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    sasaha_irm6

    @sasaha_irm6

    物書き

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    sasaha_irm6

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    バビデビ!パーリィナイトif人間界2開催おめでとうございます!
    新しいの完成しました!七夕のさとあすです。

    誤字脱字等あれば、waveboxなどでお知らせいただけるとありがたいです。

    #イルアズ
    iluaz.
    #さとあす

    七夕の願いごと 梅雨明けを待つ関東は、朝から日差しが強く蒸すような天気だった。太陽の光を反射して道路のアスファルトもじりじりと温度を上げている。午後はどれだけ暑くなるのか。
    「今日、七月七日は七夕です」
     佐藤と明日ノ宮が朝食をとっていると、テレビからそんな声が聞こえてきた。締切に追われていた二人は、そういえば、という顔でテレビを眺める。
    「七夕といえばそうめんですが、由来には諸説あり……」
    「ひとつめは、中国の言い伝えで」
     アナウンサーの説明を先取りするように、箸をおいた明日ノ宮がつらつらと、それこそ竹筒にそうめんを流すように話をする。佐藤も食事の手を止め、明日ノ宮の話に耳を傾けた。
    「と、いうことだ」
    「勉強になります。じゃあ、今日のお昼はそうめんにしましょうか。家にはお昼を食べてから帰る、って連絡しておきます」
     佐藤の言葉に明日ノ宮は目をまたたかせた。佐藤は「そうめん、ありますか」と言いながら、箸で焼き鮭をほぐしている。
    「もう昼ご飯の話とは、入間くんらしいな」
     明日ノ宮がくつくつと笑う。佐藤は顔を真っ赤にしながら、焼き鮭と白飯を口に入れた。

     朝食の片付けをすませた佐藤と明日ノ宮は、さっそく近所のスーパーへ向かうことにした。開店と同時に入店し、暑くなる前に買い物を済ませるつもりだったが、外の気温は二人の想像以上に早く上がっていた。
     明日ノ宮が額の汗をハンカチでおさえる。
    「暑いですね」
     佐藤がエコバッグから水筒を取り出した。
    「あぁ」
     明日ノ宮も佐藤に習い、持っていた水筒から麦茶を飲む。今日は気温だけでなく湿度も高い。汗を吸った服が体にはりつく感触に、明日ノ宮は眉をひそめた。
    「買い物、ネットスーパーにすればよかったですね」
    「そうだな。次回はそうしよう」
     佐藤の気遣いを感じ、明日ノ宮は眉に込めていた力を抜いた。
    「トッピング何にしましょうか? ハムに、錦糸卵、トマトにオクラ……。野菜の揚げ浸しも合いそうですよね」
    「ちょっと大掛かりじゃないか? 私は鰻かあなごが食べたいな」 
    「鰻! いいですね。キュウリも買いましょう」
     話しながら歩いているとスーパーまではあっという間だった。自動ドアが開き、音楽とともに冷気が流れてくる。冷たいクーラーの風を浴び、佐藤も明日ノ宮もふぅと息を吐いた。
    「あ、スイカ。おいしそうですね!」
    「まるまる一個はいらない。カットのパックにしなさい」
    「あ、鮎だ。おいしそうですね!」
    「たしかに、鮎そうめんという郷土料理は存在しているようだが……作ってみるか?」
    「そうなんですか⁈」
     二人は買い物カートを押して店内を回る。食べるのが大好きな佐藤は、目についたものすべてに反応した。明日ノ宮は、性格なのか、佐藤の言葉に逐一真面目に返事をする。買い物カゴには、次々と食材が積まれていった。
     佐藤と明日ノ宮は会計を済ませ、食材をエコバッグに詰める。明日ノ宮が買い物カゴを片付けていると、佐藤が何かを見ていた。明日ノ宮も佐藤の見ている方向に目を向ける。するとそこには、小さな台が置いてあった。
     台の上にはペン立てと短冊が置いてあった。台の前の壁には大きな模造紙が貼られており、色紙で作った笹や七夕飾り、願いを書いた短冊で飾られている。二人は台の近くへ行き、模造紙を見上げた。
    「なかなかに興味深いな」
     明日ノ宮が短冊に書かれた願いごとを眺める。小さな子どもが書いたのか、ただ丸や四角を描いただけの短冊もあれば、学業に関する願いを書いた短冊、大真面目に世界の平和を願う短冊もあった。一通り目を通した明日ノ宮は、そろそろ帰ろうと佐藤に視線を送る。
    「僕らも書きましょう!」
    「は?」
     佐藤は瞳をキラキラと輝かせた。それこそ、わし座の彦星のように。
    「有栖さんは何色がいいです?」
     佐藤は台の前へと進み、短冊を選び始める。明日ノ宮は数回の瞬きののちため息をついた。が、その顔はどこか嬉しそうだった。
    「まったく。しょうがないな、キミは」
     二人並んで短冊を書く。佐藤は書き終わると嬉々とした顔で、自分の短冊を明日ノ宮見せた。佐藤の願いごとを読んだ明日ノ宮が、耳まで真っ赤にする。佐藤も明日ノ宮の短冊をのぞきこんだ。
    「ふふ、有栖さんらしいや」
     二人は模造紙に短冊を貼ると、手をつないでスーパーを出た。

