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    NNyabolatt19770

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    NNyabolatt19770

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    まさよど
    途中までXにツリー形式で書いていたもののまとめなので改行無しでつらつら書いています
    現パロではないので携帯スマホ無い時代です

    正雄捜査網めずらしく喧嘩をした淀野と正雄。「先生の分からず屋!もう知らない!」そう言って正雄が飛び出していって既に3時間が経つ。すぐに追いかければよかったものの、意地もあったし、どうせ小一時間もすれば戻るだろうと、淀野はたかをくくっていた。しかしなしのつぶてのまま、まもなく日も変わる頃となりいよいよ心配になってくる。行き先の手掛かりは無い。やみくもに探して見つけられるか…?…捜索願…はさすがに大袈裟だろう。あれこれと思い巡らせ、事務所内をうろうろと歩き回って考えた結果、背に腹はかえられぬ、と恥をしのんで昔馴染みの記者仲間、情報屋に夜分にも関わらず片っ端から電話をかけ、正雄探しの手伝いを依頼する。皆、情報収集、調査探索のプロだ。中でも、淀野のかつての後輩で、現在は正雄の勤める出版社で所属するチームの編集長、つまり直属の上司である男、渡邊が、淀さんの頼みだし、部下のことも気がかり、とあれこれ采配を振ってくれることに。彼の一存により、淀野はひとまず事務所にて待機となった(正雄が戻るかもしれないし、捜索チームからの連絡待ちのため)。すると、さすがは玄人集団、30分もしないうちに、正雄発見の報が入る。聞けば少し離れた駅近くの繁華街の一角にあるバーで飲んでいる、しかも何者か、同伴する男がいると言う。彼の友人では?と聞くと、年の頃は淀野より少し下のように見えるがとても友人というような年格好ではないらしい。嫌な予感に全身を震えが走る。淀野は取るもの取り敢えず事務所を飛び出すと、タクシーを掴まえ件の場所へ向かった。到着した店の前には既に仲間達が集まっており、渡邊がそっと扉を開けて指し示した先には確かに正雄の姿がある。客の疎らな店内、薄暗い照明の中カウンターの一番奥の席には飲みかけのグラスが二つ。正雄の隣には見たことの無い男が座っており、したたかに酔った様子の正雄がその肩にしなだれかかるのをいいことに、不埒にも彼の腰に手を回して擦っているではないか。淀野は、カッと頭に血がのぼるのをどうにか収め、つかつかと男のもとへ近寄ると声をかけた。「失礼、この子が世話をかけたようですね?」「はて?あなたは?彼の親御さんですか?」男の存外丁寧な応答を意外に感じたが、それもおそらく上っ面。身なりは悪くないが、時計や装飾品などは華美で悪趣味極まりなく、整髪料で撫で付けた頭がてかてかとしていかにも胡散臭い。しかし、淀野はあくまで平静を装った。「名乗りもせず失敬、私は淀野というものだが彼とはちょっとした知り合いでね、酔って動けなくなっていると連絡を受けたものだから迎えに…」「そうでしたか…お知り合い…でしたらご心配には及びません、彼とはこの後約束がありまして…」「しかし彼、既に前後不覚のようですが…?」「ははは、少し飲みすぎてしまったようですね…大丈夫、私が責任を持ってちゃんと休めるところへ連れていきますから…」男は淀野の言葉を意にも介さず、正雄の肩をぐっと掴むと更に自分の方へ引き寄せた。その時淀野は頭の中でパチンと何かの弾ける音を聞いた。「…離せ」「はい?」「正雄からその汚い手を離せ、下衆め!」「な、何を?あんた、この子の何だってんだよ?」「俺は…!」男の胸倉を掴む淀野。殴るのはまずい、と離れて見守っていた仲間らがあわてて駆け寄ってきて淀野を制するも、既に固めた拳を男に振り下ろそうとしている。「俺はなぁ、彼の夫だ!この子が面倒をかけた詫びにここの代金は俺が持ってやる!分かったらさっさと消え失せろ!この腐れ外道が!」その勢いに男は驚き、正雄の身体を淀野の方へ突き返した。それから「く、くそっ、もうちょっとだったのに…!」と悔しそうに言い捨てると、鞄をさっと小脇に抱え、そそくさと店を出ていってしまった。淀野は男が戸口に消え、その背中が見えなくなったのを確認すると、ふーふーと荒くしていた呼吸を鎮め、徐々に落ち着きを取り戻していった。腕に抱えた正雄に声をかける。「正雄、大丈夫か?」しかし応答がなく、店主が差し出した水のグラスを口元に添えてやっても飲もうとしない。