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    secret_rename

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    人前ぷれいオーカイ

    人前でぐちゅっとやるオーカイが書きたかっただけなので途中まで(オチなし)
    珍しくフィガロ視点
    書きたいところの設定のためなのでフィガロが言ってることは大体大嘘


    *****


     フィガロは些か焦っていた。この場には若い魔法使いばかりで、しかも治療行為に慣れたルチルとミチルが居ない。だというのにカインが危うい状態に陥っているからだ。
    「アーサー、リケ。治療魔法の心得は?」
    「いえ、あまり」
    「オズが教えてくれたのは自分の怪我を治すものだけです」
     オズならば仕方あるまい。頭痛に耐える顔で目を閉じたフィガロはさっと切り替え次へ目を向ける。
    「シノとヒースクリフは?」
    「仲間の怪我を治す魔法とかなら幾つか教わった」
    「でもカインのこれは……」
     ヒースクリフが真っ青になるのも解る。カインの命を危機に晒しているのは毒を込めた呪いだ。毒そのものは自然界にあるものだが強力であり、しかも呪いが増幅させている。解呪をすれば緩和はできるが、如何せん毒そのものは呪いと独立して作用しているためフィガロが解呪に専念している間に毒でやられかねない。
     呪いの対象は北の魔法使いの気配。北の魔法使いに込めた恨みなだけあってなかなか厄介な呪いだ。フィガロならば避けることもできたが、呪い人もまさか左目にだけその気配をまとった未熟な魔法使いが存在するなんて思わなかったのだろう。
    「ファウストなら解呪手段ぐらい教えているだろ。シノとヒースクリフは呪い緩和の魔法陣を。アーサーとリケはカインの手を握って魔力を送ってみるんだ。イメージでいい。中央の精霊は君達の心に呼応するから、それでカインの魔力が絶えないようにするんだ」
     はい、と若々しい声が幾つか重なった。深刻なのは呪いの方だが、解毒手段を持つ者がこの場にフィガロしか居ない以上子供達に頼るしかない。だから急がなければ。カインの体力と運が持つ間に。
    「……ポッシデオ」
     調合した解毒薬に魔力を込めて即効性を高める。これなら少量でも十分な効果を発揮するはずだ。
    「アーサー、これをカインに」
     カインを抱きかかえたアーサーが解毒剤入りの採取瓶を受け取り、返事をする間も惜しんでカインの口元に近づけた。だが。
    「…っ、ぐ、ぷぇ」
     一口飲み込むことすらできない、気泡混じりに吐き出された音。
    「カイン!」
     アーサー、それから皆が名を呼ぶ悲痛な声が響いた。カインの口端から飲み込むことを拒否した薬液が滴り落ちる。フィガロもきつく眉を顰めた。
     間に合わなかったか。
     まだ生命は失われていないが、内臓への負荷が既に嚥下と吸収さえ行えない域に達しているのかもしれない。どうするべきか。直接注射をするにはあまりに高濃度すぎる。適切な濃度を測る時間は、調合し直す時間は残っているのか。
    「カイン、頼む、飲んでくれ!」
    「カイン、しっかりしてください!カイン!」
     我が身を削るような幼い声が幾つも響き合う。フィガロは超速で次の手段と、諦めのタイミングを計った。その乱雑な密度に紛れ込む、殺意にも似た張り詰めた魔力。
    「――なに、これ」
     フィガロがハッと見遣ると、左目を隠すように押さえた強力な北の魔法使いがそこに佇んでいた。
    「……オーエン」
    「なんなの、これ」
     オーエンは視界にそれしか入っていないように、すっとカインの前にしゃがみこんだ。左目を押さえていた手が離れ、色違いの両の目でカインを見つめる。
    「呪い?」
    「それと、毒だ」
