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    68_nemui

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    68_nemui

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    マネロキ のつもりだけど死ネタです
    マネしか喋らないしずっと可哀想 暗い
    Q.どうして二人こんなんなってるの?
    A.知らん……書きたいところだけ書いたから……

    失楽 すっかり日が暮れ、一際大きな星が空に瞬く頃。外出を終え、ふらつく足取りで家まで辿り着いた。疲れた身体でそのまま居間を抜け、寝室へ向かう。
     寝室の扉を開け、まず目に入ってくるのは豪奢な天蓋付きのベッド。そして、そこで眠るロキだ。
     カーペットに足跡を残し、ベッドの方へ歩み寄る。月明かりの下、白いシーツに横たわるロキは人ならざる美しさを放っていて、まるでおとぎ話か何かのワンシーンを切り取って「そこにある」ように見えた。実際、人ではない訳だが。
     薄く色付いた唇に口付け、ベッドのへりに腰を落とした。

    「ただいま、ロキ。今日もいい子にしてたか」

     紅い髪を撫で付ける。柔らかな手触りを楽しむように摩っていると、石鹸の香りが上ってきた。
     ロキは相当深く眠っているようで、俺が声をかけようと触れようと目を覚まさなかった。
     これは今に始まったことではない。いつからか、ずっとこうだ。しかしどの時期に、何があってこうなったのか、の答えは俺の記憶の中にはない。
     気が付いたらロキはこうなっていた、と言うしかないのだ。当時の俺は、それはもう大いに取り乱した。自分自身、あの頃は本当にどうかしていたと思う。どうにか目覚めるよう手は尽くしたが、何も得られずじまいだった。方々に協力を求めたが、力を貸してくれなかった者ばかりだった。
     その後、現状できることがないのならば、と眠るロキとの生活が始まった。異世界の悪魔──メギドであるロキは、外見こそヴィータとはほとんど遜色ないが、中身は全くもって違う。元々そこまで食べる方ではなかったが、眠りについたことで「何も口にしなくなり」、それ故に排泄もしない。それでも、ついロキの分の料理を作ってしまうことが未だにある。結局、それは捨ててしまうのだが。ロキのために作った物なのだから、そのまま食べる気にも保存しておく気にもならない。
     かと言って何もしていないのかと言われると、それは違う。身体を朝と夜の二回、念入りに清めている。ロキに埃が積もるなんてことは、あってはならない。石鹸は手で丁寧に泡立て、身体を刺激しないようぬるま湯で流す。それが終わったら、肌に優しい絹の寝間着を着せ、髪をしっかり乾かす。俺自身の入浴より時間をかけ、丹念に行っている。

    「ちょっと待ってろ、今風呂の用意を──っとぉ……! ぁぐ……」

     ベッドから立ち上がり、一歩踏み出したところでカーペットに足を取られてしまった。そのまま俺は前に倒れ、硬い床に身体を叩き付ける。要は多少の受け身を取ることすらできず、みっともなく転んだのだ。頭部からべたん、といったせいで、顎をしたたかに打ってしまった。上下の歯がえぐれる程の勢いで噛み合い、音が鳴る。
     その時の慌ただしい物音よりも、木の床が軋む耳障りな音と俺の呻き声の方が、やけに響いた気がした。

    「う、っこの、ん……あ……? 足が……」

     身体を起こそうと足に力を入れるも、下半身から伝わるのは違和感ばかり。いくら踏ん張ろうと、何故か足は棒になったかのように動かなかった。しっかり歩けるようになったはずなんだがなぁ、なんて考えながら、俺は手と膝で這ってドアの方へ進んだ。立てないのなら立てないので仕方がない、今やるべきことをやらねば。目線が低いからか、月光に照らされて舞う埃が良く見える。
     扉の前で膝立ちになり、手を伸ばしてドアノブをひねる。部屋側へドアを引く時にまた転びそうになるも、何とか扉は開いた。尚も四つん這いのままで先へ──

    「(──違う。こんなの、おかしい。何かが……)」

     ふと、何かどうしようもない不自然さを感じた。どこかがおかしい、と言われれば、それは今の状況全てがおかしいのではないか。
     いつまでも目覚めないロキに、それを何でもないことのように受け入れている俺。眠っているとはいえ、生理的な機能が何もかも起こらないのはおかしい。そもそも、本当に眠っているだけなのだろうか。そしてそのことに、何も違和感を覚えず、ただ毎日身を捧げている俺も、どこか、変なのではないか。
     今のロキは、一体どうなっているんだ。
     それを確かめるべく、開けた扉はそのままに部屋を振り返った。そして絶句した。
     柔らかい色の壁紙が貼られていたはずの壁は、土が剥き出しになっていた。厚いカーペットが敷かれていたはずの床にあるのは、ぺらんと薄い動物の皮一枚のみ。そして何より、ロキの寝ているベッドには、天蓋なんて付いていなかった。ボロボロの、ところどころシミの付いたシーツ。その上で、硬いブランケットにくるまりロキは眠っていた。

