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    炉妻さとり

    @AM_10932

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    炉妻さとり

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    オスブラWebオンリー「COFFEE BREAK!」開催おめでとうございます!
    展示小説です。
    ブラッドを襲う夢を見たオスカーが夢を思い出して様子がおかしくなるお話です。

    #オスブラ
    zebra
    #エリオ腐R
    elioRotR.

    続きは部屋で 湯気の中にいるようなふわふわとした視界。白みがかった視界の中でも褐色の腕は確かな輪郭を持ち、白い腕を白いシーツに沈める。白い肌を覆い隠すはずの制服のシャツは、はだけられて肘に溜まり、衣服の意味をなしていない。現実味のないその光景を、オスカーは他人事のように眺めていた。
    「やめろ、オスカー……」
     そう言って見上げるブラッドの薔薇色の瞳は熱で潤み、オスカーの心を惑わす。『やめろ』という明確な命令の言葉が誘惑の言葉に聞こえるほどに。
     オスカーはこの色が好きだった。意志が強く、常に前を向いている目だ。その目が今はオスカーだけを映している。もっと自分だけを見てほしい。ブラッドの頬に手を添え、顔を近づける。耐えるようにブラッドの瞼が伏せられた。黒々とした睫毛を涙の雫が伝い、オスカーの指を濡らした。
     ブラッドらしくないその様子に心がざらざらする。落ち着かないが、不快な感覚ではなかった。指についた雫を舐めとったが、味は分からなかった。
     自分が何をしているのか。何故ここにいるのか。何も思い出せなかった。それでもブラッドにとってこれが望まれた状況ではないというのは嫌でも分かった。分かっていても止める気にはならなかった。
     無抵抗のブラッドの胸元に顔をうずめ、深く息を吸う。反対にブラッドが息を止めるのを感じた。動けば捕食されるとでも思っているようだった。
     捕食。突飛のない連想がオスカーに正解を与えた。この絹のような白く滑らかな皮膚を口にしたい。全身余すところなく味わいたい。歯茎がむずむずするような飢餓を感じる。
    「オスカー」
     懇願するように、宥めるように震える唇が己の名前を呼ぶ。あの唇はきっと薄く柔らかいのだろう。何でも口に含んで確認するのは悪い癖だと自覚しているが、この場では許されると思った。美味そうに見える下唇を食むと、オスカーを受け入れるようにブラッドの唇が薄く開かれた。
     初めて味わう他人の口内は捕食を連想させた。生きた鹿の血肉をすする野生の狼はこんな気分なのだろう。熱くて、柔らかくて、美味い。
     もっと欲しい。オスカーに人生を、希望を与えてくれたブラッドならその身の全てを与えてくれるだろうか。動物の急所である首筋に唇を寄せる――
    「――!」
     夢の中のオスカーがブラッドに噛みつく寸前、現実のオスカーが布団を跳ね上げて覚醒する。
     甘美な夢を見ていたはずなのに、悪夢を見た後のように心臓がうるさい。いや、オスカーにとっては悪夢と同じだ。
     仰向けで寝ていたが、夢の中のようにブラッドを抑え込んでいるかもしれない、と上下感覚を失った頭が必死で周りを探索する。当然ながら良く見知ったいつものオスカーの居室だ。部屋はまだ暗く、夜行性であるはずのアレキサンダーのケージからも物音は聞こえてこなかった。ブラッドもまだ寝ているようだ。