     アーサーが付け加えればふうんと平坦な声音が聞こえた。その揺らぎの無さは興味の無さではないということをフィガロは察している。むしろ逆だ。恐ろしく集中しているからこそ声に感情を乗せる暇すらないのだろう。
     獣の瞳孔を持つ魔法使いは射殺しかねない冷たい眼差しで自分と眼を交じり合わせた男を見ていた。カインに押し寄せていた皆が思わず後退る。
    「貸して」
     すいとオーエンの左腕がカインの背に回り右手が解毒剤を奪う。カインと薬を取られた格好でアーサーも半歩引いた。
     何となく見やすくなってしまったそこで、当然のように、躊躇いもなくオーエンは解毒剤を自分の口に含む。それから矢張り当たり前のようにカインの口に覆いかぶさった。
    「…………っ」
     カインが小さく嫌がり首を反らそうとするのを、オーエンの左手が押さえつけ一層深く口を重ねる。それから見える動きはほぼなくなった。
     一見すれば静かな光景だ。しかし二人の間では息を殺した焦れる相対が続いているのだろう。もはや水を飲むことさえ出来ない身体に水薬を沁み込ませるのは実のところ手間がかかる。苦心して一滴を舐めさせ、追い打ちをかけずにそれを吸収させてから、更に一滴。幾度か繰り返してようやく二滴。三滴と増やしていける。
     それは解っている。時間と手間と根気のいる作業だ。だから普通、一息にやろうとはしない。
    「…………長いな」
     緊張に飽いたのかしかめ面でシノが呟いた。頷きたくなるのを堪えてフォローめいたことをフィガロは口にする。
    「吐き出させないように、苦労してるんだろ。舌で誘導して少しづつ喉の奥に送って」
    「舌で……誘導……」
     恐ろしい怪物の名を呟く声でヒースクリフが繰り返した。気持ちはわかるが。
     勘付かなかったわけでもないが知りたいものでもないからあえて気にしないようにしていた。しかしまあ、そういうことだろう。
     舌を絡ませて少しづつ飲ませるなんて、思いつくことも自体そうそうありはしないが、それ以前に出来る筈がない。慣れない感覚を厭うて拒絶して失敗するのがおちだ。だからつまり、この二人はそれがほぼ無意識でも可能なぐらいには「慣れて」いるということだ。
     この状況は助かったと言える。助かったのだが――カインがオーエンに口の中を好き勝手させるのを無意識でも許容できるぐらい慣れているなんて、せめてこの面々には知らせたくなかったなと、フィガロの微かな良心や良識が痛んだ。
    「カイン!」
    「カイン、大丈夫ですか!」
     この状態の異様さを気を逸らすことなく純粋にカインを応援し続けたアーサーとリケの声に希望が宿る。フィガロも安堵を覚えたが、どちらかといえばここまで気にしないでいられる純粋さに覚える不安の方が勝った。オズにもう少し社会性を教えるよう忠告すべきか。
    「……ん」
     カインを離してオーエンが立ち上がった。カインの顔に血の色が戻り始め呼吸も力を取り戻している。様子に気づいたシノとヒースクリフも名を叫びながらまだ目を覚まさないカインに押し掛けた。となれば、労いの言葉は自分の役目か。
    「お疲れオーエン」
     「…………」
     オーエンはクリームまみれの菓子を食べているときのように指先で自分の唇を拭った。袖口で力強く擦っていてくれたならよかったのにと思わずにいられない。







    ****
    余談
    最初は袖口でぐいっと拭うオエの筈だったんだけど、まあ今はそこまで渋々アクションじゃないかなと言う気がしたので。あと指で拭う方がオエっぽいから
    ところで魔法と魔法陣とか触媒とか薬とかってどういう区別なんだろう
    ミチルの作る薬は人間製と変わらなさそうだし、魔法じゃないんじゃないか?
    呪いにしたって、オズ様なら呪文オンリーでOKファウストなら魔法陣と触媒が必要、とかそういうの?



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