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    炉妻さとり

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    炉妻さとり

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    オスブラワンドロワンライ
    お題「眠れない夜」

    ビームス家に預けられて1ヶ月ぐらいの捏造17歳オスカーの「眠れない夜」です。
    お題を聞いた時にあの歌が脳内でエンドレス再生されてしまった結果がこちらです。

    #オスブラ
    zebra

    あなたのせいです「遅かったな、オスカー」
    「ブラッドさま!?」
     オスカーがビームス家の奉公人として働き始めて約1ヶ月。オスカーが皿洗いを終えて自室に戻ると、寝巻き姿のブラッドがオスカーのベッドに腰掛けていた。
     オスカーが奉公を初めて以来、ブラッドの初めての帰省だ。夜遅くにこちらに到着したと聞いていたため、今日は会えないと思っていた。会えると分かっていればもっときちんと出迎えたのに。すでにブラッドに見られてしまっているが、腕捲りしたままだった袖をそっと伸ばした。
    「すみません。今日はもうおやすみになられたのかと思っていました」
    「謝らなくていい。俺が勝手に押しかけただけだからな」
     ブラッドに促され、隣に腰かける。こぶし2つ分ほどの距離をとって座ったが、ブラッドに詰められてしまった。自分のベッドだというのに居心地が悪い。
    「どうしてここに?」
    「最近お前の元気がないと母から聞いたんだ。なにかあったのか?」
     なにか、と大雑把な質問にオスカーが首を傾げる。
    「すまない。これでは何を答えていいのか分からないな」
     両親や弟との仲は、他の使用人からいじめられていないか、勉強が難しすぎるのではないか。ブラッドが思いつくまま不調の原因を問いかけるが、どれもオスカーには思い当たるものがなかった。
    「眠れているか?」
    「はい」
    「どれくらいだ?」
    「……3時間ぐらいです」
    「それは眠ったうちに入らないな。仕事が多いのか?」
     オスカーは首を横に振るだけだ。誰にも言わないからと添えると、オスカーは俯きながら答えた。
    「眠れないんです。眠るのが怖くて」
    「怖い?」
    「起きたら全部夢で、ブラッドさまもいなくて、いつもの裏路地だったらどうしようって。そんなことはないとは分かっています。それでも、眠れなくなるんです」
    「オスカー、夜は悪いことばかり考えてしまう。朝起きてもう一度考えればいい」
    「夜を越せないかもしれないのに?」
     そんなことはない、とブラッドは言い切ることができなかった。言ってはいけないと思った。ストリートチルドレンだったオスカーの全てを、きっとブラッドは一生分かってやることはできない。
    「よく眠れるおまじないをかけてやろう」
    「おまじない?」
    「フェイスにも時々かけてやっているが、よく効くそうだぞ」
    「本当ですか?」
    「試してみないとわからないだろう。ほら、ベッドに入れ」
     靴を脱ぎ、ヘッドボードに背中を預けると、ブラッドにシーツを腰まで引き上げられた。一体何をする気なのか。戸惑っているうちに肩に手を置かれ、向き合わされた。
    「オスカーが、いい夢を見られますように」
     心地よい囁き声と共に、前髪の上から額に口付けられた。
    「どうだ、眠れそうか?」
     潜められた優しい声。石鹸のようないい匂い。額に触れた温かさ。肩に回された大きな手の感触。全てが洪水となってオスカーに押し寄せていた。
     何を聞かれているのか分からず、ゼンマイ仕掛けのおもちゃのようにガクガクと頷きを返した。
    「明日も早いだろう。しっかり休めよ」
     そこからのオスカーの記憶は曖昧だ。挨拶はきちんとすること。そんな基本的な礼儀作法すら守れていたのか記憶にない。
    『よく眠れるおまじない』のはずが、目は冴え、顔が燃えるように熱い。恐る恐る、ブラッドが口付けた前髪に手を重ねる。熱も感触も過去のものでそこには何もない。そのはずなのに、重ねた手に熱が移ったような気がした。
     ――こんなの、眠れるはずがない。
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    一見気性の合わなさそうな俺たちを見て 、どうして一緒にいるの?と何度か女の子に聞かれたことがある。そういう時は「あいつは面白い奴だよ」と口にして正しく口角を上げれば簡単に納得してくれた。笑みの形を忘れないようにしながら、濁った感情で抱いた泡が弾けないようにと願い、ゴーグルの下の透明感を持ったコバルトブルーを思い出しては恨むのだ。俺の内心なんていつもビリーは構わず、テンプレートで構成された寸分違わぬ笑みを浮かべて大袈裟に両手を広げながら、その後に何の迷いもなく言葉を吐く。
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