    「嘘……だろ。何だ、これ……」

     幻覚を見ている。そうとしか考えられない。
     頭が真っ白になって、とにかくベッドへ急いだ。木の床のささくれが手に刺さったが、そんなもの気にしていられなかった。幾度もつんのめりそうになりながら、何とかベッドへ辿り着く。ブランケットを剥がし、汚れたシーツを引っ掴み、ロキの顔を覗き込んだ。
     身動ぎ一つせず、ただ「そこにある」。その美しさも相まって、まるで人形のように見えた。
     恐る恐る、ロキの身体に触れた。氷のような冷たさで、五秒と触っていられなかった。そのまま、俺の体温で溶けていってしまいそうな錯覚すら感じる程に。ロキに触れた手が、腕が震える。
     身体が、恐ろしく冷たい。それが意味するところは、つまり──

    「……違う!!」

     おぞましいことを考えてしまった自分に嫌悪感を抱き、力いっぱい自身の腹を殴りつけた。力の逃がし所もなく、殴るまま床へ仰向けに倒れた。
     ──ロキが死んだ。死んでいる。そんなことは、ありえない。証拠はない。むしろ、それを証明するものばかり転がっている。けれど、それを認めてしまったら、俺は。

    「はっ……う、ぶ」

     一瞬のうちに吐き気が上ってくる。自分で自分を殴って、そのせいで嘔吐くなど間抜け過ぎて笑えてくる。だが口から出てくるのは空気の塊ばかりで、胃液すら吐き出せなかった。そういえば、最後にまともな食事を摂ったのはいつ頃だっただろうか。覚えていない。
     凄まじい寒気を感じているはずなのに、脳味噌は熱く、ぐちゃぐちゃになっていた。どこから真実で、どこから俺の妄想なのかが分からない。
     違う。これは全て俺の妄想なのだ。何もかもが夢で、目が覚めたらいつも通りに戻っているはずだ。
     今この状況こそが狂気であり、早く正気に戻らなければならない。
     夢ならば、早く覚めれば良い。固く目を閉じる。いや、これではきっと足りない。力の抜けた手で、それでも精一杯自分の腹に拳を叩きつけた。何度も、何度も、何度も──



    「──ん、あ……?」

     身体が怠い。いつの間にか寝ていたようだが、ここはどうやらベッドの上ではないらしい。重い瞼を上げ、身体を起こす。ぎし、と床が耳障りな音を立てて軋んだ。何か、酷く不愉快な夢を見ていたような気がする。
     寝ぼけまなこで辺りを見回すと、そこは寝室ではあった。すぐそばに、ロキの眠る大きなベッドがある。だが、どういう訳か床で眠っていたらしい。そのせいか、身体の節々が痛む。
     窓からは、淡い金色の月光が差していた。そうだ、夜ならロキを風呂に入れなければ。それが、そうするのが正しいから。ずっとそうしてきたから。

    「ちょ……っと待ってろよ、ロキ。今、準備してくる……」

     やけにふらつく足を何とか立たせる。
     ロキから離れ、寝室の出口へと向かった。
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    68_nemui

    DOODLEマネロキ(のつもり) 頭のおかしいファンがロキの前でアピールする話

    ・ファン(モブ)がだいぶ喋る そして死ぬ
    ・ちょっとだけ流血描写
    ・前半マネ視点で後半ファン視点
    実体化するアンビバレンス 柔らかい陽光が雲間から差し、街の広場に影を作っている。ロキは雨が降るのではないかと危ぶんでいたが、そうはならずにひとまず安心。西に黒い雲の塊が見えるが、あれがこちらに流れてくる頃には撤収しているだろう。

    「あ……あ、あの! お会いできて嬉しいですっ! 僕、ロキ様みたいに堂々と振る舞えるようになりたくて……! えっ、いや、もちろんお歌も大好きです! っ、すみません上手く話せなくて! 色々考えてきたんですけど、いざロキ様を目の前にすると、んん、くぅ……!」
    「フン……うっとおしい。どうにでもなっちまえよ」
    「ううぅ……っ! カッコイイ……!」

     今日、今まさに開かれているのはロキの握手会だ。街の広場の一角を借り、俺とロキ、今回のために雇った数人がそこに突っ立っている──なんて簡素なものだが。前々から「少しでもファンの喜ぶことをしたい、ファンの声を近くで聞きたい」と、本人がやりたがっていた。多少の不安はあったものの、俺はロキの、あの眼にどうにも弱い。不思議に移ろう瞳で見つめられると、何も言えなくなる。そんな目でねだられてしまえば、俺は頷く他の反応を手放してしまう。もちろん、駄目なことにはしっかり駄目と言わなければいけないとは思っている。だが、今回は否を突き付けるような事柄でもないだろう。
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