっぱり魔法は魔法で捨て難いし、魔法剣士なんていうのも格好いいと思う。そんなことを一晩中、いや次の日の授業中も考えて、放課後一緒に過ごしていたオーエンにも空想を打ち明けてみた。
「馬鹿なの。科学の時代に魔法なんてあるわけないだろ」
「そうじゃなくて、もしもの話だよ」
二人ともクラスは違うがなんとなく放課後はよく一緒にいる。カインはオーエンを友達以上に思っているがオーエンはわからない。時々甘いものを奢らせてくるし嫌なことだって言う。でもカインが会いに行けば当たり前のように隣を許してくれた。この誰も知らない名前のつけられない奇妙な関係はもどかしくて、でもどこか心地いい。
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