     枕元のスマホを引き寄せ、時刻を確認する。朝の四時。二度寝を決め込んでもいい時間だが、あんな夢を見た後ではそんな気になれなかった。
    「夢……」
     認めたくない。自分にそんな欲望があったのか? 跳ね起きた背中を伝う冷や汗が火照った体を冷やしていく。
     もしもあのまま目覚めなければ何をしていたのか。もう一度、上裸のブラッドを思い描く。サウスセクターの4人で行った温泉旅行の思い出がオスカーの妄想を補強した。華奢に見られがちなブラッドだが、ヒーローとして鍛え上げられた肉体は鋼のようにしなやかで、美しい。体質としては筋肉が付きにくいタイプであるようだが、だからと言ってブラッドが力に劣るとは思ったことはない。細身のヒーロースーツで強調される大腿二頭筋から大殿筋へのライン、警棒を操るための上腕二頭筋、どれも実用の美を感じる。なにより、白くハリのある肌はどの部位でも歯を立てたくなるほどだ。
    (違う、俺はヒーローとして研鑽された身体が素晴らしいと思ったのであって――)
     子犬のように歯を疼かせながら、目覚めた時からずっと熱を持ち続けている下半身から思考を逸らす。抜いてしまえばこの熱は冷める。溜まっていたせいで見境ない変な夢を見たのだと言い訳してしまえばいい。――そうではないと分かっている。性欲が原因なのであれば、相手は顔のない美女でもよかったはずだ。
    (俺は、ブラッドさまが好きなのか……?)
     好きなもの、大切なものをたずねられると、オスカーは迷わずブラッドの名前を挙げてきた。もし今、誰かから同じ質問をされたとして、ブラッドの名前を挙げることができるだろうか。
    (ブラッドさまが俺にしてくださったことは変わらない。俺はただ、恩に報いるだけだ)
     深く考えてはいけない。何かを暴いてしまう恐れがある。あんな夢なんて見なかった――そう結論付けて頬を叩いた。
    「オスカー……?」
     ブラッドの部屋からいつもより少しこもった声が聞こえる。二人の部屋は低い本棚で隔てられているだけなのだから、一人で悩むオスカーの身動きも全て聞こえていただろう。
    「すみません、ブラッドさま。起こしてしまいましたか?」
    「ん……問題ない……」
     むにゃむにゃと何か言う声が聞こえたが、すぐに聞こえなくなってしまった。どうやら眠ってしまったらしい。ブラッドには珍しいことだが、それだけ心労が溜まっているということなのだろう。
    (ブラッドさまはちゃんと眠れているだろうか。布団をかけなおした方がいいかもしれない)
     音を立てないようにベッドを抜け出し、忍び足で部屋の境界を越える。予想通り、上半身を斜めにはみ出させた状態でブラッドは眠っていた。あのまま起きようとしたのか、手には眼鏡が握られている。
    「可愛らしい……」
     思わず漏れた言葉に、反射的に口を覆う。いつでもブラッドはオスカーの憧れだった。格好いい、美しいとは思っても、『可愛い』とは――。
    「オスカー……」
     突然名前を呼ばれ、姿勢を正す。だがそれは寝言だったらしく、続く言葉が掛けられることはなかった。一先ずブラッドの手から眼鏡を抜き取り、サイドテーブルの上へ避難させる。当初の目的通り布団をかけなおすと、ふわりとブラッドの香りがした。夢でブラッドの胸に顔をうずめ、嗅いだ香りが色付けされていく。――もうだめだ。
     ここにいてはブラッドの身が危ない。艶やかな夢と寝不足で鈍った己の頭がいつ理性のタガを外すか――絶対にないと今のオスカーには断言できなかった。
    「ジムに行くか……」
     徹夜明けのヴィクターや、ジェイのいびきで叩き起こされたアッシュがいないことを祈る。
     
