Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    sasaha_irm6

    @sasaha_irm6

    物書き

    ☆quiet follow Yell with Emoji 🐬 🌸 🍮 🍑
    POIPOI 15

    sasaha_irm6

    ☆quiet follow

    ifまふぃ。クララ登場前の妄想SS

    sign ナイフの柄が指先から離れる。その瞬間、バチバチッて火花が見えた。コレ絶対にうまくいく。ナイフ投げでも、空中ブランコでも、なんでも。うまくいくときは、今みたいに火花が見えたり、ビリビリって電気の糸みたいなのが見える。
     澄んだ青にうっとりしていると、的に吊るしてあったリンゴが真っ二つに割れた。近くで練習していたジャグラーが口笛を吹いて、サルが落ちたリンゴを拾って食べる。
    「調子良さそうだね〜本番もよろしく」
     団長に頭をぽんぽんと叩かれて、私はニカッと笑い返した。ほっぺたを持ち上げると、フェイスペイントの雫が目尻にくっつきそう。この人に褒められて、私は嬉しいのかな、それとも悲しいのかな。
    「そうそう、今日の的はトクベツになるかもね」
    「え〜あんまり小さい体のマトはイヤだよ!」
     団長は護衛を連れてテントを出ていった。私はため息をつくと、残っているナイフを宙に放おった。落ちてくるのを華麗にキャッチして的に投げる。
     バチッ。また青い火がはじける。キレイなだなぁ。もっと見たくて、ポシェットにしまってあるナイフを全部取り出した。
     バチッ。くるりとターンしてから一投。
     バチバチッ。宙返りからの連続投げ。
     今日はホントウにトクベツな日みたい。練習に飽きたみんなが私を見てる。でも、ゴメンネ。みんなの視線にも、歓声にも今は興味ないの。
     バチッ。バチッ。息つくヒマもないくらい速さでナイフを投げる。連続であがる花火みたい。ナイフは的の一点めがけて飛んでいく。
     あぁ、もう最後の一本。 惜しむように柄から手を離した。
    (マミー)
     離してしまった手は、ナイフよりも遠くに消えた。鼻の奥がツンと痛い。
    「え?」
     刺さると思った瞬間、的が炎に包まれた。青い火の中に、誰かが立っている。熱でふわりと舞い上がる髪の毛は炎と同じ青色で、私をじっと見つめる目も青い。その人が微笑む。そして、真っ白な手袋をした手を、ゆっくりと私に向かって差し出した。
     バチバチッて、まるで雷に撃たれたみたいに私の心臓が脈打った。思わず伸ばしそうになった手を、反対の手で押さえつける。もう誰の手も離したくないから。
     的にナイフが刺さって、パタンと後ろに倒れた。
    あの人は、誰なんだろう。もしかして……私のトクベツになるヒトかしら? まっすぐに伸びてきた手を取ることができたら。私は祈るように両手をあわせて、ふりそそぐ歓声に向かってお辞儀をした。








    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💕💕💕
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    sasaha_irm6

    PROGRESSイルアズ・プランツドールパロの続き(2章冒頭部分)です。
    来年の2月もしくは3月に、1章とこの続きから最終章までのお話を1冊にまとめて発行予定です。

    1章
    https://www.pixiv.net/novel/series/8783188
    青葉、微笑む チチ、チチチ。
     アラームと一緒に、鳥の声が聞こえる。
    (朝かぁ)
     目を開けると、細い格子模様の欄間から、朝日が差し込んでいた。起き上がって目覚ましを止め、布団の上で伸びをひとつ。寝起きだけど、意識はもうはっきりとしていた。寝起きの良さには、もともと自信があった。けれど、最近はさらに調子がいいみたい。ゆっくり布団で寝ているからかな。今すぐにでも働けそうな気がする。

