ノヴァヴィク「じゃあ、ヴィクが一緒に入ってくれるんだったらいいよ」
「え?」
「は?」
あ、しまった。とノヴァが思った時にはもう遅かった。
カウントするのを止めるくらいの数の徹夜をこなし。ラボから一歩も出ない生活を始めてから、はや数日。久々にノヴァのラボを訪れたマリオンが、足を踏み入れた瞬間にしかめっ面になって催促してきたのは入浴だった。そういえば最後に体を流したのはいつだったっけな、とその時になって何日もシャワーすら浴びていないことに気が付いていなかったノヴァは、どこか他人事だった。
あまりにも自分のことを言われている実感がなく、研究片手間にマリオンに返事をしたのがいけなかった。
酷使されてふわふわとした頭は正常な判断をせず、まあそのつまり、三大欲求が垣間見えてしまうのである。人間とは恐ろしい。
で、冒頭の台詞。
「ノヴァ……」
ノヴァのことを敬愛してやまないマリオンも、さすがに表情を凍り付かせて引いている。少し離れたところで会話を聞いていたらしいジャックからは、ド軽蔑の眼差しが突き刺さり痛い。この場にジャクリーンがいなかったのがせめてもの幸いだっただろう。あの子がいたら、きっとややこしいことになったはず。
「あのね」
「!」
とりあえず弁明しなければ。と一歩前に進むと、その分マリオンが一歩後ろに下がる。もう一歩進むと、更に一歩。
「――!」
縮まない距離に絶望したノヴァが、助けを求めるようにヴィクターに視線を移した。すると、ヴィクターはヴィクターで呆れたような表情でノヴァの様子を見守っているではないか。付き合いが長いゆえに顔を見ただけでわかる。暗に「ノヴァが悪い」と主張していることが。
「……うん」
確かにノヴァが悪い。最近ちょっと忙しくて、マリオンともヴィクターとも触れ合いが少ないなーとか、そういえばヴィクターといちゃいちゃした触れ合いをしたのはいつだっただろうか、なんて考えながら会話をしたのが悪い。だがしかし欲求不満なのは事実なので、冷たい視線に晒されながらもわずかな期待を抱いてしまうのだ。
押したらいつかイケるんじゃないか、と。