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    炉妻さとり

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    炉妻さとり

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    オスブラワンドロワンライ
    お題「癒し」

    #オスブラ
    zebra

    可愛い人「15分だけ仮眠を取る」
    「わかりました」
     ショートスリーパーのブラッドさまでも、連日三時間睡眠はさすがに堪えるらしい。
     15分後にアラームをセットし、俺はメンター部屋から出て行こうとするとブラッドさまに手招きされた。確実に時間通りに起こせるようベッドの傍に控えていろ、ということだろうか。照明のリモコンを手にブラッドさまのベッドへ近づくと、腕を引かれた。
    「オスカーも来い」
     俺がブラッドさまのお誘いを断るはずないとわかっているからか、俺が返事をする前にベッドへ引き摺り込まれた。
     ブラッドさまのベッドで寝るのは初めてではない。それなのに、毎回ブラッドさまの匂いと体温に満たされる感覚に心がそわそわする。
     それ以上に、ブラッドさまの姿が俺を落ち着かなくさせた。いつもの制服姿だが、ベストとネクタイが外され、ボタンも第二ボタンまで開けられている。下も、ベルトとボタン、ファスナーが……だめだ。見てはいけない気がする。煩悩を振り払うように顔を上げる。横寝の俺の視界には、ブラッドさまのつむじが見えた。
     すり、とブラッドさまが俺の胸元に顔を寄せる。少しでも俺に近づくためか、胸の前で折り畳まれた手が愛おしい。このごろこうして素直に甘えてくださることが増えた。
     ずっとブラッドさまは俺にとって強く美しく、かっこいいヒーローだった。それは今でも変わらない。変わったのは俺の心持ちだった。いつからだろう。この凛々しい人を『可愛い』と思い始めたのは。
     小さな子供にするように艶やかな黒髪を撫でると、ふっ、とブラッドさまの頬が緩んだ。
    「可愛い……」
    「年上の男にむかって『可愛い』か」
    「ぶ、ぶ、ブラッドさま!?」
     声に出ているとは、そしてそれをブラッドさまに聞かれていたとは! せっかくの休憩時間に嫌な気持ちにさせてしまったのではないか? いますぐ消えるべきか、いや目覚まし時計の役割を果たすべきか。混乱してブラッドさまの頭から手を離せずにいると、その手にブラッドさまの手が重ねられた。
    「なんだ、もう撫でてくれないのか?」
    「ブラッドさま……?」
    「お前の手は大きくて暖かくて気持ちがいい。俺が眠るまでもう一度撫でてほしい」
     半分眠りの中にいるようなふわふわした声で請われて、俺が断れるはずがなかった。
    「ブラッドさまのお望みとあらば、何時間でも撫でつづけます!」
    「それは仮眠にならないな……」
     口元に笑みを浮かべたまま、ブラッドさまの瞼が下ろされた。
    「おやすみなさい、ブラッドさま」
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    まぶたの隙間 橙色にきらめく髪が視界に入ると、ひっそりとゆっくりとひとつ瞬きをすることにしている。
    そうしている間に九割以上向こうから「ベスティ~!」と高らかに響く声が聞こえるので、安心してひとつ息を吐き出して、そこでようやっと穏やかな呼吸を始められるのだ。
    それはずっと前から、新しくなった床のビニル独特の匂いを嗅いだり、体育館のメープルで出来た床に敷き詰められた熱情の足跡に自分の足を重ねてみたり、夕暮れ過ぎに街頭の下で戯れる虫を一瞥したり、目の前で行われる細やかな指先から紡がれる物語を読んだり、どんな時でもやってきた。
    それまでの踏みしめる音が音程を変えて高く鋭く届いてくるのは心地よかった。
    一見気性の合わなさそうな俺たちを見て 、どうして一緒にいるの?と何度か女の子に聞かれたことがある。そういう時は「あいつは面白い奴だよ」と口にして正しく口角を上げれば簡単に納得してくれた。笑みの形を忘れないようにしながら、濁った感情で抱いた泡が弾けないようにと願い、ゴーグルの下の透明感を持ったコバルトブルーを思い出しては恨むのだ。俺の内心なんていつもビリーは構わず、テンプレートで構成された寸分違わぬ笑みを浮かべて大袈裟に両手を広げながら、その後に何の迷いもなく言葉を吐く。
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