Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    のあ(書庫)

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 16

    のあ(書庫)

    ☆quiet follow

    ちょぎ則/本丸独自設定/則宗不在/伯仲の仲が友好

    #ちょぎ則

    南泉の受難本丸の玄関口、靴を履き立ち上がった山鳥毛が振り返った。南泉と日光の背筋が揃ってピンと伸びる。
    「子猫、冷蔵庫にショートケーキが入っている。友人が来たら出してあげなさい。もし足りない様なら戸棚の2番目にクッキーの箱があるから・・」
    「ありがとうございますっにゃ!」
    あいつらは友人じゃない。ただの腐れ縁とか昔馴染みだと言いたいが頭と日光の手前そう言う訳にもいかず今日も毛玉を飲み込む気持ちでそれを無理矢理喉奥に押し込んで、南泉は遠征に向かう山鳥毛を日光と共に見送った。
    その後日光は畑仕事がある為別れ、自分は非番だから部屋でのんびりしようかと(日光に余りだらけるなよと忠告はされたが)一文字の部屋に向かった。
    「ふあぁ」
    (昼寝するかぁ)
    基本本丸の建物は刀の時代あった馴染みの和室造りだが一文字集まるこの部屋は洋室仕様だ。ただその佇まいから審神者や現世の知識を知った刀達がヤのアジトだ!と恐れ戦いて?大体近寄る刀が限られている。
    まだ一文字派の刀が南泉だけだった時には無かった部屋で恐らくは山鳥毛や日光の美丈夫であるがややいかつい見た目だけではなく、任侠映画さながらに部屋の中央に二対の黒革張りの三人掛けソファがテーブルを挟んであるせいだと思われる。
    その部屋の入って左側のソファに南泉が勢いよくごろんと寝そべり手足を目一杯伸ばせば
    「猫殺しく~ん、居るよね?遊ぼ~」
    「げぇ!」
    入り口から楽しそうに自分を呼ぶ声が聞こえてきた。南泉を猫殺しくんと呼ぶ刀は本丸で一振りしか居ない。
    南泉が寝そべったままいやいや部屋の入り口の方の方を見れば
    「客を出迎える態度じゃないね。お茶位出してよ」
    とシャツにカーマベルト、スラックス姿の長義が溜息を吐いた。それとは別に少し疲れた顔をしていて先程まで事務作業でもしていたのだろう。
    然し毎度山鳥毛と日光が不在になった時を狙ったかの様にやってくる。福岡一文字派の祖である則宗は自称隠居らしくこの部屋を訪れる事は無い。この広い本丸敷地内で則宗が南泉にかまう時は縁側だったりテレビや炬燵がある部屋が多い。非番の今日居るとすれば大凡新選組の刀達の部屋であろう。
    「俺の分も頼む」
    その長義の背後から声がしたと思えば山姥切国広だ。こちらは内番のジャージに襤褸布を羽織っている。二振り仲良く揃ってやってくるなんてお前らやっぱりビジネス不仲なんじゃないかと疑うレベルだ。
    「何で毎回毎回お前らは」
    「いいだろう?山鳥毛もゆっくりしていってくれって言ってたじゃないか」
    言質は取ってあると長義は言い、さも自分の部屋かの様に定位置となりつつある右側のソファに腰掛けた。国広も当然の様にその左隣に座る。
    「さっき日光がケーキ屋の箱持ってた」
    目敏く国広が目を光らせる。相変わらず食い意地の張ったヤツだ。
    「そうなの?それをお願いするよ」
    「書類作成で疲れたんだ労ってくれ」
    事務の仕事が終わったので二振りして押し掛けてきたらしい。
    「・・・」
    (畳み掛けて来やがって)
    そんなに甘いものが欲しいなら小豆長光の所に行けと言いたい。長船派の刀達は皆揃って末っ子の長義を甘やかす癖があるしその写しも分け隔てなく甘やかすであろう(然し南泉自身他所の刀から見て一文字の太刀らに同様に甘やかされている事に気付いていない)
    「あ~あ~折角の休みが」
    言ってはみたものの今何を言っても出ていってくれないだろうからとっとと食わせて出て行って貰おう。南泉は渋々立ち上がり備え付けの給仕室に向かった。


