Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    sasaha_irm6

    @sasaha_irm6

    物書き

    ☆quiet follow Yell with Emoji 🐬 🌸 🍮 🍑
    POIPOI 14

    sasaha_irm6

    ☆quiet follow

    バビデビ!パーリィナイトif人間界2開催おめでとうございます!
    新しいの完成しました!七夕のさとあすです。

    誤字脱字等あれば、waveboxなどでお知らせいただけるとありがたいです。

    #イルアズ
    iluaz.
    #さとあす

    七夕の願いごと 梅雨明けを待つ関東は、朝から日差しが強く蒸すような天気だった。太陽の光を反射して道路のアスファルトもじりじりと温度を上げている。午後はどれだけ暑くなるのか。
    「今日、七月七日は七夕です」
     佐藤と明日ノ宮が朝食をとっていると、テレビからそんな声が聞こえてきた。締切に追われていた二人は、そういえば、という顔でテレビを眺める。
    「七夕といえばそうめんですが、由来には諸説あり……」
    「ひとつめは、中国の言い伝えで」
     アナウンサーの説明を先取りするように、箸をおいた明日ノ宮がつらつらと、それこそ竹筒にそうめんを流すように話をする。佐藤も食事の手を止め、明日ノ宮の話に耳を傾けた。
    「と、いうことだ」
    「勉強になります。じゃあ、今日のお昼はそうめんにしましょうか。家にはお昼を食べてから帰る、って連絡しておきます」
     佐藤の言葉に明日ノ宮は目をまたたかせた。佐藤は「そうめん、ありますか」と言いながら、箸で焼き鮭をほぐしている。
    「もう昼ご飯の話とは、入間くんらしいな」
     明日ノ宮がくつくつと笑う。佐藤は顔を真っ赤にしながら、焼き鮭と白飯を口に入れた。

     朝食の片付けをすませた佐藤と明日ノ宮は、さっそく近所のスーパーへ向かうことにした。開店と同時に入店し、暑くなる前に買い物を済ませるつもりだったが、外の気温は二人の想像以上に早く上がっていた。
     明日ノ宮が額の汗をハンカチでおさえる。
    「暑いですね」
     佐藤がエコバッグから水筒を取り出した。
    「あぁ」
     明日ノ宮も佐藤に習い、持っていた水筒から麦茶を飲む。今日は気温だけでなく湿度も高い。汗を吸った服が体にはりつく感触に、明日ノ宮は眉をひそめた。
    「買い物、ネットスーパーにすればよかったですね」
    「そうだな。次回はそうしよう」
     佐藤の気遣いを感じ、明日ノ宮は眉に込めていた力を抜いた。
    「トッピング何にしましょうか? ハムに、錦糸卵、トマトにオクラ……。野菜の揚げ浸しも合いそうですよね」
    「ちょっと大掛かりじゃないか? 私は鰻かあなごが食べたいな」 
    「鰻! いいですね。キュウリも買いましょう」
     話しながら歩いているとスーパーまではあっという間だった。自動ドアが開き、音楽とともに冷気が流れてくる。冷たいクーラーの風を浴び、佐藤も明日ノ宮もふぅと息を吐いた。
    「あ、スイカ。おいしそうですね!」
    「まるまる一個はいらない。カットのパックにしなさい」
    「あ、鮎だ。おいしそうですね!」
    「たしかに、鮎そうめんという郷土料理は存在しているようだが……作ってみるか?」
    「そうなんですか⁈」
     二人は買い物カートを押して店内を回る。食べるのが大好きな佐藤は、目についたものすべてに反応した。明日ノ宮は、性格なのか、佐藤の言葉に逐一真面目に返事をする。買い物カゴには、次々と食材が積まれていった。
     佐藤と明日ノ宮は会計を済ませ、食材をエコバッグに詰める。明日ノ宮が買い物カゴを片付けていると、佐藤が何かを見ていた。明日ノ宮も佐藤の見ている方向に目を向ける。するとそこには、小さな台が置いてあった。
     台の上にはペン立てと短冊が置いてあった。台の前の壁には大きな模造紙が貼られており、色紙で作った笹や七夕飾り、願いを書いた短冊で飾られている。二人は台の近くへ行き、模造紙を見上げた。
    「なかなかに興味深いな」
     明日ノ宮が短冊に書かれた願いごとを眺める。小さな子どもが書いたのか、ただ丸や四角を描いただけの短冊もあれば、学業に関する願いを書いた短冊、大真面目に世界の平和を願う短冊もあった。一通り目を通した明日ノ宮は、そろそろ帰ろうと佐藤に視線を送る。
    「僕らも書きましょう!」
    「は?」
     佐藤は瞳をキラキラと輝かせた。それこそ、わし座の彦星のように。
    「有栖さんは何色がいいです?」
     佐藤は台の前へと進み、短冊を選び始める。明日ノ宮は数回の瞬きののちため息をついた。が、その顔はどこか嬉しそうだった。
    「まったく。しょうがないな、キミは」
     二人並んで短冊を書く。佐藤は書き終わると嬉々とした顔で、自分の短冊を明日ノ宮見せた。佐藤の願いごとを読んだ明日ノ宮が、耳まで真っ赤にする。佐藤も明日ノ宮の短冊をのぞきこんだ。
    「ふふ、有栖さんらしいや」
     二人は模造紙に短冊を貼ると、手をつないでスーパーを出た。