意識を失っているわけではないが、かなりの酩酊状態ですっかり正体を無くしているらしい。すると淀野は自らグラスの水をひとくち口に含むと、仲間達が茫然として取り囲むのも気にせず、正雄に口移しをした。その様子に、わっと静かな歓声が上がる。淀野は頬を少し赤らめてチラ、とそちらに目配せをしたが、正雄への口移しをふたたびみたびと繰り返す。最初は口の端をだらだらと流れていくばかりだったのが、数度目かに喉が動いてこくんと飲み下し、正雄はようやく目を覚ました。「正雄…良かった、気がついたか?」「……ここは…?」思考も視界もはっきりしない様子でしばらく目玉だけをきょろきょろと動かしていた正雄は、少しずつ状況を理解したようで、その目にはみるみるうちに涙が溜まってゆく。「先生…ごめんなさい…」「……俺の方こそ悪かった…お前の気持ちも考えず…」神妙な顔付きで見つめ合い、すっかり黙り込んでしまったふたりに渡邊が堪らず声をかける。「まぁ、八木も無事見つかったことですし…今日はもう遅いですからこの辺で…」「あれ?渡邊チーフ?どうして…?」「お前を探すのに、協力して貰ったんだよ…皆、夜分にご足労、本当に助かったよ…!この礼は必ずさせて貰う、本当に…本当に、ありがとう…」深々と頭を下げる淀野に皆恐縮しつつも、誰ともなく言い出す者があった。「ところで…ふたりの喧嘩の原因は何だったんです?」「あ…それは……」淀野と正雄は今再び顔を見合わせる。互いにどう説明したものかともごもごと言い澱んでいたが、しばらく後、淀野が口火を切った。「俺が…正雄を拒んだから…」「違います、先生!先生はオレを心配して言ってくれたのに…オレがわがままを言ったから…」今度は互いに庇い合う。これでは埒があかないと渡邊が、八木、分かりやすく説明しなさい、と上司然として問い掛けた。「この数週間…毎日、日が変わるくらいまで仕事して…休日も取材で出てしまうことがほとんどで…」「確かにな…締め切りのきつい仕事をいくつか立て続けに任せてしまっていたからな…」「でも、今日…仕事に目処がついて、久しぶりに早く帰れることになったから…だから…」淀野の方を振り返り、その様子を伺うように一旦口をつぐんだ正雄。淀野は顔を縦に深く頷くと続きを促した。
    「先生に…久々にしたい…って求めたら…」「もちろん、うん、と言いたかった…だが聞けば早いのは今日だけのたまたまで、明日からもしばらくは忙しいと…それならば早く寝て、ゆっくり身体を休めて欲しかったんだよ…」「それなのにオレ…無理を言って…本当にごめんなさい、先生…」胸に頭を凭せかけてくる正雄を、淀野はしっかりと受け止め周囲の目も憚らずぎゅっと抱き締めた。「驚いたろう?これまで言っていなかったが、俺達はこういう関係なんだ…別に隠すつもりはなかったが…今回は…正雄が居なくなって…正雄に何かあったらと思うと…なりふりかまっていられなかった…」淀野のその言葉に仲間達は皆、一様に顔を見合わせるが誰も声を発しない。当然、簡単にはかける言葉が見つからないだろうし、非難を浴びても仕方がない。それでも、正雄だけは…奇異の目から守ってやれないものか…そう思って胸の中で震えながら嗚咽を漏らす正雄の方へ視線を落とす淀野に、誰かが声をあげた。「別に、良いんじゃないでしょうか…?誰が誰を好きになろうと、誰と誰が愛し合おうと…」「俺も、そう思う」「淀さん!おめでとう」「俺達は味方だからな!」ひとりの声を皮切りに次々と賛同の言葉が続く。そして渡邊は改めてふたりの方へ向き直ると、正雄に向かって言い放った。「分かった、八木、明日は休んでいい」「え…でも…」「もとはと言えば俺も自分の仕事に掛かりっきりで、お前を援護出来なかったのが悪いんだ…チームの長として不甲斐ない…」「いえ、オレがもっと要領よく出来ていれば…」「いや、八木、お前は本当によくやってるよ、淀さんの弟子も伊達じゃない…」隣で聞いている淀野が、当たり前だ、誰が仕込んだと思ってる!?とすかさず横槍を入れる。「とにかく!一日くらいならどうにかなる、いや、俺がどうにかする…だから、俺に任せろ!」そこまで聞いて正雄は、申し訳なさそうに下げていた眉を笑みの形にし、淀野から身体を離すと渡邊の腕に自分の腕を絡ませた。「へへへ、チーフ、ありがとうございます!格好いい!大好き!」「ははは…こりゃあ、参ったなあ…」照れて頭をかく渡邊を、淀野は横目でじとりと睨み付けた。「お前…ヘンな気を起こすんじゃないぞ…?」「わ、分かってますって!」そうして正雄は一日の休みを貰い、併せて急遽自身も仕事休みとした淀野とふたり、触れ合うことの出来なかった時間を思う存分取り戻したのだった。