     ◇

     幸いこの日のブラッドは会議続きで、業務中にオスカー達と顔を合わせることはなかった。
     夕方、一日の業務を終えたオスカーが休憩のために自販機コーナーに立ち寄ると先客がいた。ブラッドと、内勤の男性職員。赤茶色の癖毛の後ろ姿は見覚えがある。彼は確かサウスセクターの経理担当職員だ。彼の背中からは気迫のようなものが滲みだしており、そこに部外者が立ち入るのを躊躇わせた。気迫の意味は分からないが、見知った彼はブラッドに危害を加える人物ではない。オスカーは立ち止まり、彼が落ち着くのを待つことにした。
     ブラッドと並んで座っていた男が立ち上がり、勢いよく言う。
    「ブラッドさん、あなたが好きです」
     ブラッドはモテる。女性はもちろん、男性からも。ブラッドの隣に立ち続けるオスカーは良く知っていた。そして返事はいつも同じだった。
    「気持ちはありがたいが――」
    「そうですよねー」
     付き合ってくれとさえ言わなかった男はブラッドの返事も聞かず、いかに自分がダメか、ブラッドと釣り合わない理由を並べ立てる。いわゆる記念受験だ。ブラッドほどの高嶺の花であれば振られる前提で告白してくる者が大半だという。ディノによると、アカデミー時代のバレンタインデーに女子十人から一斉に告白されたことがあるらしい。
    「それに俺、知ってるんですよ。オスカーさんとお幸せに!」
     傍観者からいきなり舞台に引き摺りだされたオスカー。その困惑をよそに、全てを言いきった男はブラッドを残して立ち去ろうとし――オスカーに気付いた。
     こういった時、なんといえばいいのか。オスカーが言葉を探しているうちに男は試合後のようにすがすがしい笑顔をオスカーに向け、肩を叩いて去っていった。困惑してブラッドを見ると、ブラッドも困った様子でオスカーを見つめ返してきた。
    「……俺、ですか?」
    「どうやら想定以上に噂が広まっているらしいな」
    「噂……?」
     ブラッドは何か知っているらしい。ブラッドはオスカー越しに軽く廊下の無人を確認し、死角になる壁際にオスカーを呼び寄せた。
     声をひそめるためか、ブラッドの肩がオスカーの胸に当たるほど密着する。
    「俺とオスカーが恋人同士だ、という噂が市民の間で広まっているらしい。
     その様子だとオスカーの耳には入っていないようだな。根も葉もないゴシップだ、放置していても問題ないだろうと判断したが――」
     話し続けるブラッドをよそに、オスカーの頭は不埒な思いに支配されていた。オスカーの口のすぐ前に曝け出された無防備な耳。ピアス穴のない、薄く柔らかそうな耳たぶ。骨のないそこは夢で口づけた唇より柔らかいのだろうか。
     耳の裏はどうだろうか。洗い忘れることが多い箇所だが、きっとブラッドからはいい匂いがするだろう。確かめてみたい。
    「オスカー?」
     返事がないことを不思議に思ったのか、ブラッドがオスカーを仰ぎ見る。二人の距離がさらに縮まった。オスカーが意志を持って動けばキスできてしまう。本物のブラッドの唇は夢で思い描いたものより肉厚で瑞々しく、食い出がありそうだ――そんな考えが脳裏をよぎり、反射的にブラッドから距離を取った。
     ピシリ、と空間に亀裂が走った音が聞こえた気がした。
     ゆっくりとブラッドが息を吸い、絞り出すように言う。
    「…………すまなかった。噂も、こうして近づき過ぎたことが原因かもしれないな」
    「ち、違うんです……!」
     ブラッドはオスカーの方を見ない。常に前を見据えている瞳は所在なく床をさまよっていた。ポーカーフェイスと呼ばれる彼が目に見えて動揺している。
     あなたを襲う夢を見ました、と言えばいいのか。今度はオスカーがブラッドから逃げられてしまうかもしれない。掛ける言葉が見つからない。
    「これからは少し距離を置こう。そうすれば誤解されることもないだろう」
     逃げ出すように踵を返すブラッド。反射的に手を伸ばし、ブラッドの腕を掴む。あの夢の光景がよぎったが、今はブラッドを引き止めることが何よりも大切だった。
    「ブラッドさまを襲う夢を見たんです」
    「襲う? 夢の話だろう。お前が俺に危害を加えるはずがない」
    「そういう意味ではないんです」
     今は制服に包まれたブラッドの身体を壁に押し付ける。驚いた顔をしているが、抵抗はない。オスカーが危害を加えないと思っているのか、万が一何かされても勝てる算段があるからだろうか。
     夢の中でしたように、ブラッドの頬へ手を滑らせる。動きを封じられ、大きな身体で覆いかぶさられてもブラッドは怯むことなくオスカーを見つめ返してくる。夢の中のように瞳を閉じてはくれないらしい。怯んだのはオスカーの方だった。指の腹でブラッドの唇をなぞり、頬に口づけた。
    「夢の中で、俺はブラッドさまにこういうことをしていました。いつかきっとその先も――ッ!?」
     ブラッドに足払いされ、大きく体勢を崩す。同時に肘を掴んで上体を捻られたため踏ん張りがきかず、ブラッドの目の前で尻もちをついてしまう。膝蹴りや金的ではないということは、ブラッドも本気で怒っているわけではないだろう。それでもオスカーを床に転がらせるには十分な威力があった。
     尻もちをついた体勢のまま固まるオスカーの前に、目線を合わせるようにブラッドがしゃがみ込む。まだ見捨てずにいてくれるらしい。
    「何か様子がおかしいと思っていたが……。オスカー、お前に言いたいことが三つある」
    「はい……」
     この感覚は久々だった。ブラッドに拾われ、野生の狼が従順な犬に躾なおされるまで、ブラッドに挑んでは幾度となく叱られた。妙な嬉しさと懐かしさに頬が緩みそうになるが、口を真一文字に結ぶ。きっとブラッドにはバレているだろうが。
    「一つ目。性欲と恋愛感情を混同するな」
    「二つ目。人目に触れる場所でこのようなことをするな」
    「三つ目。行動に移す前に言葉にしろ。同意を取れ」
    「はい……」
     返す言葉もない。オスカーに犬耳や尻尾が生えていれば、しおしおと力なく項垂れていただろう。
    「いや、これでは伝わらないか……」
     俯いたオスカーのネクタイが掴み上げられ、ブラッドと真っ直ぐ向き合わされる。見下ろされた瞳は高揚で赤みを増して見えた。
    「人目のない場所で、言葉にして聞かせてくれないか?」
    「ブラッドさま……?」
    「部屋に戻る」
     そう言い捨ててブラッドは歩き出した。ぽかんとその後姿を眺めていたオスカーも、慌ててその背を追った。