     布団をさっと片付けて一階におりた。雨戸を開けると、庭では紅葉や桜、南天が風にそよいでいた。
    (気持ちよさそうだぁ)
     縁側のガラス戸を開けてみる。すると吹き込む風に、髪や寝巻きの裾がふわりと揺れた。僕は目を細めてしばらく風に吹かれていた。
     縁側を伝って洗面所へ向かう。渋い焦げ茶の木の廊下はひんやりとしていて、洗面所へ着くころには足が冷たくなっていた。やっぱり、家って広いなぁ。家の中に水道があるのは、便利でありがたいけど……。蛇口をひねると、きれいな水がすぐに出てきた。冷たい水で顔を洗いながら、夜にくんでおいた水の使い道を考える。ため水自体もういらないのかもしれないけど、まだ止めるまでは踏ん切りがついていない。
    1893

    recommended works

    16natuki_mirm

    DONE忙しくて書けなかったワンドロお題を周回遅れで。
    本文に上手く入れられなかったんですが、「通常期まちを見たとたんにあずは悪周期から抜けちゃうから、あずに悪周期解放使わせるときは魔様モードになる魔王様」っていうのがやりたかったんですよ(本文でやれ)
    【イルアズワンドロ周回遅れ】悪周期 戦いは、苛烈を極めていた。
     新たな魔王がその座に就いてから、まだ日が浅い。支配は行き届いておらず、各地で小競り合いが頻発している。様々な勢力が、中央の目の届かないのを良いことに、その隙に影響力を広げようとしてはぶつかり合っているのだ。
     些細な勢力争い程度のことはなるようになるであろうと静観していたけれど、しかし、関係のない集落が巻き込まれて被害がでているとなれば黙ってはいられない。魔王は自ら側近を伴い、少数精鋭の手勢をつれて鎮圧へと乗り出した。
     はじめは投降を呼び掛け、話し合いでの解決を促そうとした魔王だったが、そんなことで場が収まるのならば最初から戦になどなっていない。いがみ合っていたはずの西軍東軍双方が結託し、魔王軍を追い散らそうと襲いかかってくる。こちらの軍勢はごく少数。いくら精鋭揃いとはいえ、数を頼みに押し切れると思ったのだろう。実際、前線に立つ兵たちは、烏合の衆を前に、倒されこそしないものの数の差に翻弄されて攻め倦ねている。
    2648

    16natuki_mirm

    DONE8/27の悪学で無配にしたもの。うぶうぶなさとあすが遊園地デートするお話。
    「Paradise on sea!」の、佐藤くん視点のサイドストーリーです。
    Paradise~の裏話的なお話なので、どちらから読んでも大丈夫なようにはなっていますが、Paradise~から読んで頂く想定で書いています。
    きみのいろをさがす デートである。
     やっとこぎ着けた、念願の、紛れもないデートである。
     編集者と作家としてだけの関係でしか無かった入間と有栖が、プライベートでも食事に行くようになったのはしばらく前のことだ。それから、仕事の取引相手と行くには随分とムードのある飲食店で、酒を交えた食事を重ねているのだから、これはもうほぼ、付き合っていると言っていい筈だ。
     明確に言葉にしたわけでは無いけれど、中高生ではあるまいし、社会人になってわざわざ「付き合ってください!」もないだろう――と、「編集者」と呼ばれる人種の中で過ごしている入間は考えている。
     はじめこそ、売れっ子作家と新人編集者という立場上、有栖のことは、ちょっと怖い、なんて思っていた入間だったが、あっという間にその、キツい言葉の裏に隠れた――もとい、全く隠し切れていない――本心とか、ふとした瞬間に見せる幼さの残る笑顔とか、仕事に妥協をしない姿勢とか、それから、ちょっとだけ、美味しいものをたくさん食べさせてくれるところとか、に夢中になった。夕方頃に校正用の試し刷りを持って行ったときなんか、分かりやすくそわそわと何かを期待するように落ち着かないそぶりを見せて、仕事が片付いた後食事に誘えば嬉しそうに承諾してくれる――口先では、仕方ないから付き合ってやる、なんて言うけれど、本心と裏腹のことを言うとき、必ず話し始めの一言を言い淀む、本人は気付いていないらしい癖に、入間はちゃんと気付いている――ところなんか、たまらなく可愛い。
    4998