「はぁ………………」
私は指先に摘んだ片方だけのイヤリングを見詰めて、何度目かの溜め息を吐いた。
こんなことももうどれだけ繰り返しただろう。答えはお菓子の空き缶の中。
赤、青、黄色、白、黒、オレンジ。ひとつとて同じものはない。色も材質もばらばらの、全て片方だけになったイヤリング。どうにも捨てられなくて、こんなに溜まってしまった。
ぞんざいに扱っていたつもりはない。不注意だったとも思いたくない。だってそれぞれに思い入れがあったのだ。これは親から譲り受けたもの、それは初めて自分のお金で買ったもの、こっちは誕生日に友達からプレゼントされたもの。今日失くしたのは、このところ毎日のように着けていた、バラの花のイヤリング。たまたま入った雑貨屋さんで見付けたものなのだけれど、白い花弁の中に、1枚だけ赤い花弁があるところに、想い人を想起させられて、衝動的に買ってしまったものだ。
「はぁ……………………」
またひとつ、溜め息がこぼれた。
これ以上悲しい思いをするくらいなら、いっそ次からピアスにしようか。穴はまだないけれど、ないなら開けてしまえばいい。
私は手の中の未亡人を缶に詰める。かちゃり、という音が幾重にも響いた。