花に嵐 風と砂、雨と嵐のその先で花のようなかんばせがこちらを真っ直ぐ射ぬいている。
吠えるように開いた唇が、輝く碧がこんなにも美しいだなんて俺は生まれてはじめた知ったんだ。
花と嵐
キバナと出会ったのはジムチャレンジ。
ソニアとルリナとキバナ四人で夢に向かって走り出した。
それから大人になりキバナと俺は相変わらずガラルの天辺で互いに命を燃やしバトルをしている。
共に走り出して、ライバルと呼ばれるようになり、これからもずっとずっと関係は変わらないのだと思っていた。
恋を自覚したのはチャンピオンになり八年目。
花が開くように美しく成長した君に心を奪われた。
思いを伝える決心が着いたのが九年目。
嵐のように激しく俺の魂を揺さぶる君を自分の物にしたいと、欲が芽生えた。
思いを伝える前に俺が負けたのが十年目だった。
嵐が花を散らすように俺の恋は散った。チャンピオンではなくなった俺が君の隣にたつ資格はないと決めつけキバナに思いを伝えることを諦めた。
そして俺がチャンピオンではなくなってから2ヶ月。
なんとなくキバナに会うのが怖くて、チャンピオンでなくなったあの日から俺が一方的にキバナを避けて姿を表舞台から消していた。
幸いにも俺は無職ではあるもののお金だけはたんまり持っている。
だからその金を使って食べ物は全てデリバリーしてもらって、家からでなくても身体は鍛えられるように空いていた部屋に機械をいれトレーニングルームを作った。
極力周りとの接触を裁ちキバナを避け作り上げたひとりぼっちは寂しくはあるがなれてしまえば案外心地良いものだった。
さらに一ヶ月。
引きこもりはさらに極まり、俺は家の中からでなくとも快適に暮らせるようになっていた。
だけど週に一回はパートナー達のコンディションを整えるためにひっそりワイルドエリアに赴き調整はしていた。
そんなある日いつものようにデリバリーが届くのをまっていると
ピンポーンとチャイムがなった。
「………………いつもより早いな」
そういってペタペタと玄関に向かう。
扉を開けた俺は、目の前にいた人物に目を大きく見開いて一瞬固まる。
顔をひきつらせ、扉を閉めようと俺が動くよりも早く、しなやかな筋肉をまとった腕が俺の胸ぐらをつかむ。
「よぉ、ダンデやっと見つけたぜ。ちょっと面貸せ」
記憶にあるよりも分かりやすく怒りに満ちた声に俺はこくこくと頷くことしか出来なかった。
なにも言わないキバナが俺の手をガッチリとつかみタクシーに押し込む。
そうしてつれていかれたのはナックルシティキバナの納めるスタジアムの芝生の上だった。
→次回ワンドロふたりぼっちに続く