    後日談

    出掛け前、着替えをしながら見ていたニュースに見知った顔が映って正雄は、あ!と驚きの声をあげた。淀野はそれにちらりと反応を見せるも、朝食のテーブルの片付けを再開する。「先生!この男!」正雄が騒ぎ立てる声を聞きながら、手元の皿を泡立てることに集中する。見なくても何のニュースか分かっていた、というのもある。「あの時の…逮捕?未成年誘拐の罪って…!」正雄がアナウンサーの読み上げた内容を反芻する。これでやっと一矢報いることが出来た…淀野はひとり、胸のうちに感慨を覚えた。と、言うのもあの喧嘩騒動の夜、正雄を発見したバーを出る際のこと。「騒がせてすまなかったね」正雄と男の分の飲み代と、せめてもの詫びにとチップとして多めにカウンターに置くと、淀野は店主に声をかけた。すると店主は「いいえ、お見事でございました…私も胸のすく思いでしたよ」「え?」「実はさっきの男、この界隈の店によく顔を出していてうちにも度々来ているんですが…」聞けば男は毎回違う相手と連れ立ってやって来て、最後にはすっかり酔わせて前後不覚に陥ったその相手を、介抱する、などと豪語してはまたどこかへ連れていったのだと言う。しかもそのツレは決まって若く見目の整った男で、時には未成年者と見紛うこともあったようだ。しかし介抱…とはよく言ったもので実際に何をしていたのかは推して知るべしである。もし、もう少し駆けつけるのが遅かったなら、正雄も男の毒牙にかかっていたに違いない。この店の店主も、男の立ち寄る近隣の店でも、男の挙動に不審を抱いているものの、証拠が無ければ憶測で糾弾するわけにもいかず、その間にも無垢な若者がひとり、またひとりと被害に遭っていたのだった。だがそれも今日まで。淀野をはじめ、情報のプロ集団が本気で調査をすれば、男の痕跡と綻びはすぐさま見つけ出された。得られた証拠は即日警察へと持ち込まれ、それがきっかけとなってこの度、男は敢えなく御用となったのだ。更にこうして報道されることで、男は刑事罰に加え、社会的にも抹殺されたわけである。淀野は実に痛快、とばかりに口角を持ち上げた。これでもう、この男によって不幸にも搾取される若者を増やさずに済んだ。だが一連の行動に淀野を突き動かしていたものは、正義の心とか社会奉仕とか、そんなものでは決して無かった。淀野はただ、許せなかった。正雄にあんな風に触れた男が…正雄をあんな邪な目で見たあの男のことが。それだけだった。しかし正雄は何も知らない。淀野のそんな思いも、彼とその仲間らの暗躍によってそれら報復が成し遂げられたということも。すっかり身支度を終えた正雄を、淀野は玄関まで見送る。いつもの時間、いつもの習慣である。「行ってらっしゃい、気を付けてな」「先生…?」いつもとは違う正雄の不意の問い掛けに、淀野は首を傾げた。「…先生…守ってくれて、ありがとう…」そして唇の先が少し重なるだけのキスをする。呆気にとられる淀野にふっと、微笑みの目配せをして飛び出していく正雄。淀野はその後ろ姿を見送りながら、唇にそっと手を当てた。出掛けのキスならいつもしているのに、何故か胸が苦しくて堪らない。自分の中で確かに存在を大きくする正雄に、更なる愛情の込み上げるのを禁じ得ない淀野だった。
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