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    mekemeke1226

    MAIKING潜入捜査ビリーくんのジェイビリ
    ここから先に進めないので一旦あげます
    書き上がる時はがっつり修正
    調査対象の好みのタイプ。金髪碧眼、幼顔なんて、髪色さえ変えればピッタリかもしれない。自分が幼顔なのはチョット、いや、あんまり認めたくはないけれど。カラースプレーで髪を黄金に彩って、ホテルのラウンジに居ても違和感がないスーツを纏う。あまり大人っぽくならないように、タイはシンプルなものではなく蝶ネクタイにした。最後にキスしたくなると話題のリップをつけて、対象者がいるバーに足を踏み入れる。
    潜入調査はよくするけれど、色仕掛けは久し振りだ。人間は欲で頭が馬鹿になると口が緩くなるから、色仕掛けはすごく簡単だしお金もかからない。ヒーローになる前はよくやっていたけれど、ジェイがトクベツになってからはなんだか触れられることが気持ち悪くなってしまって、あまりしたくなくなってはきたけれど。
    店内を見回して対象を確認して、ざっと頭の中で流れを組み立てる。入ってすぐいきなり近付くのは怪しまれるから、彼の座る席から3つ離れて座ることにしよう。
    協力をお願いしているバーテンダーさんが出してくれたノンアルコールのドリンクを飲んで、わざと聞こえるような声で嘘八百の情報を流す。パパに連れてきてもらったけど、先に帰っちゃ 2768

    いとう

    DONEフェイビリ
    まぶたの隙間 橙色にきらめく髪が視界に入ると、ひっそりとゆっくりとひとつ瞬きをすることにしている。
    そうしている間に九割以上向こうから「ベスティ~!」と高らかに響く声が聞こえるので、安心してひとつ息を吐き出して、そこでようやっと穏やかな呼吸を始められるのだ。
    それはずっと前から、新しくなった床のビニル独特の匂いを嗅いだり、体育館のメープルで出来た床に敷き詰められた熱情の足跡に自分の足を重ねてみたり、夕暮れ過ぎに街頭の下で戯れる虫を一瞥したり、目の前で行われる細やかな指先から紡がれる物語を読んだり、どんな時でもやってきた。
    それまでの踏みしめる音が音程を変えて高く鋭く届いてくるのは心地よかった。
    一見気性の合わなさそうな俺たちを見て 、どうして一緒にいるの?と何度か女の子に聞かれたことがある。そういう時は「あいつは面白い奴だよ」と口にして正しく口角を上げれば簡単に納得してくれた。笑みの形を忘れないようにしながら、濁った感情で抱いた泡が弾けないようにと願い、ゴーグルの下の透明感を持ったコバルトブルーを思い出しては恨むのだ。俺の内心なんていつもビリーは構わず、テンプレートで構成された寸分違わぬ笑みを浮かべて大袈裟に両手を広げながら、その後に何の迷いもなく言葉を吐く。
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