     明日ノ宮のマンションに戻り、休憩を取ったあとで昼食の仕度に取り掛かる。と言っても、基本は食材を切り、そうめんを茹で、器に盛り付けるだけだ。
     料理に苦手意識のある佐藤は、明日ノ宮の教えてもらいながら、キュウリの下処理をし薄切りにした。プチトマト、ウナギも切った。明日ノ宮は麺つゆを作ると冷蔵庫に入れ、その間にそうめんを茹でる。最後に、二人でガラスの平皿にそうめんと切った食材たちをバランスよく盛り付ければ、天の川そうめんの出来上がりだ。
    「平尾さんに、ちゃんとお手伝いできましたって報告します!」
     佐藤はスマホを取り出して、完成したそうめんを写真に撮る。佐藤の嬉しそうな表情に、明日ノ宮も苦労したかいがあったと静かにほほ笑んだ。
     食事が終わると佐藤の帰宅時間が迫ってくる。仕事で毎日何かしら連絡を取っているとはいえ、恋人との別れは名残惜しい。二人の距離がだんだんと近づき、手や肩の触れる回数が増える。
    「またすぐ会えますから」
     さびしんぼうの明日ノ宮を佐藤が抱きしめキスをする。明日ノ宮は佐藤の背中に腕を回して引き寄せると、もう一度キスをねだった。と、佐藤のスマホが鳴る。
     メールかチャットの通知のようだが、それが引き金となり二人は体を離した。佐藤は明日ノ宮に軽く謝ると、スマホを手に取った。明日ノ宮も残りの片付けをしようとキッチンに向かう。すると、後ろから佐藤が抱きついてきた。突然のことに明日ノ宮は目を白黒させる。
    「ど、どうした。急に」
    「おじいちゃ、祖父が今日は流しそうめん大会をやるから、有栖さんも連れてきなさいって!」
     へへへと笑って、佐藤がより強い力で明日ノ宮を抱き寄せる。背中に感じる熱は、明日ノ宮にとって心地よいものだった。
    「短冊、書いたかいがありました」
    「そうか?」
    「そうです!」
     佐藤が腕をとき二人は正面から向き合う。佐藤が短冊に書いた願いごと、それは「恋人とずっと一緒にいられますように」だった。
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    sasaha_irm6

    PROGRESSイルアズ・プランツドールパロの続き(2章冒頭部分)です。
    来年の2月もしくは3月に、1章とこの続きから最終章までのお話を1冊にまとめて発行予定です。

    1章
    https://www.pixiv.net/novel/series/8783188
    青葉、微笑む チチ、チチチ。
     アラームと一緒に、鳥の声が聞こえる。
    (朝かぁ)
     目を開けると、細い格子模様の欄間から、朝日が差し込んでいた。起き上がって目覚ましを止め、布団の上で伸びをひとつ。寝起きだけど、意識はもうはっきりとしていた。寝起きの良さには、もともと自信があった。けれど、最近はさらに調子がいいみたい。ゆっくり布団で寝ているからかな。今すぐにでも働けそうな気がする。

     布団をさっと片付けて一階におりた。雨戸を開けると、庭では紅葉や桜、南天が風にそよいでいた。
    (気持ちよさそうだぁ)
     縁側のガラス戸を開けてみる。すると吹き込む風に、髪や寝巻きの裾がふわりと揺れた。僕は目を細めてしばらく風に吹かれていた。
     縁側を伝って洗面所へ向かう。渋い焦げ茶の木の廊下はひんやりとしていて、洗面所へ着くころには足が冷たくなっていた。やっぱり、家って広いなぁ。家の中に水道があるのは、便利でありがたいけど……。蛇口をひねると、きれいな水がすぐに出てきた。冷たい水で顔を洗いながら、夜にくんでおいた水の使い道を考える。ため水自体もういらないのかもしれないけど、まだ止めるまでは踏ん切りがついていない。
    1893

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    DONE忙しくて書けなかったワンドロお題を周回遅れで。
    本文に上手く入れられなかったんですが、「通常期まちを見たとたんにあずは悪周期から抜けちゃうから、あずに悪周期解放使わせるときは魔様モードになる魔王様」っていうのがやりたかったんですよ(本文でやれ)
    【イルアズワンドロ周回遅れ】悪周期 戦いは、苛烈を極めていた。
     新たな魔王がその座に就いてから、まだ日が浅い。支配は行き届いておらず、各地で小競り合いが頻発している。様々な勢力が、中央の目の届かないのを良いことに、その隙に影響力を広げようとしてはぶつかり合っているのだ。
     些細な勢力争い程度のことはなるようになるであろうと静観していたけれど、しかし、関係のない集落が巻き込まれて被害がでているとなれば黙ってはいられない。魔王は自ら側近を伴い、少数精鋭の手勢をつれて鎮圧へと乗り出した。
     はじめは投降を呼び掛け、話し合いでの解決を促そうとした魔王だったが、そんなことで場が収まるのならば最初から戦になどなっていない。いがみ合っていたはずの西軍東軍双方が結託し、魔王軍を追い散らそうと襲いかかってくる。こちらの軍勢はごく少数。いくら精鋭揃いとはいえ、数を頼みに押し切れると思ったのだろう。実際、前線に立つ兵たちは、烏合の衆を前に、倒されこそしないものの数の差に翻弄されて攻め倦ねている。
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