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    sasaha_irm6

    @sasaha_irm6

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    sasaha_irm6

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    ifまふぃ。クララ登場前の妄想SS

    sign ナイフの柄が指先から離れる。その瞬間、バチバチッて火花が見えた。コレ絶対にうまくいく。ナイフ投げでも、空中ブランコでも、なんでも。うまくいくときは、今みたいに火花が見えたり、ビリビリって電気の糸みたいなのが見える。
     澄んだ青にうっとりしていると、的に吊るしてあったリンゴが真っ二つに割れた。近くで練習していたジャグラーが口笛を吹いて、サルが落ちたリンゴを拾って食べる。
    「調子良さそうだね〜本番もよろしく」
     団長に頭をぽんぽんと叩かれて、私はニカッと笑い返した。ほっぺたを持ち上げると、フェイスペイントの雫が目尻にくっつきそう。この人に褒められて、私は嬉しいのかな、それとも悲しいのかな。
    「そうそう、今日の的はトクベツになるかもね」
    「え〜あんまり小さい体のマトはイヤだよ!」
     団長は護衛を連れてテントを出ていった。私はため息をつくと、残っているナイフを宙に放おった。落ちてくるのを華麗にキャッチして的に投げる。
     バチッ。また青い火がはじける。キレイなだなぁ。もっと見たくて、ポシェットにしまってあるナイフを全部取り出した。
     バチッ。くるりとターンしてから一投。
     バチバチッ。宙返りからの連続投げ。
     今日はホントウにトクベツな日みたい。練習に飽きたみんなが私を見てる。でも、ゴメンネ。みんなの視線にも、歓声にも今は興味ないの。
     バチッ。バチッ。息つくヒマもないくらい速さでナイフを投げる。連続であがる花火みたい。ナイフは的の一点めがけて飛んでいく。
     あぁ、もう最後の一本。 惜しむように柄から手を離した。
    (マミー)
     離してしまった手は、ナイフよりも遠くに消えた。鼻の奥がツンと痛い。
    「え?」
     刺さると思った瞬間、的が炎に包まれた。青い火の中に、誰かが立っている。熱でふわりと舞い上がる髪の毛は炎と同じ青色で、私をじっと見つめる目も青い。その人が微笑む。そして、真っ白な手袋をした手を、ゆっくりと私に向かって差し出した。
     バチバチッて、まるで雷に撃たれたみたいに私の心臓が脈打った。思わず伸ばしそうになった手を、反対の手で押さえつける。もう誰の手も離したくないから。
     的にナイフが刺さって、パタンと後ろに倒れた。
    あの人は、誰なんだろう。もしかして……私のトクベツになるヒトかしら? まっすぐに伸びてきた手を取ることができたら。私は祈るように両手をあわせて、ふりそそぐ歓声に向かってお辞儀をした。








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    sasaha_irm6

    PROGRESSイルアズ・プランツドールパロの続き(2章冒頭部分)です。
    来年の2月もしくは3月に、1章とこの続きから最終章までのお話を1冊にまとめて発行予定です。

    1章
    https://www.pixiv.net/novel/series/8783188
    青葉、微笑む チチ、チチチ。
     アラームと一緒に、鳥の声が聞こえる。
    (朝かぁ)
     目を開けると、細い格子模様の欄間から、朝日が差し込んでいた。起き上がって目覚ましを止め、布団の上で伸びをひとつ。寝起きだけど、意識はもうはっきりとしていた。寝起きの良さには、もともと自信があった。けれど、最近はさらに調子がいいみたい。ゆっくり布団で寝ているからかな。今すぐにでも働けそうな気がする。

     布団をさっと片付けて一階におりた。雨戸を開けると、庭では紅葉や桜、南天が風にそよいでいた。
    (気持ちよさそうだぁ)
     縁側のガラス戸を開けてみる。すると吹き込む風に、髪や寝巻きの裾がふわりと揺れた。僕は目を細めてしばらく風に吹かれていた。
     縁側を伝って洗面所へ向かう。渋い焦げ茶の木の廊下はひんやりとしていて、洗面所へ着くころには足が冷たくなっていた。やっぱり、家って広いなぁ。家の中に水道があるのは、便利でありがたいけど……。蛇口をひねると、きれいな水がすぐに出てきた。冷たい水で顔を洗いながら、夜にくんでおいた水の使い道を考える。ため水自体もういらないのかもしれないけど、まだ止めるまでは踏ん切りがついていない。
    1893

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