     明日ノ宮のマンションに戻り、休憩を取ったあとで昼食の仕度に取り掛かる。と言っても、基本は食材を切り、そうめんを茹で、器に盛り付けるだけだ。
     料理に苦手意識のある佐藤は、明日ノ宮の教えてもらいながら、キュウリの下処理をし薄切りにした。プチトマト、ウナギも切った。明日ノ宮は麺つゆを作ると冷蔵庫に入れ、その間にそうめんを茹でる。最後に、二人でガラスの平皿にそうめんと切った食材たちをバランスよく盛り付ければ、天の川そうめんの出来上がりだ。
    「平尾さんに、ちゃんとお手伝いできましたって報告します!」
     佐藤はスマホを取り出して、完成したそうめんを写真に撮る。佐藤の嬉しそうな表情に、明日ノ宮も苦労したかいがあったと静かにほほ笑んだ。
     食事が終わると佐藤の帰宅時間が迫ってくる。仕事で毎日何かしら連絡を取っているとはいえ、恋人との別れは名残惜しい。二人の距離がだんだんと近づき、手や肩の触れる回数が増える。
    「またすぐ会えますから」
     さびしんぼうの明日ノ宮を佐藤が抱きしめキスをする。明日ノ宮は佐藤の背中に腕を回して引き寄せると、もう一度キスをねだった。と、佐藤のスマホが鳴る。
     メールかチャットの通知のようだが、それが引き金となり二人は体を離した。佐藤は明日ノ宮に軽く謝ると、スマホを手に取った。明日ノ宮も残りの片付けをしようとキッチンに向かう。すると、後ろから佐藤が抱きついてきた。突然のことに明日ノ宮は目を白黒させる。
    「ど、どうした。急に」
    「おじいちゃ、祖父が今日は流しそうめん大会をやるから、有栖さんも連れてきなさいって!」
     へへへと笑って、佐藤がより強い力で明日ノ宮を抱き寄せる。背中に感じる熱は、明日ノ宮にとって心地よいものだった。
    「短冊、書いたかいがありました」
    「そうか?」
    「そうです!」
     佐藤が腕をとき二人は正面から向き合う。佐藤が短冊に書いた願いごと、それは「恋人とずっと一緒にいられますように」だった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺☺☺💘💖👏💯☺☺☺👏👏👏👏🌟🌌🌟😊😊💞💞💞💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works