お月見「ねぇねぇロナくん、もし私がかぐや姫だったらどうする?」
今日は十五夜。ドラルクお手製の月見団子を頬張っている俺に向かって突拍子もない話題を振ってくる砂。
「姫だぁ?鏡よく見て物言えよ、ガリガリ砂おじさん」
「ハー?そのガリガリおじさんにベソかきながら告白してきたゴリラはどこのゴリラですかー??」
そう、こう見えて俺たちはオツキアイしている。
大喧嘩の末実家に帰ったコイツを迎えに行き、泣きながら告白したゴリラは何を隠そうこの俺なのだ。
「殺した」
軽やかにジャブを放って殺しながら一応続きを聞いてやる「んで?お前がかぐや姫だったら?」
「そうそう。もし私とジョンが月に帰っちゃう~ってなったら君、どうするのかなって」
俺は3つ目の団子を飲み下しながら何となく答える
「迎えに来た奴らに抵抗するかなぁ、暴力で」
「なるほど。でもさ、うちの一族が無理やり連れ帰ろうとしたら君でも流石に無理でしょ」
なるほど、コイツの意図してる事が何となくわかってきた。それなら
「俺も月に一緒に行く、かな」
「えー?!月に行ったら家族とも会えないよ?食べ物もぜんぜん違うかもしれないし、帰りたくなっても帰れないかもよ?」
「かもな。でもお前とジョンに会えなくなるんだろ?それよりかはマシだろ」淡々と答える俺に何とも言えない顔を向けてくるドラルク
「…俺はお前が一族入りしてほしいなら、別に良いけど」ん?何かコイツ変な顔してる。
あれ?これそういう話じゃなかった??
俺たちの横で無言で団子を食していたジョンはヌシヌシと笑いながら主人を見ている。
「あ~~!そうだよ!察しが悪い割にやるじゃないか!ケツホバ髭から『彼はいつ一族入りするんだ?』としつこく問い詰められてね。まぁ、私はまだそんな事考えてなかったんだが?少し、だけ、気になったと言うか?」
あ、またコイツ悪い方に考えたな。
俺が転化を頭から拒むとか、そんな感じの。
「月でも何処でも付き合ってやるよ。ただし、勝手に1人で帰んなよ?」ジョンとの馴れ初めは聞いている。同じ轍を踏むのはゴメンだ。
ジョンもジッと主人を見ている。
「わかったわかった!何処までも付き合ってもらうから覚悟しておけよ、若造!お祖父様に頼めばリアルに月までも行けるんだからな!」
ニヤリと笑う吸血鬼
「ならいつか月でお月見しようぜ!」と返した俺にジョンも嬉しそうに鳴き声を挙げたのだった。