数分か数秒か、重たい沈黙が流氷のように流れた。あんな風に拒絶されては、誰も追いかけられない。
不意にそれを破ったのはフルーレだった。意識が現在に引き戻される。
「ラト! アモンさんが手負いってどういうこと?」
フルーレがラトに向かって問い質した。しかし、ラトはきょとんとしている。
「フルーレ、主様の身支度をして差し上げるんじゃなかったの?」
「わかってるよ……ッ! 聞きながらやるから、ラトも手伝って!」
フルーレの額には青筋が浮かんでいた。こちらにまでその焦りが伝わってくるようだ。じりじりと、急かされたような心地になる。
「わ、わたしにも、手伝わせて…………!」
せめて、それくらいはしたい。
「主様…………、ありがとうございます」
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