    「猫殺しくん、偽物くんが零した。台拭き持って来て」
    見れば国広の持ったカップがソーサーから外れテーブルに輪を作っている。
    「つか自分で持って来いよ!」
    台拭きがある場所知ってるだろ!つか本刃にやらせろよ幼い子供じゃないんだし自分と変わらず青年姿の顕現だしこの本丸では修行済みで主力部隊の一振りだ。自分の写しだからって甘すぎる。
    親?バカも大概にしろよと思いつつ南泉は溜息を吐きつつ台拭きを持って来る。
    「明日、俺畑なんだよね。猫殺しくん代わってくれない?」
    「嫌にゃ。請け負った仕事はちゃんとしろ」
    「もてあたしてるからこうやって本丸の事務仕事をやってるんじゃないか。畑は本分じゃない」
    畑に嫌われてるしと長義は唇を尖らせ
    「じゃあ苺ちょーだい」
    と長義が南泉の皿にフォークを伸ばしてきた。天辺に乗った苺を最後に食べるのを知っていての暴挙だ。
    「嫌!!にゃ!!」
    「ケチ」
    仕方ないと言わんばかりに紅茶のカップを手に取ったと思えば中を覗き込み
    「紅茶無くなったおかわり」
    と言い出した。
    「俺は砂糖が欲しい」
    と言う国広のテーブルの上には千切られた紙が散らばっている。
    「は?」砂糖入れすぎだろ」
    スティックシュガーが数本入っていた硝子容器はいつの間にか空になってた。
    揃いも揃っていちいち要求の多い客だ。然し長義がここまで心を開いて我儘を言う相手は決まっている。
    「にゃあもう!!」
    これで立ち上がるのは三度目だと南泉はソファから腰を上げた。


    「ねぇ、猫殺しくん」
    「今度は何にゃ」
    まだあるのか。他にも甘味が欲しいのか。肩を揉んで欲しいのか(絶対にしてやらないが)畑は主の御指名怪我病気でないもない限り代わってやらないぞと南泉は意気込む。
    「君の祖、俺にちょうだい」
    「はっ?はぁっ??!」
    「分かんなかった?則宗を嫁にください」
    「にゃあっ??!」
    ひとの祖をそんな苺や紅茶が欲しいと同じテンションで言う事じゃないが??お前だって燭台切(祖)がそんな風に言われたら嫌だろうが!!(多分)
    (つか二振り付き合ってたっ?!)
    元監査官同士だから知り合いだったとは聞いていたがそんな事則宗は一言も言っていなかった。
    否今思い返せば不思議だと思った時もあった。
    普段は加州清光や大和守安定と行動が多いがこの二振りが不在で例えば皆の集まる炬燵等の席では隣同士だったりする。
    そう言えばこの前DVD鑑賞の時に何観るか選ぶ時に長義が犬が死ぬのは駄目、則宗が苦手なんだと言っていた。思い返せば他にも匂わせなんだか無自覚マウントなんだか自分達後裔の知らない諸々があった。若しかしてこれで気付かない自分の方が可笑しいかもしれない。
    「・・・・・」
    「山姥切、式には呼んでくれ」
    知っていたのか本科様のする為す事に反対する理由も無いのか国広が驚きもせず何時もの済ました顔で言う。
    「お前御馳走目当てだろ?まぁいいよ兄弟も一緒に」
    「仲良しかっ!って何勝手に話進めてるんだにゃ!!」
    (何時もの事だがツッコミ役が俺しか居ねぇ!!)
    三振り中ボケが二振りだと大変なのはツッコミ役なのは目に見えている。けど止められない。最早これは天性のものなのかもしれない。
    「南泉“くん”は祖が嫁に行くの嫌なの?この俺が婿なのに?」
    「霊剣山姥切の本科様だぞ?」
    国広がまじ何でだと頭の上にでかい疑問符を浮かべ問う。
    「それはお前だけの本科だから言えるんだろうが!!!」
    (写しがよヨイショしてるって何??なんだこの状況。結婚報告だった??)
    理解が追い付かない。
    (つか“婿”って何だ??御前を“嫁”にしたいって??一文字に化け物斬りが婿入りするのか??一文字に??)
    「まぁ猫殺しくんは則宗と“一番が仲良い”からちょっと寂しいいだろうから分からなくもないけど」
    「あっ?!」
    (すげぇ今の馴れ馴れしかった?!)
    南泉は気付いてしまった。抑揚は変わらない筈なのに“俺は則宗の事何でも知ってる”感が凄まじい。
    「若しかして“兄貴”って呼ぶのが嫌なのかもしれないぞ。山姥切は年下だし」
    国広が横から長義に耳打ちするが隠す気が全くないらしく南泉にもばっちり聞こえている。正直なのは良い事だが余りにも明け透けだ。
    「あり得る」
    ねぇ聞いた?俺の写し天才なんだけど?と言わんばかりに長義は目を大丸くさせ南泉の顔を見る。
    「ちげぇし!!親バカも大概にしろ!!」
    「君のお頭にはもう許可取ってる。勿論賛成だよ。日光も宜しくだって。まあこの俺だし反対する理由なんてないだろうけど」
    「にゃ~~~っ???」
    (反対?してるの俺だけ??!)
    思わず御前の白無垢姿を想像してしまった。存外?似合う。一文字の戦闘装束が白揃いで赤のワンポイントがあるせいかもしれない。
    否違うこれは脳がバグって変な方向に現実逃避し始めている。南泉は思いっ切り自分の右頬を引っ叩いた。当然だが痛い。
    「そうだ、練習する?“長義の兄貴”って」
    南泉の突然の暴挙?を目にしても毅然とした態度でふふんと長義が足を組み直し、言ってごらんとふんぞり返る。
    「ぜっったい嫌にゃあ!!」
    一文字の集まる部屋に猫の大きな鳴き声が響き渡った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works