紅く染まる
・恋の囁き
ダンデに恋をしたのは11年前まだまだダンデがチャンピオンになったまさにその年の、初戦でダンデにまけ控え室で一人モニターを眺めていた時だった。
ダンデに負けたことが悔しくなかったわけではない。
もちろん悔しかった。悔しかったけど、モニターの中心底楽しくて止まらないと言った様子でバトルをするダンデがとても輝いて見えていつの間にか夢中になってダンデを応援していた。
ダンデを見つめるキバナの紅く染まる頬はまるで秋に色づく紅葉のようで、
がんばれ、がんばれ!がんばれ!!
控え室なのを忘れてしまうほどに夢中になっていた。
こんなに夢中になるなんて今までなかった。心臓が飛びはね、呼吸すらできない程、恋の囁きだなんて温いほどのこのキバナの心を焼く感情は……きっと……。
そして見事チャンピオンとなったダンデの輝く笑顔がモニターに目一杯写った時キバナはダンデに恋をした。
それからキバナはずっとダンデをみてきた。
ダンデがチャンピオンではなくなってもずっとずっと。
ダンデがブラックナイトで重傷をおって目覚めなかった夜もさみしい暗い廊下でダンデの無事を祈り続けた。
そうしてやっとダンデと結ばれたのに……
今日もダンデは目覚めない。
ダンデが眠ってから二度目の秋がきた。
ダンデの母はもう、待たなくて良いのよ?と言ったがキバナは首を横に降った。
窓の外の木の葉は、紅く染まりまるであの日のキバナのようだ。
今日こそは、明日こそは、待ち続け、祈り続け、それでもダンデは目覚めない。
しかしキバナは諦めない。
絶対に、諦めない。
心をおってなんになる。
泣いてなんになる。
揺らぐな信じろ。
自分が愛した男はこんなところで負ける男じゃない。
すべての可能性を試せ。
やれることは全てやれ
そんなキバナの献身は、少しずつ、少しずつダンデの身体に変化をもたらしている。
後少し、後少しの何かがはまればきっと、きっと……
その後少しを見つけるためキバナは今日も足を止めない。
愛した男のめざめるその日を信じて足りない何かを探して、ダンデがめざめるその日まであがいて、あがいてあがき続けるのだろう。
キバナが去った病室でダンデは一人眠っている。
動かない身体の中で、ダンデも諦めずに戦っている。
諦めるな起きろ、
動け、動け、キバナの献身を無駄にするな。
愛しい男に捧げられた献身に報いろ。
動け、動け、動け
足掻け。
その思いが通じたのか、キバナの献身の賜物か
はたまた神がようやく二人に微笑んだのか誰もいない病室で眠るダンデの指が微かに動いた。
きっと奇跡はすぐそこまできている