風邪ひいた壮五と環の話頭痛い、しんどい、寒い。
目が覚めると辺りは真っ暗だった。なぜか身体中痛くて、重い。立ち上がると不安定でふわふわする。転ばないように壁伝いに廊下に出た。
なんとなく向かった先は環くんの部屋の前。起きていないかなと思いながら扉の隙間に視線を向けるが光は漏れていない。廊下はもちろん真っ暗で、静かだ。今、何時だろうか。時計を見てから動けばよかったと後悔する。これだけ静かならきっと真夜中なのだろう。ノックしようとした手を引っ込める。きっと環くんなら、助けてと言えば助けてくれるだろう。そうは思うけど、そんな彼の優しさに甘えてばかりいるわけにはいかない。迷惑をかける前に自室に戻ろうと思うが、ここに来るまでに体力は全て使い切ってしまったようで足に力が入らなくなってきた。少し疲れた。少し休んでから戻ろうとその場に座り込んだ。
♢
カタリと音が聞こえた気がした。具合悪そうに真っ白な顔をしながら、少し眠ってくるねと部屋に戻って行ったそーちゃんが気になっていた。そのせいか眠りが浅かったのかもしれない。少し聞こえた音が気になる。でもそれがお化けだったらと思うと確認しに行けなかった。一度気になると心臓がバクバクする。気にしないように耳を塞ぐがいつもより周りの音が大きく聞こえる。次第にトイレに行きたい気がしてきた。気のせい気のせいと思いながら布団にまるまるが気になって仕方ない。トイレにも行きたくて仕方がない。あーもう、普段夜中にトイレなんて行かないのに!と我慢することを諦め、扉の前に移動する。お化けなんていない、お化けじゃない大丈夫と自分に言い聞かせてそっとドアノブに手をかけるとガタッと大きな音がして、びくりと肩が跳ね上がる。
「え、本当にお化けじゃねーよな...」
ビビりながらもそっと扉を開くと。足元に何かが転がった。
「わーーーーーーー!!!!!」
暗くてよく見えないが何かが足元にいる。
「え、なに、なにこれ...」
「タマ、どうした!」
「わーーーーーーー!!!!!」
足元に集中していたところに、違う声が聞こえて驚く。恐る恐る声の聞こえた方を見ると、向こうの部屋から溢れる灯りのおかげで誰だかわかった。
「あれ、ヤマさん?」
「そうだよ、びっくりしたぁ」
「オレの方がびっくりしたんだけど」
一旦落ち着くと足元の熱がお化けじゃないことが分かる。転がっているのはよく見る白い髪。赤い頬。いつものそーちゃんの顔は白いのに今は熱のせいで真っ赤だ。
「そーちゃん、大丈夫・・・じゃねぇよな。あっちぃ」
「あらら、熱でちゃったか。体温計とか持ってくるからタマ、運んであげて」
「うん、わかった」
ヤマさんがリビングに走って行く。そーちゃんよはぐったりと床に横になったままだ。そーちゃんがこの状態から動かない感じ、きっとだいぶ調子が悪いのだろう。
「そーちゃん、部屋、入ろう」
そっと抱き抱えて移動させる。お酒を飲んだ後のそーちゃんより力が入っていなくてぐにゃぐにゃだった。